廩 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
穀所振入也。穀者、百榖緫名。『中庸・注』曰、振、猶收也。《手部》曰、振、舉也。『周禮・注』曰、米藏曰廩。
宗廟秶盛。秶各本作粢。今正。粢、稻餠之或字也。秶者、稷之或字也。甸師以共齍盛。鄭注齍作秶、云、秶、稷也。榖者稷爲長。是以名云。在器曰盛。按『〔周禮・春官〕小宗伯・注』云、齍讀爲秶。六秶謂六榖。黍稷稻粱麥苽。是則六榖稷爲長。故單舉秶也。許於《皿部》曰、齍、黍稷器也。盛、黍稷在器中也。字依『周禮』。此作秶盛者、齍秶古今字。『禮記』多用秶盛、故許從之、與鄭同也。蒼黃㐭而取之。故謂之㐭。蒼舊作倉。今正。㐭而取之之㐭、當作癛。癛癛、寒也。凡戒愼曰癛癛。亦作懍懍。『漢書』通作廩廩。許云、癛而取之。故謂之㐭。癛㐭㬪韵。如上文蒼黃取而藏故謂之倉。藏倉㬪韵也。上文云榖所振入也者。『周禮〔地官〕』所謂廩人掌九榖之數。以待國之匪頒、賙賜、稍食也。此云宗廟秶盛、蒼黃癛而取之者。榖梁傳所謂甸粟而內之三宫。三宫米而藏之御廩。『周禮』所謂廩人大祭祀則共其接盛。舉其重者以釋㐭之音義也。鄭云、大祭祀之榖、藉田之收藏於神倉者也。不以給小用。『〔爾雅〕釋言』廩、廯也。臧氏鏞堂曰、廯、古本當作鮮。舍人云、廩、少鮮也。『公羊〔文十三年〕』羣公廩《注》云、連新於上財令半相連耳。『襄卄三年』所傳聞注亦云、廩廩近升平〔註1〕。皆廩、鮮也之義。玉裁按、此與『漢書』廩廩庶幾、賈誼爲此廩廩、皆癛癛之假借也。
从入。榖所入、故从入。从回。回之訓轉也。而此从回之意則如下所云。象屋形。謂外囗。舍下云、囗、象築。此云象屋者、屋在上者也。㐭之戸牖多在屋。中有戸牖。謂內囗。小徐曰、戸牖以防蒸熱也。力甚切。七部。
凡㐭之屬皆从㐭。
- 註1: 『公羊傳・襄公二十三年』
夏、邾婁、鼻我來奔。
漢・何休註所聞之世、內諸夏、治小如大、廩廩近升平。
㐭或从广稟。會意也。稟亦聲。
康煕字典
- 部・劃數
- 广部・十三劃
- 古文
- 𢈺
『唐韻』力甚切『集韻』『韻會』『正韻』力錦切、𠀤音凜。『說文』本作㐭。穀所振入、宗廟粢盛、倉黃㐭而取之、故謂之㐭。从入、回、象屋形中有戸牖。或从度从禾。『爾雅・釋言』廩、廯也。『玉篇』倉廩也。『釋名』廩、矜也。實物可惜者、投之其中也。『詩・周頌』亦有高廩、萬億及秭。『禮・明堂位』米廩、有虞氏之庠也。《註》庠序亦學也。魯謂之米廩、虞帝上孝、令藏粢盛之委焉。『周語』廩於藉東南、鍾而藏之。《註》廩、御廩。一名神倉、東南生長之處。鍾、聚也。爲廩以藏所藉田、以奉粢盛。『荀子・富國篇』垣窌倉廩者、財之末也。《註》穀藏曰倉、米藏曰廩。
又給也。『後漢・章帝紀』恐人稍受廩、往來煩劇。《註》廩、給也。
又天廩、星名。『隋書・天文志』天廩四星在昴南。『張衡・周天大象賦』天廩備稷以祈歆。
又官名。『周禮・地官』廩人掌九穀之數、以待國之匪頒賙賜稍食。『後漢・和帝紀』復置廩犧官。《註》漢官儀曰:廩犧令一人秩六百石。
又與懍通。『前漢・食貨志』可以爲富安天下、而直爲此廩廩也。
又與壈通。『集韻』壈或作廩。
- 部・劃數
- 广部・八劃
『集韻』廩古作𢈺。註詳十三畫。
- 部・劃數
- 亠部・六劃
『說文』廩本字。从入从回、象屋形。中有戸牖、防蒸熱。『六書略』方曰倉、圜曰㐭。上象其蓋
異體字
簡体字。
音訓・用義
- 音
- リム(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・寑・廩』力稔切〉[lǐn]{lam5}
- 訓
- くら。こめぐら。あつめる。
解字
白川
『説文解字』に正字を㐭に作り、廩の初文で象形の字。『説文解字』に穀の振入する所なり。宗廟の粢盛、倉黃として㐭して之れを取る。故に之れを㐭と謂ふ。入に從ひ、回に從ふ。屋の形に象る。中に戶牖有り。
とし、重文として廩を錄する。
宗廟の粢盛を廩に收めることは、『周禮・地官・廩人』『周禮・天官・甸師』にその規定があり、『禮記・月令』に藏帝藉之收於神倉
(帝藉の收を神倉に藏す)とあつて、その神倉を御廩といふ。
卜文、金文の字形は積禾の象、その上に雨除けの覆ひを設けた形に作る。
地方の穀倉を啚といひ、鄙の初文。啚の所在を記した圖面を圖といふ。
官吏の俸給は廩粟の現物支給であつたので、古くは廩給といつた。
藤堂
广(家)と音符稟の會意兼形聲。稟は、丸い米倉と禾(稻)の會意字で、作物を集めて入れた倉。廩は、米倉の建物を示す。
林と同系の言葉で、數多く集める意を含む。
落合
象形。甲骨文は倉庫の象形であり、下部の楕圓形は恐らく倉庫の厚い壁を表してゐる。異體字には終の初文とほぼ同じ形もある。初文は㐭の形。
甲骨文での用義は次のとほり。
- くら。穀物の倉庫。《合集》33236
癸巳卜、令⿳匕凶十省廩。
- 地名またはその長。第三期(康丁武乙代)には廩土が徵兵の對象になつてゐる。《合補》4152
貞、叀多子族令從廩、蜀戴王使。
金文で收納する穀物を意味して禾を加へた形が作られ、更に篆文で建物の象形である广が意符として加へられて廩の形となつた。
そのほか金文や古文には意符として米を加へた字形も見える。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文の㐭は倉廩の形に象る。米穀を積み上げる倉庫のこと。金文は後に房屋を表す广と稻を表す禾を加へる。廩、稟は㐭の後起の字。
甲骨文では地名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 容納を表し、典籍に稟に作る。襄陰鼎
㐭(稟)二斗
。 - 地名に用ゐる。廩丘戈
廩丘
。春秋時代の齊に廩丘が有り、故城が今の河南省氾縣にある。一説に今の山東省范縣の東南といふ。
屬性
- 廩
- U+5EE9
- JIS: 1-55-9
- 𢈺
- U+2223A
- 㐭
- U+342D
- 廪
- U+5EEA
關聯字
㐭に從ふ字を漢字私註部別一覽・㐭部に蒐める。