蹂 - 漢字私註
説文解字
- 蹂
- 禸の重文。
篆文从足柔聲。
- 十四・禸部
説文解字注
- 蹂
篆文厹。『爾雅音義』云、古文爲蹂。由不知『說文』之例而改之。
康煕字典
- 部・劃數
- 足部・九劃
『廣韻』人又切『集韻』『韻會』『正韻』如又切、𠀤音輮。『說文』厹、篆文从足柔聲。獸足蹂地也。『博雅』疾也、履也。『玉篇』踐也。『史記・項羽紀』餘騎相蹂踐。『前漢・揚雄傳』蹂蕙圃、踐蘭唐。
又『廣韻』耳由切『集韻』『韻會』『正韻』而由切、𠀤音柔。『詩・大雅』或簸或蹂。《箋》蹂之言潤也。《疏》蹂黍、以水潤米、必當蹂之使濕。『朱傳』簸揚去糠也。蹂、蹂禾取穀以繼之也。
音訓
- 音
- ジウ 〈『廣韻・上聲・有・蹂』人九切〉[róu]{jau2}
- ジウ(漢) 〈『廣韻・下平聲・尤・柔』耳由切〉[róu]{jau4}
- 訓
- ふむ
藤堂は平聲尤韻をのみ示す。KO字源は有韻を「ふむ」、尤韻を「禾をふみて穀を取る」とする。現代官話はróuの一音。粵音資料集叢を見るには、上聲を「蹂躪、踐踏」、平聲を「踐禾取穀」の意に用ゐる。
解字
白川
形聲。聲符は柔。
『説文解字』に厹を正字とし、獸の足、地を蹂むなり
とし、篆文として蹂を錄する。
いま蹂踐の字に蹂を用ゐる。厹は大小の蟲が相蹂踐する形で、獸足を以て相蹂踐する意には、蹂の字が相應しい。
『詩・大雅・生民』或簸或蹂。
(或いは簸ぎ、或いは蹂む)とは、脱穀のことをいふ。
藤堂
足と音符柔(柔らかい、ねつちり)の會意兼形聲。足の裏でやんはりと踏み躙ること。
漢字多功能字庫
足に從ひ柔聲。蹂は禸の異體字。本義は獸の足が地面を踏むこと。後に蹂を以て廣く踏むことを指す。『説文解字』禸、獸足蹂地也。(中略)蹂、篆文从足、柔聲。
『玉篇・足部』蹂、蹂踐、蹋也。
- 『史記・項羽本紀』
王翳取其頭、餘騎相蹂踐爭項王、相殺者數十人。
- 『漢書・王商史丹傅喜傳』
建始三年秋、京師民無故相驚、言大水至、百姓奔走相蹂躪、老弱號呼、長安中大亂。
顏師古注蹂、踐也。躪、轢也。
引伸して欺壓(虐げる、抑へ附ける、威壓する)、侵凌(侵し辱める)の意。
- 『舊唐書・權德輿傳』
兩京蹂於胡騎、士君子多以家渡江東、知名之士如李華、柳識兄弟者、皆仰臯之德而友善之。
- 『宋史・高宗本紀』
五月壬午朔、汀、漳、泉三州民田被賊蹂踐、蠲其二稅。
揉と通じ、揉搓(揉む、こする、こねる)を表す。
- 『詩・大雅・生民』
或舂或揄、或簸或蹂。
毛傳或簸糠者、或蹂黍者。
馬瑞辰通釋古者蹂米之法、與蹂禾異。蹂禾以足踐之、蹂米蓋以手重擦之。
屬性
- 蹂
- U+8E42
- JIS: 1-76-90