蛙 - 漢字私註

説文解字

鼃

蝦蟇也。从𪓑聲。烏媧切。

十三黽部

説文解字注

鼃

蝦蟆屬。「屬」各本作「也」。今依『韵會・九佳』所據《小徐本》正。『廣韵』同。蝦蟆見《虫部》。蝦蟆與詹諸小別。鼃則與蝦蟆大別。而其形相似。故言屬而別見。『漢書・武帝紀・元鼎五年』「鼃蝦蟆鬬」。是可知其別矣。鼃者、『周禮』所謂蟈、今南人所謂水雞、亦曰田雞。鼃蛤皆其鳴聲也。故宋人詩多云吠蛤。亦云蛙聲閤閤。

从黽圭聲。烏媧切。古音十六部。按當音乖。字亦作䵷、作蛙。

康煕字典

部・劃數
虫部・六劃
古文

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤烏瓜切、音哇。『說文』蝦蟆屬。『本草』今處處有之、似蝦蟆而背靑綠色、尖觜細腹、俗謂之靑蛙。亦有背作黃路者、謂之金線蛙。『尹文子・大道上篇』路逢怒蛙而軾之。『前漢・五行志』武帝元鼎五年秋、蛙與蝦蟆羣鬭。

又『韻會』淫也。『前漢・王莽傳』紫色蛙聲。《註》淫蛙之聲。

又烏蝸切、音哇。義同。

本作䖯。或書作。別詳黽部。

部・劃數
黽部・六劃

『集韻』『正韻』𠀤古文字。『說文』蝦蟇也。『玉篇』䵷同。『釋名』鼃蟈、長股也。顏師古曰、䵷似鰕蟇而小、長脚。『爾雅・釋魚・疏』陶註【本草】云、一種小形善鳴、喚名爲䵷者、卽郭璞云靑蛙者也。後脚長、故善躍。大其聲、則曰䵷。小其聲、則曰蛤。『周禮・秋官』蟈氏掌去䵷黽。

又淫聲曰䵷聲。班固曰、淫䵷不可聽者、非韶夏之樂也。『前漢・王莽傳贊』紫色䵷聲。《註》䵷者、樂之淫聲。

又始也。『廣雅』鼃、始也。

又『廣韻』戸媧切『集韻』胡瓜切、𠀤音華。義同。

部・劃數
黽部・六劃

『正字通』同

音訓義

ワイ(漢) ヱ(呉) ア(慣)⦅一⦆
ワ(漢) ヱ(呉) ア(慣)⦅二⦆
クヮイ(漢) ヱ(呉)⦅三⦆
クヮイ(推)⦅四⦆
クヮ(推)⦅五⦆⦅六⦆
かへる⦅訓義⦆
かはづ⦅訓義⦆
官話
⦅一⦆⦅二⦆
粤語
waa1⦅二⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・上平聲』烏媧切
集韻・平聲二佳第十三』烏蝸切
『五音集韻・上平聲卷第二・皆第十一・影二蛙』烏媧切
聲母
影(喉音・全清)
等呼
官話
日本語音
ワイ(漢)
ヱ(呉)
ア(慣)

⦅二⦆

反切
廣韻・下平聲』烏𤓰切
集韻・平聲三麻第九』烏瓜切
『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・影二窊』烏𤓰切
聲母
影(喉音・全清)
等呼
官話
粤語
waa1
日本語音
ワ(漢)
ヱ(呉)
ア(慣)

⦅三⦆

反切
廣韻・上平聲』戸媧切
聲母
匣(喉音・全濁)
日本語音
クヮイ(漢)
ヱ(呉)

⦅四⦆

反切
集韻・平聲二・皆第十四・懷』乎乖切
『五音集韻・上平聲卷第二・皆第十一・匣二懷』戸乖切
聲母
匣(喉音・全濁)
等呼
日本語音
クヮイ(推)

⦅五⦆

反切
集韻・平聲三麻第九』胡瓜切
『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・匣二華』戸花切
聲母
匣(喉音・全濁)
等呼
日本語音
クヮ(推)

⦅六⦆

反切
集韻・平聲三麻第九』呼瓜切
聲母
曉(喉音・全清)
日本語音
クヮ(推)

⦅訓義⦆

かへる
かはづ
兩棲綱無尾目の動物の總稱。
淫ら。濫りがはしい。淫らな聲。濫りがはしい音樂。
補註
音義の使ひ分けは字書には見えざるにつき、纏めて記す。

解字

白川

形聲。聲符は。圭に哇、洼の聲がある。

『説文解字』に鼃は蝦蟇なりとし、をその象形とする。鼃も蟇も、その鳴き聲を採る。『説文通訓定聲』にうなじを以て鳴く者なり。蘇俗に之れを田鷄と謂ひ、揚州に之れを水鷄と謂ひ、亦た吠蛤と曰ふ。其の聲の閣閣たるを言ふなり。とし、また鼃は食ふべきも、蝦蟇は食ふべからず。同類にして異物。といふ。

字はまた䵷に作り、一般には蛙を用ゐる。

藤堂

蛙はと音符の形聲。蛙の鳴き聲を表す擬聲語。

鼃は(かへる)と音符圭の形聲。わあわあといふ蛙の鳴き聲を眞似た擬聲語。

漢語多功能字庫

もとは鼃に作り、に從ひ聲。黽の筆劃が比較的繁雜なため、後に改めてに從ひ蛙に作る。本義は蛙科の兩棲動物。『説文解字』鼃、蝦蟇也。(後略)《段注》鼃者、『周禮』所謂蟈。今南人所謂水雞、亦曰田雞。

成語の「井底之蛙」の語の出典は、『莊子・秋水』子獨不聞夫埳井之鼃乎。謂東海之鱉曰「吾樂與。吾跳梁乎井幹之上、入休乎缺甃之崖……且夫擅一壑之水、而跨跱埳井之樂、此亦至矣、夫子奚不時來入觀乎。」東海之鱉左足未入、而右膝已縶矣。於是逡巡而卻、告之曰「夫海千里之遠、不足以舉其大。千仞之高、不足以極其深。……夫不為頃久推移、不以多少進退者、此亦東海之大樂也。」於是埳井之鼃聞之、適適然驚、規規然自失也。である。井の中の蛙は淺い井を獨占することを最大の快樂とするが、東海(東支那海)の廣闊無邊を知らず。後に「埳井之鼃」、「井底之蛙」は、視野が狹く、見識が淺いことの喩へとなつた。

蛙は哇に通じ、靡曼、淫邪な樂曲を表す。

屬性

U+86D9
JIS: 1-19-31
U+4D77
JIS: 2-94-64
U+9F03
JIS: 2-94-65
JIS X 0212: 77-4