説文解字私註 十部
- 文九
- 十
-
數之具也。一爲東西、丨爲南北、則四方中央備矣。凡十之屬皆从十。
- 丈
十尺也。从又持十。
- 千
-
十百也。从十从人。
- 十に從ふ字ではなく、當部に配するは誤り。
- 肸
響、布也。从十从䏌。
- 卙
卙卙、盛也。从十从甚。汝南名蠶盛曰卙。
- 博
大通也。从十从尃。尃、布也。
- 㔹
材十人也。从十力聲。
- 廿
-
二十并也。古文省。
- 𠦫
詞之𠦫矣。从十咠聲。
舊版
丈
- 説文解字
十尺也。从又持十。
- 康煕字典
- 一部二劃
『唐韻』直兩切『集韻』『韻會』雉兩切『正韻』呈兩切、𡘋長上聲。十尺曰丈。『前漢・律歷志』十分爲寸、十寸爲尺、十尺爲丈、十丈爲引。又『左傳・昭三十二年』以令役於諸侯、屬役賦丈。《疏》屬聚下役、課賦尺丈。又『哀元年』廣丈高倍。《註》壘厚一丈高二万。又『禮・曲禮』若非飮食之客、則布席、席閒函丈。《註》函、容也。
長老之稱。『易・師卦』師貞丈人吉。又朋友尊稱。『長編』富鄭公稱范文正公曰范十二丈。
釋氏所居曰方丈。『杜甫詩』方丈渾連水。
『杜甫詩』百丈誰家上瀨船。《註》百丈、牽船篾也。
『說文』从又持十。俗加點、非。『正譌』丈借爲扶行之杖。老人持杖、故曰丈人。別作杖、通。
- 音
- ヂャウ
- 解字(白川)
- 杖の形と又の會意。手に杖を持つ形、杖の初文。
- 解字(藤堂)
- 又は手尺で長さを測ることを示す。又と十で十尺、即ち一丈を表す。長い長さの意を含む。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 丈は秦漢の出土文獻の常用字で、本義は度量の單位、十尺を一丈とする。戰國秦簡の丈の書き方は時に支に良く似た形に變はる。魏晉の後、筆を連ね簡化し支と區別するが、その字形は現行の楷書と基本的に變はらない。典籍では本義に用ゐる。簡帛文字でも本義に用ゐる。
- また量る意に用ゐる。
- また、老丈、岳丈など、男性の年長者に對する呼稱に用ゐる。
- 丈夫の略稱とすることができる。
- また通じて杖となし、扶(手助けする、支へる)、倚(もたれかかる)を表す。
- 表
- 當用漢字・常用漢字
肸
- 説文解字
響、布也。从十从䏌。
また註に臣鉉等曰、䏌、振䏌也。
とある。段注は肸蠁、布也。
とする。- 康煕字典
- 肉部四部
『唐韻』羲乙切『集韻』『韻會』『正韻』黑乙切、𠀤欣入聲。『說文』響布也。从十从䏌。『徐曰』䏌、振䏌也。『前漢・司馬相如傳』肸蠁布寫。《註》肸蠁、盛作也。又『揚雄傳』薌呹肸以掍根兮、聲駍隱而歷鍾。《註》言風之動樹、聲響振起衆根、合同駍隱、而盛歷入殿上之鍾也。根猶株也。『左思・蜀都賦』景福肸蠁而興作。《註》韋昭曰、肹蠁濕生蟲、蚊類是也、大福之興、如此蟲騰起矣。
『正韻』佛肸、大貌。又人名。
西域名。『前漢・西域傳』四曰肸頓䎏侯。
人名。公孫肸、鄭大夫。見『左傳・襄三十年』。又『前漢・功臣表』疆圉侯留肸。又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤許訖切、音迄。
『集韻』顯結切、音𡘐。義𠀤同。
『集韻』兵媚切、音祕。邑名。在魯。『史記・魯世家』作肸誓。《註》魯東郊之地名。『尚書』作費。
通作肹。
- 音
- キツ
- 解字(白川)
- 形聲。䏌聲。廣く彌漫する意。
- 解字(藤堂)
- 丂(つかへてまがる)と䏌の會意、䏌は亦た音符。響き渡るの意。
晉の叔向の諱。姓は姬。氏は羊舌。
肸肸とは笑ふ聲。
卙
- 説文解字
卙卙、盛也。从十从甚。汝南名蠶盛曰卙。
- 康煕字典
- 十部九劃
『集韻』卽入切、音㗱。『說文』卙卙、盛也。汝南名蠶盛曰卙。
『玉篇』會聚也。
『集韻』叱入切、音出。義同。『廣韻』作斟。
博
- 字形
- 正しくはの形。
- 説文解字
大通也。从十从尃。尃、布也。
段注は亦聲。
とする。- 康煕字典
- 十部十劃
『唐韻』補各切『集韻』『韻會』『正韻』伯各切、𠀤邦入聲。『說文』大通也。从十尃。尃、布也、亦聲。『徐曰』十者、成數也。『玉篇』廣也、通也。『增韻』普也。『荀子・修身篇』多聞曰博。
『韻會』貿易也。古琴曲有不博金。
六博、局戲。『家語』君子不博、爲其兼行惡道故也。
州名。『韻會』春秋、齊之聊攝隨爲博州。
姓。『韻會』古有博勞、善相馬。
- 訓
- ひろい。ひろめる。
- 解字(白川)
- 形聲。聲符は尃。尃は甫と寸に從ひ、苗木を扶植することをいふ。政令を施すことをそれに譬へて、尃は敷施の意、博大の意となる。また干に從ふ[干尃]は廣伐すること。博が十に從ふ理はなく、博は[干尃]より出た字であらう。
- 解字(藤堂)
- 甫は圃の原字、平らで廣い苗牀。尃は平らに擴げること。博は十(集める)と尃の會意、尃は亦た音符、多くのものが平らに擴がること。また、拍や搏に當て、圖星にぴたりと打ち當てる意。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 金文は盾を簡單に書いた形に從ひ、尃聲。盾を用ゐて搏鬥(補註: 挌鬪)を助けることを表す。博の異體に干に從ふものがあるが、干も盾も搏鬥で用ゐるものである。後に搏鬥の義は手に從ふ搏字で表し、博は假借して廣博、博大、淵博、取得、博奕などの義に用ゐるやうになつた。
- 博奕は二人が棋戲で競ふことを表す。棋戲は春秋期には既に出現し、漢代に至つて盛んに行はれた。老幼が皆知り、博奕の上手な人が尊敬され、漢朝は博奕の官(博待詔官)を設けた。その道具を博具と稱する。遊び方は一つではなく、骰子一つの博や、骰子二つと棋子を六つづつ用ゐる六博(陸博とも)などがある。
- 金文は本義に用ゐ、搏鬥を表す。
- 表
- 當用漢字・常用漢字
㔹
- 説文解字
材十人也。从十力聲。
- 康煕字典
- 十部二劃
『唐韻』盧則切『集韻』歷德切、𠀤音勒。『說文』材十人也。从十、力聲。『廣韻』功大。
𠦫
- 説文解字
詞之𠦫矣。从十咠聲。
- 康煕字典
- 十部九劃
『唐韻』秦入切『集韻』籍入切、𠀤音集。『說文』詞之集也。