千 - 漢字私註
説文解字
十百也。从十从人。
- 三・十部
康煕字典
- 部・劃數
- 十部(一劃)
『唐韻』蒼先切『集韻』『韻會』『正韻』倉先切、𠀤音阡。『說文』十百也。
又『廣韻』漢複姓。
又『韻補』叶雌人切、請平聲。『劉劭趙都賦』宮妾盈兮數百、食客過兮三千。越信孟之𤰞體、慕姬旦之懿仁。
音訓
- 音
- セン(漢、呉) 〈『廣韻・下平聲・先・千』蒼先切〉
- 訓
- ち。ちたび。
解字
白川
形聲。聲符は人。
卜文、金文は、人の下部に肥點を加へて人と區別する。
金文に萬年を萬人と記す例があり、人を年の意に用ゐる。人にその聲もあつたのであらう。(補註: 年はあるいは秊に作り、説文解字は千聲とする。藤堂は人亦聲とする。落合は年の甲骨文を人亦聲、のちの字體を千聲とする。)
卜文に二千、三千を、人の下部に二横劃、三横劃を加へて記す例があるので、千が人聲に從ふ字であつたことは疑ひがない。
藤堂
假借。原字は人と同形。
恐らく人の前進するさまから、進、晉の音を表し、その音を借りて數詞の1000に當てた假借字であらう。それに一を加へ、一千を表したのが、千といふ字形となつた。或はどんどん數へ進んだ數の意か。
落合
假借。殷代には人と千の音が近く、それを借りた。字形は假借した人に一を加へて一千を表した合文を起源とする。二千以上は、組み合はせる數字を增して、同じく合文で表示する。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ち。百の十倍。實數ではなく漠然とした大きな數字を表す場合もある。
- 《英藏》558
貞、勿登人三千。
- 《殷墟小屯中村南甲骨》335
辛未貞、亡壬小牢、千豭、四爵。
- 《英藏》558
- 千⿱羽口
- 地名か。同文には「六千洀」といふ地名も見える。《合補》6751
戊申卜、王立各千⿱羽口、往行于六千洀、…鬱行…。
- 千森
- 神名。祭祀を行ふ場所とする説もある。《英藏》
…侑曰千森、王⿰東戌于之八犬八豖…四羊南四。
後に人、千は字音が離れたが、金文にも年の下部の人(亦聲符)を千に置換したものがあり、西周代でも千は人と近い發音だつた模樣。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、一に從ひ、人聲。古人は人字を假借して千の數を表し、一を加へて一千の合文を示す。後に一千の一を省くやうになり、一千の合文が單字の千となつた(張秉權)。本義は千の數。按ずるに、千は十には從はず、古人は人を借りて千の數を表し、一を人の縱劃の眞ん中に加へて一千の合文とした。甲骨文や金文には、人に三劃を加へて三千となし、四劃を加へて四千となすなどしたものがあり、一を人に加へる字はもと合文と見るべきである。後に一千の一を省くやうになり、單字の千となつた。一と人に從ふ字で數を記す字形構造は百に相似する(補註: 百は一と白の合文) 。于省吾、季旭昇は、一は人字と千字を區別する符號であるとする。
甲骨文、金文での用義は次のとほり。
- 數詞に用ゐる。
- 《合集》31997
八千人。
- 《合集》6409
今春王𠬞(共)人五千正(征)土方
は、今春に王が五千人を徵集して土方を征伐することを言ふ。
- 《合集》31997
- 衆多の義を派生する。
- 梁其鼎
其百子千孫。
- 翏生盨
其百男百女千孫。
- 梁其鼎
千を通じて阡となし、田の間の南北の小路を指す。
- 《睡虎地秦簡・法律答問》簡64
盜徙封、贖耐。可(何)如為『封』? 『封』即田千佰。
は、「こつそりと田の境の表識を移動する者は、耐刑(ひげを剃り落とす刑)、あるいは金錢で贖ふ刑に處す。いかなるものが田の境の標識となるのか? 標識は田の間の小路である。」の意。
屬性
- 千
- U+5343
- JIS: 1-32-73
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
千聲の字
其の他
- 仟
- 阡
- 千の大字として仟や阡を用ゐる。