衣 - 漢字私註
説文解字
依也。上曰衣、下曰裳。象覆二人之形。凡衣之屬皆从衣。於稀切。
- 八・衣部
説文解字注
依也。曡韵爲訓。依者、倚也。衣者、人所倚以蔽體者也。上曰衣、下曰常。常、下帬也。象覆二人之形。孫氏星衍曰、當作二𠃋。𠃋、古文肱也。玉裁謂、自《人部》至此部及下文《老部》《尸部》字皆从人。衣篆非從人。則無由次此。故楚金疑義篇作。云『說文』字體與小篆有異。今人小篆作。乃是變體求工耳。下文表襲袤裔四古文皆从。則知古文从二人也。今人作卒字亦从二人。何以云覆二人也。云覆二人則貴賤皆覆。上下有服而覆同也。於稀切。十五部。凡衣之屬皆从衣。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤於希切、音依。『說文』上曰衣、下曰裳。『世本』胡曹作衣。黃帝時人。『白虎通』衣者、隱也。『釋名』衣、依也。人所以依以庇寒暑也。『玉篇』所以形軀依也。『類篇』象覆二人之形。『易・繫辭』黃帝、堯、舜垂衣裳、而天下治、蓋取諸乾坤。『禮・玉藻』衣、正色。裳、閒色。『傅玄・衣銘』衣服從其儀、君子德也。衣以飾外、德以飾內。
又絲衣、祭服也。『詩・周額』絲衣其紑。
又『博雅』寢衣、衾、𩏩服也。
又『釋名』中衣、言在外小衣之外、大衣之中也。
又心衣、抱腹而施鉤肩、鉤肩之閒施一襠、以養心也。
又面衣。『晉書・惠帝紀』尚書高光進面衣。
又耳衣。『唐・邊塞曲』金縫耳衣寒。
又綴衣、掌衣服官名。『書・立政』王左右常伯、常任、準人、綴衣、虎賁。
又白衣、未仕之稱。『後漢・崔駰傳』憲諫以爲不宜與白衣會。
又牛衣、編亂麻爲之。卽今俗呼爲龍具者。『前漢・王章傳』章疾病、無被、臥牛衣中。又垣衣、苔也。『王融詩』垣衣不可裳。
又姓。『通志・氏族略』見『姓苑』。『正字通』明有衣勉仁、衣祐。
又人名。『高士傳』被衣、堯時人。蒲衣、舜時人。
又靑衣、地名。『史記・彭越傳』處蜀靑衣。《註》今爲臨卭。
又借服膺意。『書・康誥』紹聞衣德言。
又『唐韻』於旣切、讀去聲。服之也。『玉篇』以衣被人也。『增韻』著衣也。『晏子・雜下篇』衣十升之布。『前漢・東方朔傳』身衣弋綈。
又『韻補』於斤切。齊人言衣聲如殷、今姓有衣者、殷之謂歟。
一作㐆。『通志・六書略』卽衣字、从向、身。
音訓
- 音
- (1) イ(漢) エ(呉) 〈『廣韻・上平聲・微・依』於希切〉[yī]{ji1}
- (2) イ(漢) エ(呉) 〈『廣韻・去聲・未・衣』於旣切〉[yì]{ji3}
- 訓
- (1) ころも
- (2) きる。きせる。
解字
白川
象形。衣の襟元を合はせた形に象る。
『説文解字』に依也。
、『白虎通・衣裳』に衣者、隱也。
(衣は隱るなり)とあり、依、隱は聲の近い字によつて解する。依は衣による受靈、「襲衾」の觀念を含むものと思はれる。
卜文の衣祀は文獻の殷祀に當たり、合祭をいふ。
藤堂
象形。後ろの襟を立て、前の襟元を合はせて肌を隱した著物の襟の部分を描いたもの。
『白虎通・衣裳』に衣者、隱也。裳者、障也。
とあり、肌を隱すものの意。
落合
衣服の象形。下部が襟元を合はせた形、上部が奧襟の部分。甲骨文には纖維の狀態を表す線を加へた異體もある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 全員、全部を意味する名詞または副詞。「みな」と訓ずる。假借の用法であらう。《懷特氏等所藏甲骨文集》32
癸巳卜爭貞、翌甲午、酒彡自上甲至于多后衣。
- 祭祀名。《輯佚》36
辛未卜貞、勿衣服。
- 地名またはその長。《合集》24247
庚申卜行貞、王賓柰、亡尤。在衣。
- 衣逐
- 衣は「みな」の意、狩獵で多種の獲物を逐ふこと。衣狩ともいふ。《輯佚》701
戊辰卜在⿱以皿貞、王田、衣逐、亡災。
- 衣入
- 衣は「みな」の意、殷王が大勢の臣下とともに田獵地や祭祀施設などに入ること。《合集》5165
乙亥卜爭貞、生七月、王勿衣入、戠。
遠の甲骨文で聲符として用ゐられてをり、殷代には陽聲(鼻音韻尾)だつたとする説もある。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は上衣の形に象る。
古代、上衣を衣といひ、下衣を裳といひ、二つを混ぜなかつた。衣字は重要な部首で、他字の要素となるとき、往々にして衣と左右の襟の間に他の要素を加へ、物が懷中にあるさまに喩へる。
甲骨文では地名、人名、祭名に用ゐる。
金文での用法は次のとほり。
- 上衣を表す。無叀鼎
易(賜)女(汝)玄衣
の玄衣とは黑い上衣のこと。 - 用ゐて卒となし、終結を表す。[冬戈]簋
衣(卒)搏、無愍
の卒搏とは挌鬪を終へること。衣と卒の形は近い。 - 殷と通讀し、祭名を表す。天亡簋
衣祀于王、不(丕)顯考文王
。
屬性
- 衣
- U+8863
- JIS: 1-16-65
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
衣に從ふ字を漢字私註部別一覽・衣部に蒐める。