匈 - 漢字私註
説文解字
- 匈
聲也。从勹凶聲。
- 九・勹部
- 𦙄
匈或从肉。
説文解字注
- 匈
膺也。从勹凶聲。
- 𦙄
匈或从肉。
康煕字典
- 部・劃數
- 勹部四劃
『唐韻』『集韻』『正韻』許容切『韻會』虛容切、𠀤音胸。『說文』膺也、从勹凶聲。『前漢・司馬相如傳』其於匈中、曾不蔕芥。『楚辭・哀時命』惟煩懣而盈匈。
又『前漢・高帝紀』天下匈匈。《註》匈匈、喧擾之意。
又『正韻』匈匈、讙議之聲。『荀子・天論篇』君子不爲小人之匈匈也、而輟其行。
又『韻會』『正韻』𠀤許用切、兄去聲。義同。
音訓・用義
- 音
- キョウ(漢)
- 訓
- むね。おそれる。みだれる。さわぐ。
匈匈とは、騷ぎ亂れるさま、怖ぢ氣づき騷ぐさま。『史記・項羽紀』項王謂漢王曰「天下匈匈數歲者、徒以吾兩人耳、願與漢王挑戰決雌雄、毋徒苦天下之民父子為也。」漢王笑謝曰「吾寧鬬智、不能鬬力。」
また、喧しく議論するさま。『荀子・天論』(上揭)。
解字
白川
象形。側身形の人の胸部に、呪飾としての㐅形の文身を加へた形を象る。勹と凶の會意と解してもよいが、包と同じやうに全體象形の字とする。
『説文解字』に凶聲とするが、形聲の字ではない。
凶、兇、匈、胸、恟は一系の字。兇懼のことは最も胸に感ずるものであるから、恟といふ。
藤堂
勹と音符凶の會意兼形聲。凶は凵型の凹みに嵌まつて藻搔くさまを示す。勹は胸の外枠を示す。匈は胸の中に虛ろな穴を包んだ氣持ち。
漢字多功能字庫
勹に從ひ凶聲。胸の古字で、金文に𦙄字があり、凶と肉に從ひ、『説文解字』の或體と同じ形。構形初義不明。
金文の𦙄は通讀して容となし、收めることを表す。少府銀圜器𦙄(容)二益(鎰)
。
『説文解字』に據れば𦙄は匈の或體。『史記・高祖本紀』項羽大怒、伏弩射中漢王、漢王傷匈。
また通讀して兇となし、兇惡なることを表す。『漢書・佞幸傳・石顯』顯聞眾人匈匈、言己殺前將軍蕭望之。
また匈奴を指す稱となし、同時に北方少數民族の汎稱とする。『舊唐書・突厥傳上』又匈虜一敗、或當懼而修德、結怨於我、為患不細。
西方では、Hunnorum(ラテン語) 、Huns(英語)、Hunnen(ドイツ語)、Hunové(チェコ語)が、中央アジアから移動してきた民族を指す。但し歐洲の匈人が匈奴人を直接襲ふものなのかどうか、學會に爭議がある。「匈奴語」の歷史文獻は豐富でなく、その性質や出所についてもまた學會に爭議がある。
屬性
- 匈
- U+5308
- JIS: 1-50-19
関聯字
匈聲の字
- 胸
- 詾
- 洶