兀 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
高而上平也。从一在儿上。 儿各本作人。今正。一在儿上、高而平之意也。凡从兀聲之字多取孤高之意。
讀若敻。夐今韵在四十四諍。古音在元寒部。今韵十月者、元之入也。兀音同月。是以跀亦作𧿁。其平聲讀如涓。在十四部。今音五忽切。
康煕字典
- 部・劃數
- 儿部(一劃)
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤五忽切、音杌。『說文』兀、高而上平也。从一在人上。
又刖足曰兀。『莊子・德充符』魯有兀者叔山無趾、踵見仲尼。仲尼曰、無趾、兀者也。
又『柳宗元・晉問篇』乗水潦之波、以入於河而流焉、盪突硉兀。《註》危石也。
又兀兀、不動貌。『韓愈・進學解』常兀兀以窮年。
又『正韻』臬兀、不安也。亦作卼。『易・困卦』于臲卼。
又姓。『韻會』後魏改樂安王元覽爲兀氏。
又『韻會』或作掘。『莊子・齊物論』掘若槁木。
音訓・用義
- 音
- ゴツ(漢) ゴチ(呉) コツ(慣) 〈『廣韻・入聲・没・兀』五忽切〉[wù]{ngat6}
- 訓
- あしきる
高くして平らかなこと。高く突き出てゐること。
兀兀とは、動かざるさま、獨り困苦して勉めるさま、ただ獨り頑張るさま(上揭『韓愈』)。また、搖れて危ないさま。蘇軾《馬上賦詩》不飲胡爲醉兀兀
(飲まざるになんすれぞ醉ひて兀兀たる)。
また刖と通じ、足を切る刑を指す。
解字
白川
象形。頭髮を剃り落とした形。元は結髮の形。元の髮を切つた形は兀で、髡首といふ。髡首の刑を受けた者を兀者といふ。
『說文』に地勢をいふ字とするが、下部は人の形。
唐・杜牧《阿房宮賦》蜀山兀、阿房出
(蜀山兀として阿房出づ)は比喩の用法。
藤堂
象形。𠘨形に飛び出た姿を描いたもの。元(人の頭)の入聲に當たる言葉で、高く突き出た意を含む。『說文』に高くして上の平らかなるなり
とある。
落合
元の橫劃の少ないものは兀の字形に當たる。
漢字多功能字庫
一と人に從ふ。橫劃を人の首の所に置き、人の頭の位置を標示する。本義は人の首。兀と元はもと同じ字で、後に二字に分化した(林義光)。按ずるに『說文』の説は本義に非ず。
甲骨文では人名に用ゐる。
- 《合集》19642正
乎(呼)兀。
- 《合集》19790
王用二帚(婦)兀
は、王が兀といふ名の二人の婦人を任用するの意。
傳世文獻での用義は次のとほり。
- 多く高く聳え突出した事物を形容するのに用ゐる。
- 劉禹鍚《九華山歌》
君不見敬亭之山黃索漠、兀如斷岸無稜角。
- 說文解字注
凡從兀聲之字、多取孤高之意。
- 劉禹鍚《九華山歌》
- 高く出るの義より、高く出るものを切り落とすの意を派生する。『莊子・德充符』
魯有兀者叔山無趾,踵見仲尼。仲尼曰「子不謹,前既犯患若是矣。雖今來、何及矣。」無趾曰「吾唯不知務而輕用吾身,吾是以亡足。(後略)
- 兀聲に從ふ字がまた多く事物を切り落とす意を帶びる。髡は斷髮。𠚯は木の枝を切ること。𧿁は足を切ること。
- 禿げたさまを指す。杜牧《阿房宮賦》(上揭)
- 副詞に用ゐ、仍然(依然)を表す。《水滸傳》第九十一回
黑旋風李逵兀是火剌剌的只顧砍殺。
『說文新證』
元字條に、兀と元はもと一字、後に分化し、『說文』の高而上平
の義は假借義であるとする。
屬性
- 兀
- U+5140
- JIS: 1-49-26
関聯字
兀に從ふ字
兀聲の字
- 𧿁
- 髡
- 扤
- 阢