人 - 漢字私註
説文解字
天地之性最貴者也。此籒文。象臂脛之形。凡人之屬皆从人。如鄰切。
- 八・人部
説文解字注
天地之性冣貴者也。冣本作最。性古文以爲生字。『左傳〔文七年〕』正德、利用、厚生。『國語』作厚性、是也。許偁古語不改其字。『〔禮記〕禮運』曰、人者、其天地之德、陰陽之交、鬼神之會、五行之秀氣也。又曰、人者、天地之心也、五行之端也、食味別聲被色而生者也。按禽獸艸木皆天地所生。而不得爲天地之心。惟人爲天地之心。故天地之生此爲極貴。天地之心謂之人。能與天地合德。果實之心亦謂之人。能復生艸木而成果實。皆至微而具全體也。果人之字、自宋元以前本艸方書詩歌紀載無不作人字。自明成化重刊『本艸』乃盡改爲仁字。於理不通。學者所當知也。○仁者、人之德也。不可謂人曰仁。其可謂果人曰果仁哉。金泰和閒所刊『本艸』皆作人。藏袁廷檮所。此籒文。此對儿爲古文奇字人言之。如大之有古文籒文之別也。字多从籒文者。故先籒而後古文。象臂脛之形。人以從生。貴於橫生。故象其上臂下脛。如鄰切。十二部。凡人之屬皆从人。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𠔽
『唐韻』如鄰切『集韻』『韻會』『正韻』而鄰切、𠀤音仁。『說文』天地之性最貴者也。『釋名』人、仁也、仁生物也。『禮・禮運』人者、天地之德、隂陽之交、鬼神之會、五行之秀氣也。
又一人、君也。『書・呂𠛬』一人有慶、兆民賴之。又予一人、天子自稱也。『湯誥』嗟爾萬方有衆、明聽予一人誥。
又二人、父母也。『詩・小雅』明發不寐、有懷二人。
又左人、中人、翟國二邑。
又官名。『周禮』有庖人、亨人、漿人、凌人之類。
又楓人、老楓所化、見『朝野僉載』。又蒲人、艾人、見『歲時記』。
又姓。明人傑。又左人、聞人、俱複姓。
又『韻補』叶如延切、音然。『劉向・列女頌』望色請罪、桓公嘉焉。厥後治內、立爲夫人。
- 部・劃數
- 冂部・二劃
『集韻』人古作𠔽。註見部首。
音訓
- 音
- ジン(漢) ニン(呉) 〈『廣韻・上平聲・眞・仁』如鄰切〉[rén]{jan4}
- 訓
- ひと。ひとびと。たみ(人民)。
解字
白川
象形。人の側身形。
字形について、『説文解字』は此れ籒文、臂脛の形に象る
といふ。
卜文、金文はみなこの形に作り、匈(胸)、包、身など、みなこの形に從ふ。
藤堂
象形。人の立つた姿を描いたもので、もと身近な同族や隣人仲間を意味した。
落合
象形。人を側面から見た形。
甲骨文の要素としては、人の動作や狀態などを表す字の一部となることが多い。後には亻や儿につくることもある。
祭祀犧牲の助數詞として用ゐられる異體字(補註: 二人が向き合ふ形)があり、多數の人牲を表したものであらう。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ひと。特定の土地の人を指す場合には地名を附して「某人」と呼ぶ。
- 《合補》2096
貞、勿使人于插。
- 《合集》6252
貞、呼伐𢀛人。在…。
- 《合補》2096
- 人を數へる助數詞。
- 《合補》2000
貞、登人三千。
- 《合集》15656
燎十人。
- 《合補》2000
- 地名。東方に在つた殷の敵對勢力で、主に人方と呼ばれる。《合補》11233・後半記時
癸丑王卜貞、旬亡禍。王來征人方。
- 占卜用語。意義は不明。《合集》17056
王占曰、惟老、惟人。
- 一人
- 殷王の一人稱。余一人ともいふ。《合集》557
貞、其于一人禍。
- 丁人
- 後代と同じく青年男子の意であらう。
- 戈人
- 戰爭に動員されてをり、軍隊の意であらう。
- 衆人
- 王の配下の多くの人。
漢字多功能字庫
人の古文字は、人の側面、手を垂れ侍立する形に象る。本義は人。
人字は人類を指す。戰國文字はあるいは人の身の上に圓點を加へ裝飾とし、圓點は往々にして伸ばされ橫劃になり、千の形に訛變する。つまりは人と千は一字から分化した字。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐる。《合集》22626
伐十人
は、十人を斬り殺す意。 - 《合集》20328
余一人
は、殷王の自稱。 - 通假して夷となし、方國名。《英》2524
王正(征)人方
。人方は夷方のことで、東夷を指す。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐる。
- 宜侯夨簋
庶人
は平民のこと。 - 洹子孟姜壺
人民
。 - 齊侯鎛
民人
。 - 『周禮・地官・大司徒』
掌建邦之土地之圖與其人民之數。
『左傳・襄公九年』其士競於教。其庶人力於農穡。
- 宜侯夨簋
- 大盂鼎
我一人
は、甲骨文の「余一人」と同じく、天子の自稱。『詩・大雅・下武』媚茲一人
毛亨傳一人、天子也。
『國語・周語上・內史過論晉惠公必無後』余一人有罪
韋昭注天子自稱曰余一人。
『白虎通・號篇』以天下之大、四海之內、所共尊者一人耳。
- 人主とは君主のこと。中山王鼎「「長為人宔(主)」。
- 人臣とは臣下のこと。中山王鼎
智(知)為人臣之宜(義)焉。
『荀子・王霸』人主不公、人臣不忠也。
- 人鬲と西周代に社會の底邊層の肉體勞働者のことで、單に鬲ともいふ。一説に身分の比較的低い庶人のこと。
- 令簋
臣十家、鬲百人。
- 大盂鼎
人鬲千又五十夫
。
- 令簋
- また人を單位詞に用ゐる。[冬戈]簋
孚(俘)人百又十又四人
は、俘虜114人を表す。『尚書・泰誓』予有亂臣十人
。 - 通過して年となす。甫人父匜
甫人父乍(作)旅匜、萬人(年)用。
「萬人用」は金文の成語で「萬年用」、甫人父が攜行用の匜(水差しの類)を鑄造し、これを萬年使用する、の意。人は年の聲符で、故に年の通假字とする。この説は章太炎(炳麟)の「娘日古音歸泥」説を補充する一證據と言へる(楊樹達)。
人の本字のほか、表示する姿勢が異なる形に作る。また眞つ直ぐ立ち手を揚げる形の大、跪坐する形の卩、膝を曲げて地に坐る形の尸、首を傾げる形の夨、走る形の夭、脚を交叉する形の交、逆行する人の形の屰など。そしてそれぞれが獨特の意義を有す。漢字の意義の世界において、人の觀念は全く極めて重要である。
屬性
- 人
- U+4EBA
- JIS: 1-31-45
- 當用漢字・常用漢字
- 𠔽
- U+2053D
関聯字
人に從ふ字を人部 - 漢字私註部別一覽に蒐める。