兒 - 漢字私註
説文解字
- 兒
孺子也。从儿、象小兒頭囟未合。汝移切。
- 八・儿部
説文解字注
- 兒
孺子也。《子部》曰、孺、乳子也。乳子、乳下子也。『〔禮記〕襍記』謂之嬰兒。《女部》謂之嫛婗。兒孺雙聲。引伸爲凡幼小之偁。从儿、象小兒頭𦥓未合。謂篆體臼也。𦥓者、頭會匘葢也。小兒初生、匘葢未合、故象其形。汝移切。十六部。
康煕字典
- 部・劃數
- 儿部六劃
- 古文
- 𠒆
『唐韻』汝移切『集韻』『韻會』『正韻』如支切、𠀤爾平聲。『說文』孺子也。象形。小兒頭囟未合。
又『韻會』男曰兒、女曰嬰。
又『韻會』兒、倪也。人之始、如木有端倪。
又『倉頡篇』兒、嬬也。謂嬰兒嬬嬬然、幼弱之形也。
又『韻會』姓也。漢有兒寬。
又『唐韻』五稽切『集韻』『韻會』研奚切『正韻』五黎切、𠀤音霓。姓也。『前漢・藝文志』兒良一篇。《註》師古曰、 六國時人也。『兒寬傳』兒寬、千乘人也。
又『韻會』弱小也。通作倪。『孟子』反其旄倪。
- 部・劃數
- 儿部六劃
『集韻』兒古作𠒆。註詳本畫。
異體字
いはゆる新字体。
音訓・用義
- 音
- (1) ジ(漢) ニ(呉) 〈『廣韻・上平聲・支・兒』汝移切〉[ér]{ji4}
- (2) ゲイ 〈『廣韻・上平聲・齊・倪』五稽切〉[ní]{ngai4}
- 訓
- (1) こ。ちご。
音(2)は姓に用ゐる。また倪と通ず。
解字
白川
象形。幼兒の髮型を加へた形。金文の字形によれば角髮のやうな左右に結んだ髮型を示す字。
『禮記・內則』に、生まれて三月後に、日を擇んで男角(あげまき)、女羈(たてよこ結び)をすることを記してゐる。
藤堂
象形。上部に頭蓋の上部がまだ合はさらない幼兒の頭を描き、下に人體の形を添へたもの。
兒は小さく細かいの意を含み、睨(目を細めて睨む)、倪(小さい子供)、霓(細い虹)などに音符として含まれる。
落合
象形。下部は人の形。
上部については、子供の頭蓋骨が未だ合つてないさま、子供の齒が少ないさま、子供の髮型(角髮)など諸説あるが、甲骨文では地名やその領主の呼稱しか用例がないため、字源は不明。そもそも小兒に象るものかどうかも不明。兒童の意は假借や派生義である可能性もある。
甲骨文では地名やその長を表す。領主は兒伯とも稱される。《合集》3399貞、令兒來。
金文で上部が臼の形になつた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は人と臼に從ふ。臼が象る形には爭議があり、一説に幼兒の頭蓋が合はざるを象るといふ。一説に古代には男女は未成年のときに頭髮を兩に束ね、角のやうな形にしてをり、臼は總角の髮の形を象るといふ(李孝定等參照)。
兒の本義は小孩。後に北方方言で名詞、形容詞の後に用ゐ、兒化の標記となし、改變詞性(動詞の唱を名詞の唱兒に變へるなど)を具有し、微小などの作用を表す。兒化作用を表す兒字は北方方言では通常自ら音節とならず、必ず他の音節の後に附著する。南方方言では、粵語では仔を、閩南話では囝を用ゐるなど、兒化作用を表すのに通常兒字を用ゐない。
卜辭での用義は次のとほり。
- 人名に用ゐる。
- 《合集》3399(上揭)
- 《合集》3400
呼兒
の「呼」は命令を表す。
- 方國名。
- 《合集》3397
兒(白)伯
の「白伯」は方國の伯長を表す。 - 《合集》7893
兒人
は兒國人のこと。兒國は古の郳國と疑はれ、今の山東省に在る。
- 《合集》3397
金文での用義は次のとほり。
- 詞綴(接辭)となし、人名の下に用ゐ、多く徐器に見え、方言の用法。沇兒鐘の「沇兒」は、父に相對する自稱。また庚兒鼎に
䣄王之子庚兒
のやうに言ふ(李學勤、金國泰など參照)。 - 族氏名に用ゐる。兒鼎
兒
。 - 人名となす。中甗
史兒
。
秦簡では本義に用ゐる。《睡虎地秦簡・秦律十八種》簡50嬰兒之毋(無)母者
。
漢帛書でも本義に用ゐる。《馬王堆・雜療方》第42行使嬰兒良心智
。
古書での用義は次のとほり。
- 通じて齯となし、老人の齒が拔け落ちた後更生した細い齒を表す。『詩・魯頌・閟官』
黃髮兒齒
陸德明釋文兒、齒落更生細者也、字書作齯
。 - 倪と通じ、弱小を表す。『古今韻會舉要・齊韻』
兒、弱小也、通作倪。
屬性
- 兒
- U+5152
- JIS: 1-49-27
- 𠒆
- U+20486
- 児
- U+5150
- JIS: 1-27-89
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
兒に從ふ字
漢字私註部別一覽・人部・兒枝に蒐める。
其の他
- 儿
- 儿を兒の簡体字に用ゐる。