霸 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
月始生魄然也。霸魄㬪韵。承大月二日。承小月三日。『〔禮記〕鄉飲酒義』曰、月者三日則成魄。《正義》云、前月大則月二日生魄、前月小則三日始生魄。馬注『康誥』云、魄、朏也。謂月三日始生兆朏。名曰魄。『白虎通』曰、月三日成魄、八日成光。按已上皆謂月初生明爲霸。而『〔漢書〕律歷志』曰、死霸、朔也。生霸、望也。孟康曰、月二日以往明生魄死。故言死魄。魄、月質也。三統說是、則前說非矣。
从月䨣聲。普伯切。『書』音義引『說文』匹革反。古音在五部。漢志所引『武成』『顧命』皆作霸。後代魄行而霸廢矣。俗用爲王霸字、實伯之假借字也。
『周書』曰、哉生霸。『康誥』『顧命』文。
古文霸。
康煕字典
- 部・劃數
- 雨部十三劃
- 古文
- 𣍸
『唐韻』『廣韻』『正韻』普伯切『集韻』『類篇』『韻會』匹陌切、𠀤音拍。『說文』月始生霸然也。承大月二日、承小月三日。从月䨣聲。『增韻』月體黑者謂之霸。『玉篇』今作魄。『書・武成・旁死魄釋文』魄、普白反。『說文』作霸、匹革反。『前漢・律歷志』四月已丑朔死霸。死霸、朔也。生霸、望也。是月甲辰望、乙巳旁之、故武成篇曰、惟四月旣旁生霸。《師古曰》霸、古與魄同。『韻會補』歐陽曰、俗从西作覇、非。
『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤必駕切、音灞。『玉篇』霸王也。『孟子』以力假人者霸。『禮・祭法』共工氏之霸九州也。《註》共工氏無錄而王、謂之霸。『左傳・成二年』五伯之霸也。《註》夏伯昆吾、商伯大彭、豕韋、周伯齊桓、晉文。或曰齊桓、晉文、宋襄、秦𥡆、楚莊。《疏》伯者、長也。言爲諸侯之長也。鄭康成云、霸、把也、言把持王者之政敎、故其字或作伯、或作霸也。『史記・項羽紀』項羽自立爲西楚霸王。○按毛氏曰、五伯之伯讀曰霸。伯者、取牧伯長諸侯之義、後人恐與侯伯字相溷、故借用霸字以別之。又周伯琦曰、今俗以爲王霸字、而月霸乃用𩲸字、非本義。王霸當借用伯字、月魄當用霸字、其義始正。
又『集韻』一曰月始生也。
又州名。『韻會』秦上谷郡地、唐置霸州、五代周攺莫州。
又霸陵、漢縣名、屬京兆尹、故芷陽、文帝更名、見『前漢・地理志』。
又水名。『前漢・地理志註』霸水、出藍田谷、北入渭。師古曰、兹水秦𥡆公更名、以章霸功視子孫。『史記・項羽紀』沛公軍霸上。
又姓。『韻會』益州耆壽傳有霸栩。
又叶搏故切、音布。『劉歆・列女贊』非刺虞丘、蔽賢之路。楚莊用焉、功業遂霸。
又叶補過切、音播。『韋孟・諷諫詩』興國救顚、孰違悔過。追思黃髮、秦繆以霸。
- 部・劃數
- 月部・八劃
『說文』古文霸字。註詳雨部十三畫。
- 部・劃數
- 襾部八劃
『唐韻』俗霸字。
- 部・劃數
- 襾部十三劃
『廣韻』俗霸字。
- 部・劃數
- 備考・革部
『龍龕』步罵切。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 去聲・禡・霸
- 反切
- 必駕切〔音1〕
『國語』云、霸、把也。把持諸侯之權。
又姓。益部耆舊傳有霸相。
必駕切。七。
- 卷・韻・小韻
- 去聲・禡・霸
- 反切
- 必駕切
俗。
集韻
- 卷・韻・小韻
- 去聲下・禡第四十・霸
- 反切
- 必駕切〔音1〕
必駕切。
把也。
一曰月始生。
古作𣍸。
文十三。
- 卷・韻・小韻
- 入聲下・陌第二十・𢫦
- 反切
- 匹陌切〔音2〕
月始生。
古作𣍸屰。
音訓義
- 音
- ハ(漢) ヘ(呉)⦅一⦆
- ハク(漢) ヒャク(呉)⦅二⦆
- 訓
- はたがしら⦅一⦆
- 官話
- bà⦅一⦆
- pò⦅二⦆
- 粤語
- baa3⦅一⦆
- paak3⦅二⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・禡・霸』必駕切〔廣韻1〕
- 『集韻・去聲下・禡第四十・霸』必駕切〔集韻1〕
- 『五音集韻・去聲卷第十一・禡第十七・幫二・霸』必駕切
- 聲母
- 幫(唇音・全清)
- 等呼
- 二
- 官話
- bà
- 粤語
- baa3
- 日本語音
- ハ(漢)
- ヘ(呉)
- 訓
- はたがしら
- 義
- 諸侯の長。
- 王道に對する覇道。王者に對する覇者。德によらず力で天下を制すること。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・入聲下・陌第二十・𢫦』匹陌切〔集韻2〕
- 『五音集韻・入聲卷第十五・陌第三・滂二・𢶉』普革切
- 聲母
- 滂(唇音・次清)
- 等呼
- 二
- 官話
- pò
- 粤語
- paak3
- 日本語音
- ハク(漢)
- ヒャク(呉)
- 義
- 生霸、死霸など、月相をいふ語。魄に同じ。
解字
白川
霸は雨と革と月の會意。初文は䨣に作り、雨と革の會意。獸屍が雨に打たれ、色澤を失つて白く暴されてゐる形で、生色を失つた白い色をいふ。月光の白さがそれに似てゐるので、月を加へて霸となつた。
『説文解字』に月始めて生じて魄然たるなり。大月を承くるときは二日、小月を承くるときは三日なり。月に從ひ、䨣聲。
とする。金文に「旣生霸」「旣死霸」のやうに月相をいふ語があり、一月四週を初吉、旣生霸、旣望、旣死霸に分かつ。『説文解字』のいふ二、三日の頃は初吉に當たり、劉歆の『三統曆』に死霸を朔日とする解釋に近いが、朔望の間に生霸、死霸を置く王國維の説は、金文の曆朔日辰の計算の上にも妥當なもので、その解を採るべきであらう。
また伯と通用し、霸者の意に用ゐる。白は頭顱の白骨化したもので、髑髏の象。雄傑の人の髑髏を保存し崇拜したので、その人を伯といふ。霸者の義は伯の假借義。
覇はもと霸の俗字。
藤堂
雨(空の現象)と革(ぴんと張つた全形)と月の會意。殘月や新月のときのほんのり白い月の全形を示したもの。
新月の前後、ほんのり白く見える月の枠取りをいふ。新月の前を死霸、新月の後を生霸といふ。
落合
甲骨文は革と月の會意で䩗につくる。金文で更に意符として雨が追加された。
甲骨文では地名に用ゐる。《屯南》873于…田霸、伐方、禽[屮戈]、不雉衆。
漂白された革から白い月を意味するといふ説もあるが、(後代には)三日月の意味で用ゐられてをり、月は月齡に關はらず白色であるから整合性に乏しい。おそらく三日月を月の革と見たものであらう。
東周代には霸者の意に用ゐられたが、古くは諸侯の長を意味する伯と同音であつたと推定されてをり、假借の用法。
漢字多功能字庫
甲骨文は革と月に從ひ、恐らく月光の變化の意(季旭昇、陳秉新)。(補註: 隸定形は䩗。) 金文雨を加へて聲符となす。(補註: 意符の誤り? 雨と霸では聲が合はず、後の文との整合も缺く。) 霸と白は音近く、一説に霸は白色の月光を表すといふ(金國泰、張世超)。
金文はあるいは月に從はず帛聲に從ふ。師𡘇父鼎を參照のこと。吳王光鑒の霸字は直接に白と書き、二番目の説を支持する。阮元『疇人傳・戴震』朔、望、朏、霸、紀於月者也。
甲骨文では疑ふらくは地名に用ゐる。
金文では本義に用ゐ、白い月色を表し、月相を描述し、時を記するに用ゐる。
- 令簋
隹(唯)九月既死霸丁丑
。 - 師𡘇父鼎
隹(唯)六月既生霸庚寅
。
「既生霸」は月光が段々と盈つること、「既死霸」は月光が段々と虧けること。具體的な時間については諸説紛々としてゐて定論がない。
屬性
- 霸
- U+9738
- JIS: 1-59-17
- 𣍸
- U+23378
- 𧟳
- U+277F3
- 覇
- U+8987
- JIS: 1-39-38
- 常用漢字
- 䩗
- U+4A57
- 𧟶
- U+277F6