月 - 漢字私註
説文解字
闕也。大陰之精。象形。凡月之屬皆从月。魚厥切。
- 七・月部
説文解字注
闕也。大陰之精。月闕㬪韵。『釋名』曰、月、缺也。滿則缺也。象形。象不滿之形。魚厥切。十五部。凡月之屬皆从月。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤魚厥切、音軏。『說文』闕也。太隂之精。『釋名』月、缺也、滿則缺也。『易・繫辭』隂陽之義配日月。『禮・祭義』月生於西。『公羊傳・莊二十五年註』月者、土地之精。『史記・天官書註』月者、隂精之宗。『淮南子・天文訓』水氣之精者爲月。
又『書・堯典』以閏月定四時成歲。《傳》一歲十二月、月三十日、三歲則置閏焉。又『洪範』二曰月。《傳》所以紀一月。《疏》從朔至晦、大月三十日、小月二十九日。『禮・禮運』月以爲量。《註》天之運行、每三十日爲一月。
又姓。金月彥明首建孔子廟、明洪武中有月輝、月文憲。
又外國名。『前漢・霍去病傳』遂臻小月氏。又『韻補』叶危睡切。『曹植・七啓』世有聖宰、翼帝霸世。同量乾坤、等曜日月。
又叶魚橘切。『黃庭經』洞房靈象斗日月、父曰泥丸母雌一、三光煥照入子室。
『類篇』唐武后作囝。
音訓
- 音
- グヱツ(漢) 〈『廣韻・入聲・月・月』魚厥切〉[yuè]{jyut6}
- グヮツ(慣)
- 訓
- つき
解字
白川
象形。月の形に象る。
『説文解字』に闕くるなり
といふ。『釋名・釋天』に日、實也、光明盛實也。
、月、缺也、滿則缺也。
とあり、當時行はれた音義説。
卜文の字形は時期によつて異なり、月と夕とで互易することがあるが、要するに三日月の形。
藤堂
象形。三日月を描いたもので、丸く抉つたやうに、中が虧けてゆく月。
落合
象形。虧けた月に象る。内部の小點は、月の模樣とも、中空ではないことを示す記號とも言はれる。
點のない異體が夕の字形の元となつてゐる。
甲骨文には點の有無による嚴密な使ひ分けはなく、點のある字形を夕の意に用ゐることが多い時期もあつた。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 月。原義での用法。《合集》33694
癸酉貞、日月有食、惟諾。
- 夜間。夕に當たる。《殷墟花園莊東地甲骨》
丙寅夕卜、子有言、在宗、惟泳。
- 今夕は當日の夜の意。
- 之夕は主に驗辭で使用され、當該の夜間を指す。
- 終夕は一晩中の意。(補註: 終夜に當たる。)
- 月次を數へる助數詞。殷代には閏月が年末に置かれたため、甲骨文には十三月の月次も見られる。《甲骨綴合集》302
庚辰卜𣪛貞、生七月、王入于商。
- 茲月は今月の意。
- 生月は來月の意。
- 祭祀名。他の祭祀と組み合はせた彡夕、夕福などの用例も見られる。字義から考へて夜間の祭祀であらう。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》707
甲子卜貞、王賓武祖乙彡夕、亡尤。
- 月有食
- 月蝕。あるいは、日有食と同時に現はれる場合もあるため、黃砂等で月が隱れることも含まれると考へられる。
- 月有戠
- 戠が食に通じて月蝕の意とする説と、色に通じて月の異常な色とする説がある。
- 夕垔
- 夜間。あるいは垔は闇の意で、月が出てゐない闇夜の意味かもしれない。殷代には日沒が日附の變更點とされてをり、夜間は「今夕」だが翌日の日附になるため、「甲子夕垔乙丑」のやうに用ゐられることが多い。《英藏》886
三日乙酉夕垔丙戌、允有來入齒。十三月。
- 正月
- 一番目の月。
- 木月
- 神名。詳細不明。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、半月の形を象る。本義は月。月の盈ち虧けの周期に基づき、後に月字で曆法の年月の月を表す。
甲骨文、金文での用義は次のとほり。
- 月を表す。《合集》11483正
之夕、月㞢(有)食。
「月有食」は月蝕のこと。 - 曆の單位(月份)。
- 《合集》5658正
鼎(貞)、今十一月帝不其令雨。
- 曶鼎
隹(唯)王元年六月。
- 《合集》5658正
月と夕は本來同じ字形で表され、月の形の中に點があるかないかで區別されなかつた。後に、點がある方を月、ない方を夕として分化した、といふ。
屬性
- 月
- U+6708
- JIS: 1-23-78
- 當用漢字・常用漢字
- 月󠄁
- U+6708 U+E0101
- CID+13746
- 月󠄃
- U+6708 U+E0103
- MJ013519
關聯字
月に從ふ字を漢字私註部別一覽・月部に蒐める。