歹 - 漢字私註
説文解字
𠛱骨之殘也。从半冎。凡歺之屬皆从歺。讀若櫱岸之櫱。
- 註に
徐鍇曰、冎、剔肉置骨也、歺、殘骨也、故从半冎。臣鉉等曰、義不應有中一、秦刻石文有之。
といふ。 - 四・歺部
古文歺。
説文解字注
𠛱骨之殘也。《刀部》曰、𠛱、分解也。殘當作㱚。許殘訓賊、㱚訓餘。後人輒同之也。从半冎。冎、剔人肉置其骨也。半冎則骨殘矣。鉉曰、不當有中一、秦刻石文有之。凡歺之屬皆从歺。讀若櫱岸之櫱。櫱岸未聞。櫱當作屵。屵者、岸高也。五割切。櫱音同。葢轉寫者以其音改其字耳。十五部。『五經文字』『九經字㨾』音兢。非。
古文歺。古文殂、古文殪、古文死、古文伊皆從此。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𡰮
- 部・劃數
- 歹部(零劃)
『唐韻』五割切『集韻』牙葛切、𠀤音枿。『說文』𠛱、骨之殘也。从半冎、凡歺之屬皆从歺。讀若櫱岸之櫱。《徐鍇曰》冎剔肉置骨也。歺、殘骨也。故从半冎。《徐鉉曰》義不應有中一。秦刻石文有之。
又『集韻』才達切、音𡾃。朽骨餘。
又居陵切、音兢。義同。
『集韻』作歺。
- 部・劃數
- 歹部(零劃)
同𣦵。
- 部・劃數
- 尸部三劃
『玉篇』古文歹字。註詳部首。
- 部・劃數
- 尸部二劃
音訓
- 音
- (1) ガツ(漢) 〈『廣韻・入聲・曷・嶭』五割切〉[è]{got3/aat3}
- (2) タイ(漢、呉) [dǎi]{daai2}
- 訓
- (1) ほね
- (2) わるい
解字
白川
象形。殘骨の形に象る。
『説文解字』に列骨の殘なり。半冎に從ふ。
といふ。冎は人體上部の殘骨。𣦵はその一部を存する形。死はこれを拜する形で、複葬を意味する字。
タイの音で讀むのは、恐らく別系の語で、『敦煌變文』や『元曲』などに見え、わるいの意。
藤堂
象形。冎は、嵌り込んだ關節骨を描いた象形字。骨は、冎と肉より成る。歺は、その關節骨の下半部を描いたもので、切り取つた骨のこと。
字の構成要素として、屍體や骨を意味する。
タイの音は、駘、呆に當てた用法。
落合
ばらばらになつた死者の骨の象形。肩甲骨の象形である冎が缺けた形。死者の骨を表す。
甲骨文での用義は次のとほり。
- しぬ。死と同樣に用ゐられてをり、略體かも知れない。《合集》22134
甲辰貞、美𬛧不歹。
- 地名またはその長。《合集》19933・後半驗辭
戊申卜王、禦、廾父乙。庚戌、歹廾。八月。
漢字多功能字庫
甲骨文の構形初義に定論はなく、一説に肉を剔去した後の殘骨といふ(『説文解字』)。
甲骨文の死は歺に從ひ、羅振玉は生者が朽ちた骨の前で拜し死者を悼むさまを象るとする。歺に從ふ字は多く死傷、禍殃に關係があり、歺が殘骨である證左とみることができる。しかし甲骨文にすでに骨字があり、殘骨を表す歺字とは甚だ異なり、于省吾、裘錫圭、季旭昇などの學者は殘骨と釋すべきではないとしてゐる。
一説に、歺はスコップの類の土を掘る道具で、𣦼は手に歺を持つて工作する形を象る、といふ(裘錫圭)。何景成は歺に從ふ𣦼は殘害、殘殺の殘であるとする。季旭昇は木杭の一種の地を掘る道具で、下端が裂開してをり、故に裂解(分裂、分解)、殘敗(壞れ衰微する)などの義を派生するとする。于省吾は列の初文と釋し、猛烈を表すとする。
字の考釋に定論がないので、甲骨文の辭例の用法もまた確定できない。甲骨文に三小點と歺に從ふ字があり、于省吾は釋して洌につくり、讀んで烈となす。《合集》6589歺雨
について、于省吾は「歺雨」は「烈雨」で、暴雨を指すとする。
屬性
- 歹
- U+6B79
- JIS: 1-61-38
- 𣦵
- U+239B5
- 歺
- U+6B7A
- JIS: 2-15-93
- 𡰮
- U+21C2E
- 𡰤
- U+21C24
関聯字
歹に從ふ字を漢字私註部別一覽・歹部に蒐める。