隹 - 漢字私註
説文解字
鳥之短尾緫名也。象形。凡隹之屬皆从隹。
- 四・隹部
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『廣韻』職追切『集韻』『韻會』『正韻』朱惟切、𠀤音錐。『說文』鳥之短尾總名也。象形。
又『爾雅・釋鳥』隹其鳺鴀。《註》今䳕鳩。《疏》鵻、一名鳺鴀。【詩】曰、翩翩者騅。【毛傳】鵻、夫不也。【春秋傳】云、祝鳩氏司徒。祝鳩卽鵻。
又『集韻』遵綏切、觜平聲。與崔同。崔崔、高大也。亦作嗺崒𨻵。
又『集韻』祖誄切、音濢。與嶊同。山貌。『莊子・齊物論』山林之畏隹。《郭註》大風之所扇動也。《劉註》山林之偎僻角尖處、風所不到也。
又『集韻』諸鬼切。山貌。『莊子・齊物論畏隹註』李軌讀。
又『集韻』祖猥切、觜上聲。義同。
音訓
- 音
- スイ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・脂・錐』職追切〉
- 訓
- とり
解字
白川
象形。鳥の形に象る。
卜文では、神話的な鳥の表示には鳥をかき、一般には隹を用ゐる。語法としては「隹れ」といふ發語に用ゐ、文獻では唯、惟、維を用ゐる。
また動詞として「あり」、所有格の介詞の「の」、他に竝列の「與」、また「雖も」とも通用することがある。隹は恐らく鳥占に用ゐ、軍の進退なども 鳥占によつて決することがあつたのであらう。祝詞の器の前で鳥占をするのは唯、神の承認することをいふ。その祝禱に蠱蟲の呪詛があるものは雖、保留がついて逆説の意となる。
藤堂
象形。尾の短い鳥を描いたもの。ずんぐりと太いの意を含む。
落合
象形。鳥が止まつた姿に象る。鳥の一般像。
甲骨文では主に發語の助辭として用ゐられ、繁文は惟。他に維、唯も同源の發語の助辭で、唯は既に甲骨文に見える。
甲骨文での用義は次のとほり。
- これ。發語の助辭。《殷墟花園莊東地甲骨》60
惟左馬其在[⿰土刀]。
- これ。前に提示した文章を受けて用ゐられ、關係代名詞の役割をする助辭。《合集補編》3992
貞、疾齒、惟父乙[⿱𫝀它]。
- とり。《英國所藏甲骨集》2542・後半驗辭
王占曰、吉。茲御、獲隹二百五十、象一、雉二。
字の要素としては鳥種や鳥の動作に關係する字などに使はれてゐる。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は鳥の形に象る。本義は鳥。
隹、鳥いづれも甲骨文、金文は鳥の形に象り、もと同字とする學者がゐる(羅振玉、李孝定)。説文解字は、隹を尾の短い鳥の、鳥を尾の長い鳥の總名とする。按ずるに甲骨文や早期金文の鳥字はくちばしが突出してをり、隹字は翼の羽毛が突出してゐる。兩字は、甲骨文、金文の字形、用法が明らかに區別されてゐて、二つは異なる字の筈である。しかし金文で字の要素として通用する情況があり、説文解字で隹に從ふ字の籀文が多く鳥に從つてをり、隹と鳥は字の要素として通用すると見ることができる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 發語詞に借用する。
- 本義に用ゐ、ひろく鳥類を表す。
- 人名、地名などに用ゐる。
商代の晩期に口に從ふ唯が出現し、語氣詞の專用字とされた。
金文での用義は次のとほり。本義は失はれた。
- 語氣助詞、介詞などに用ゐられ、古書の惟、唯、維と通用する。麥方鼎
隹十又一月
は十一月において、の意。 - 通讀して雖、誰などとなす。中山王鼎
隹(雖)有死罪、及三世、無不赦。」鼎銘又云「「非信與忠、其隹(誰)能之、其隹(誰)能之。
屬性
- 隹
- U+96B9
- JIS: 1-80-18
関聯字
隹に從ふ字
説文解字・隹部のほか、以下の字など。
隹聲の字
- 琟
- 萑
- 唯
- 趡
- 誰
- 睢
- 鵻
- 脽
- 椎
- 帷
- 倠
- 顀
- 魋
- 嵟
- 㢈
- 碓
- 騅
- 惟
- 淮
- 推
- 婎
- 維
- 蜼
- 錐
- 陮