占 - 漢字私註
説文解字
- 占
視兆問也。从卜从口。
- 三・卜部
康煕字典
- 部・劃數
- 卜部・三劃
『唐韻』職廉切『集韻』『韻會』『正韻』之廉切、𠀤音詹。『說文』視兆問也。从卜口。『徐曰』會意。『易・繫辭』以卜筮者、尚其占。
又『爾雅・釋言』隱占也。《疏》占者、視兆以知吉凶也。必先隱度、故曰隱占也。
又『玉篇』𠋫也。『揚子・方言』視也。『韻會』凡相𠋫謂之占。占亦瞻也。
又『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤章豔切、音𢓕。『廣韻』固也。『韻會』固有也。『增韻』擅據也、著位也。『前漢・宣帝紀』流民自占八萬餘口。『王安石詩』坐占白鷗沙。
又『韻會』隱度其辭、口以援人曰口占。『後漢・𨻰遵傳』遵常召善書吏於前、治私書謝親故、馮几口占書數百封、親疎各有意。
又有也。『韓愈・進學解』占小善者、率以錄。
又『顏延之・陶潛誄』敬述靖節、式遵遺占。《註》遺占、卽遺令也。
音訓
- 音
- (1) セム(漢、呉) 〈『廣韻・下平聲・鹽・詹』職廉切〉
- (2) セム(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・豔・占』章豔切〉
- 訓
- (1) うらなふ。うらなひ。うかがふ。みる。
- (2) しめる(占有)
解字
白川
卜と口の會意。卜は卜兆の形。口は祝詞の器。神に祈つて卜し、神意を問ふことを占といふ。
説文解字に兆を視て問ふなり
とあり、會意とする。
その卜占の辭は、のち神託に相應しい神聖な形式、韻文で示されることが多く、卜筮の書である『易』の爻辭は、多く有韻である。
藤堂
卜と口の會意。口は、ある物やある場所を示す記號。占は、卜(うらなひ)によつて、一つの物や場所を選び決めること。
落合
會意。甲骨文は、肩甲骨の象形である冎と卜兆の象形の卜及び祭祀を象徵する口に從ふ。甲骨占卜を表現した會意字。甲骨文に冎を省いた字形も見える。また丿に近い形に從ふ異體字もあるが、その意義は不明。
甲骨文では、うらなふ、うらなひみる、卜兆を見て將來を判斷する意に用ゐる。
- 《合集補編》4923
王占曰、有祟、其有來㛸。
- 《殷墟花園莊東地甲骨》59
壬申卜、不允水。子占曰、不其水。
漢字多功能字庫
甲骨文は卜と口に從ひ、あるいは𡆥と口に從ひ、卜兆を見て吉凶を判斷するの意。
甲骨文は先に卜と口に從ふ形があり、後に𡆥と口に從ふ形があり、口形は𡆥の内に書かれたり、下に書かれたり、簡化されて一撇(左拂ひ)になつたりする(王國維、裘錫圭)。戰國文字は甲骨文を承け、卜と口に從ひ、あるいは口の中に點を加へて飾筆となす。
甲骨文での用法は次のとほり。
- 卜と口に從ふ字は卜兆を觀察して吉凶を豫測することを表す。《合集》21068
己酉卜、王占。
- 𡆥と口に從ふ字も用法は同じ。字は多く占辭の前に用ゐる。
- 《合集》116反
王占曰、吉。
- 《合集》152反
王占曰、亡(無)𡆥(憂)。
- 《合集》116反
戰國文字での用義は次のとほり。
- 卜問を指す。《包山楚簡》198
占之當吉、期中又(有)憙(喜)。
- うかがふことを指し、文獻にまた覘に作る。《上博竹書二・從政乙》簡2
毋占(覘)民斂、則同。
は、人民の財貨を窺ふべからず、人民はすぐにも集まり始める、の意。『說文』覘、窺也。从見、占聲。
『春秋傳』公使覘之、信。
字は亦た佔につくる。『集韻・鹽韻』覘、闚也。或作佔。
秦陶では占を姓氏に用ゐ、出自は嬀姓。『左傳・昭公十九年』に「孫書」の名があり、杜預注に孫書、陳無宇之子子占也。
とある。孫書、字は子占、後人はその字を以て姓となす。(補註: zhwpによれば、孫書は衞武公の子の惠孫の子孫で、姬姓。別に田書がをり、田桓子(陳無宇)の子で、字は子占、嬀姓。)
傳世文獻での用義は次のとほり。
- 卜兆を根據に吉凶を占斷することを指す。『周禮・春官・占人』
凡卜簭、君占體、大夫占色、史占墨、卜人占坼。
鄭玄注尊者視兆象而已、卑者以次詳其餘也。
凡そ卜筮において、君主は卜兆の兆體を占ひ見る、大夫は卜兆の氣色を占ひ見る、史官は裂痕の大畫を占ひ見る、卜人は裂痕の小枝を占ひ見る、の意。 - 窺察を指す。
- 『方言』卷十
占、視也。凡相竊視、南楚或謂之占。
- 『廣雅・釋言』
占、瞻也。
- 『後漢書・段熲傳』
上占天心、不為災傷。下察人事、眾和師克。
は、上を向き天意を伺へば、天は災害を齎さず、下を向き人の世の政治を觀察すれば、衆は和して師は克つ、の意。
- 『方言』卷十
屬性
- 占
- U+5360
- JIS: 1-32-74
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
占に從ふ字を漢字私註部別一覽・卜部・占枝に蒐める。