注 - 漢字私註
説文解字
灌也。从水主聲。
- 十一・水部
康煕字典
- 部・劃數
- 水部五劃
『唐韻』之戍切『集韻』『韻會』朱戍切、𠀤音註。『說文』灌也。『增韻』水流射也。『詩・大雅』豐水東注。
又引也。『前漢・溝洫志』注塡淤之水、漑舄鹵之地。
又意所嚮曰注。『管子・君臣下篇』君人者上注。《註》上謂注意於上天。
又記也。『通俗文』記物曰注、因支分派別之意。
又凡以傳釋經曰注、通作註。
又聚也。『周禮・天官』獸人及弊田、令禽注于虞中。
又擊也。『莊子・達生篇』以黃金注者㱪。
又屬也。『爾雅・釋天』注旄首曰旌。《註》言以旄牛尾屬之竿首。
又屬矢於弦也。『左傳・襄二十三年』樂射之不中、又注則乗槐本而覆。
又附藥亦爲注。『周禮・天官〔瘍醫〕』瘍醫掌祝藥劀殺之齊。《註》祝當爲注。注謂附著藥。
又華不注、山名。『括地志』在濟南。又句注、亦山名、在代州鴈門縣西北。
又仄注、冠名。『前漢・五行志註』言形側立而下注也。
又日注、茶名。『歐陽修・歸田錄』兩浙之品、日注爲第一。
又『集韻』株遇切、音駐。與註同。
又『集韻』陟救切『正韻』職救切、𠀤音晝。蟲喙也。與咮噣通。『周禮・冬官考工記』以注鳴者。
又注張、星名。別見木部柳字註。
音訓
- 音
- シュ(漢) 〈『廣韻・去聲・遇・注』之戍切〉
- チュウ(慣)
- 訓
- そそぐ。つぐ。あつめる。つける。しるす(注記)。ときあかす(注解)。
解字
白川
説文解字に灌ぐなり
とし、主聲とするが、鐙(主の形、火燈)に油を注ぐ意の字であらう。
『周禮・天官・瘍醫』(上揭)に藥を祝ぐ
とあり、祝は注の同音假借。また『荀子・禮論』紸纊聽息之時
とは、いはゆる屬纊、死に臨んで氣息の有無を纊で確かめること。
注釋とは釋を屬けること。のち註字を用ゐる。
藤堂
水と音符主(じつと立つ)の會意兼形聲。水が柱のやうに立つてそそぐこと。
落合
甲骨文に水と主のやうな形に從ふ亡失字がある。主に地名としての用法があり、その地を流れる河川であらう。
篆文でそそぐ意として同形の形聲字が作られた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、手を用ゐ一つの器に入つてゐる液體を別の器に注がうとするさまを象る(《合集》28012など)。その簡體に、手の形を省くもの(《合集》5458など)、注がれる側の器(《合集》28030)を省くものがある(裘錫圭)。本義は灌注。
【補註】上述の甲骨文を、落合は益として擧げる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 派生義を表し、讀んで駐となし、液體をある器に注ぎ入れることを、人を派遣してある地に到ることの喩へとする。《合集》28012
弜(勿)注襄人
は、人を襄の地に派遣することなかれ、あるいは襄人を派遣することなかれ、の意。 - 讀んで𣀈となす。説文解字は
去陰之刑
と訓ず。《合集》11241癸丑〔卜〕、𡧊(賓)鼎(貞)、注(𣀈)豭三十。九月。
豭は牡豚のことで、「注(劅)豭三十」は牡豚三十頭を去勢すること(裘錫圭)。
金文では本義に用ゐる。史喪尊史喪乍(作)丁公寶彝、孫子其永注。
尊は酒器で、「孫子其永注」は子孫が永遠にこの尊に酒を注ぐの意(裘錫圭)。
傳世文獻では灌入、注入を表す。
- 『莊子・齊物論』
注焉而不滿、酌焉而不竭、而不知其所由來、此之謂葆光。
- 『荀子・宥坐』
弟子挹水而注之、中而正、滿而覆、虛而欹。
また傾瀉(傾けて注ぐこと)を表す。
- 『東觀漢記・世祖光武皇帝』
會天大雷風、暴雨下如注、水潦成川、滍水盛溢。
- 唐・段成式『酉陽雜俎續集・支諾皋中』
其物匣刃而走、血流如注。
また聚集、集中を表す。
- 『周禮・天官・獸人』
時田、則守罟。及弊田、令禽注于虞中。
賈公彥疏注猶聚也。
- 『三國志・魏書・陳思王植傳』
夫能使天下傾耳注目者、當權者是矣、故謀能移主、威能懾下。
また記載、登記を表す。
- 『後漢書・皇后紀・和熹鄧皇后』
元初五年、平望侯劉毅以太后多德政、欲令早有注記。
- 『三國志・蜀書・劉禪傳』
又國不置史、注記無官、是以行事多遺、災異靡書。
また注解、注釋を表し、平易な語を用ゐて經典の難解な言葉を解釋することを指す。註に同じ。
- 『世說新語・文學』
鄭玄欲注『春秋傳』、尚未成時、行與服子慎遇宿客舍。
- 『文心雕龍・論說』
故議者宜言。說者說語。傳者轉師。注者主解。
また賭博のときに投ずる財物を表す。
- 『元史・寇準傳』
博者輸錢欲盡、乃罄所有出之、謂之孤注 。
成語「孤注一擲」は賭博する人の心理狀態を比喩となすもので、危急の時に全力を傾け盡くし、最後に一度冒險をして、僥倖成功を望むの意。 - 清・蒲松齡『聊齋志異・薛慰娘』
一日、博局爭注、毆殺人命、亡歸平陽。
また量詞となす。
- 明・馮夢龍『醒世恒言・張廷秀逃生救父』
舊時原是個窮漢、近日得了一注不明不白的錢財、買起一所大房、開張布店。
- 清・曹雪芹『紅樓夢』
頭一年省親連蓋花園子、你算算那一注共花了多少、就知道了。
屬性
- 注
- U+6CE8
- JIS: 1-35-77
- 當用漢字・常用漢字