主 - 漢字私註

説文解字

主
鐙中火主也。从[⿱凵土]、象形。从、丶亦聲。
丶部

康煕字典

部・劃數
丶部四劃
古文

『唐韻』之庾切『集韻』『韻會』『正韻』腫庾切、𠀤音麈。君也。『董仲舒・賢良策』行高而恩厚、知明而意美。愛民而好士、可謂誼主矣。『呂氏春秋』朝臣多賢、左右多忠、如此者、國日安、主日尊、天下日服、此所謂吉主也。

又大夫之臣、稱其大夫曰主。『左傳・昭二十八年』成鱄對魏舒曰、主之舉也、近文德矣。

又天子女曰公主。周制、天子嫁女、諸侯不自主婚、使諸侯同姓者主之、故謂之公主。

又賔之對也。『禮・檀弓』賔爲賔焉、主爲主焉。又『左傳・僖三十年』燭之武見秦伯曰:若舍鄭以爲東道主。《註》鄭在秦之東也。

又宰也、守也、宗也。『易・繫辭』樞機之發、榮辱之主也。

又神主、宗廟立以棲神、用栗木爲之。『春秋傳』虞主用桑、練主用栗。又匰主。『周禮・春官』司巫、掌羣巫之政令、祭祀則供匰主。《註》主神所依也。匰、盛主之器。

又『禮・曲禮』居不主奧。《疏》主、猶坐也。

又『晉語』陽子剛而主能。《註》上也。

又姓。隋主胄、明主問禮。又主父、複姓。

又『正韻』陟慮切。同。『荀子・宥坐篇』主量必平似法。《註》主、同注。

音訓

シュ(漢) ス(呉) 〈『廣韻・上聲・麌・主』之𢈔切〉
きみ(君主)。ぬし。あるじ。つかさどる。まもる。つかさ。をさ。おもに。

解字

漢字多功能字庫と落合が甲骨文として擧げる字は一致しない。漢字多功能字庫は主とを同源として、示と同じ字を擧げる。落合は別の字を擧げる。

白川

象形。火主の形に象る。金文はに作り、のちあぶらざらの形を添へて主となつた。

説文解字に鐙中の火主なり。王に従ひ、象形。丶に從ふ。丶は亦聲なり。とするが、その全體を象形と見て良い。

中山王墓出土の十五連盞燭臺は、神仙や靈獸を盞盤の間に配し、聖火の觀念を示してゐる。火は神聖なものとされ、廟中に火を操るものは叜で、長老を意味する叟の初文。火は主人、家長、長老の扱ふもので、その人をも主といふ。炷は主の繁文。

建物においては、これを主持するものをといふ。

藤堂

象形。は、じつと燃え立つ燈火を描いた象形字。主は、燈火が燭臺の上でじつと燃えるさまを描いたもので、じつと一所に止まるの意を含む。炷の原字。

落合

會意。甲骨文はの上にまたはその略體を加へた字。

説文解字は燭臺の形とするが、甲骨文の下部は木であるから、字源は松明のやうなものであらう。但し古文以降に下部が王のやうな形に變化してをり、後代の字形は燭臺を表してゐるかも知れない。

松明の象を主人の意に用ゐる理由は不詳。推測するに、古代においては王や貴族の宮殿では夜間に松明(主)を絶やさず燈してをり、それを主人の象徵としたものか?

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 地名。《殷墟花園莊東地甲骨》36不其狩、入商。在主。
  2. 祭祀名。《合集補編》5697…酉卜、今日、主示。

漢字多功能字庫

甲骨文は神主牌位の形に象り、主とは一字の分化したもの(唐蘭、陳夢家)。甲骨文では神主(位牌)を表す。

早期金文と甲骨文の形は同じ。人名、氏族徽號に用ゐる。晩期金文に字があり、上にを加へる。これは主の繁文で、君主を表す。

戰國竹簡では主を多く宔に作る。《郭店楚簡・老子甲本》以(道)差(佐)人宔者、不谷(欲)以兵強於天下を、今本『老子』は「以道佐人主」に作る。

主と示は一字の分化であり、故に宔と宗もまた一字の分化。宔も宗も神主を廟内に置く形に象る。

説文解字宔字條に宗廟宔祏。从宀主聲。とあり、段注に經典作主、小篆作宔。主者古文也。祏猶主也。『左傳』『使祝史徙主祏於周廟』是也。といふ。

屬性

U+4E3B
JIS: 1-28-71
當用漢字・常用漢字

関聯字

主聲の字