爲 - 漢字私註
説文解字
母猴也。其爲禽好爪。爪、母猴象也。下腹爲母猴形。王育曰、爪、象形也。薳支切。
- 三・爪部
古文爲象兩母猴相對形。
説文解字注
母猴也。『左傳』魯昭公子公爲亦偁公叔務人。『〔禮記〕檀弓』作公叔禺人。《甶部》曰、禺、母猴屬也。然則名爲字禺、所謂名字相應也。假借爲作爲之字。凡有所變化曰爲。其爲禽好爪。《禸部》曰、禽者、走獸揔名。好爪故其字從爪也。此下各本有「爪母猴象也」五字、衍文。下腹爲母猴形。腹當作復。上旣從爪矣。其下又全象母猴頭目身足之形也。王育曰、爪、象形也。此博異說。爪衍文。王說全字象母猴形也。薳支切。古音在十七部。
古文爲。象㒳母猴相對形。『左傳〔隱元年〕』仲子生有文在其手、曰爲魯夫人。手文必非若小篆爲魯。葢作𢏽𣥐。容或相似也。
康煕字典
- 部・劃數
- 爪部・八劃
- 古文
- 𦥮
- 𤓸
『唐韻』薳支切『集韻』于嬀切、𠀤音潙。『說文』母猴也。其爲禽好爪。爪母猴象也。下腹爲母猴形。王育曰、爪象形也。
又『爾雅・釋言』作、造、爲也。『書・益稷』予欲宣力四方汝爲。『洪範』有猷有爲有守。
又治也。『晉語』疾不可爲也。《註》爲、治也。
又使也。『魯語』其爲後世昭前之令聞也。《註》爲、猶使也。
又語詞。『前漢・武帝紀』何但亡匿幕北寒苦之地爲。
又姓。『廣韻』風俗通云、漢有南郡太守爲昆。『韻會』魯昭公子公爲之後。
又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤于僞切、音䧦。『廣韻』助也。『增韻』所以也、緣也、被也、護也、與也。『書・咸有一德』臣爲上爲德、爲下爲民。『釋文』爲上爲下之爲、于僞反。徐云、四爲字皆于僞反。又『多士』惟我下民秉爲。『詩・大雅』福祿來爲。《箋》爲、猶助也。『釋文』于僞反、協句如字。
又叶吾何切、音莪。『詩・王風』有兔爰爰、雉離于羅。我生之初、尙無爲。我生之後、逢此百罹、尙寐無吪。
- 部・劃數
- 爪部・四劃
『字彙補』古文爲字。註詳八畫。
- 部・劃數
- 臼部六劃
『字彙補』古文爲字。註詳爪部八畫。
廣韻
- 四聲・韻・小韻
- 上平聲・支・爲
- 反切
- 薳支切
『爾雅』云、作造爲也。
『說文』曰、母猴也。
又姓。『風俗通』云、漢有南郡太守爲昆。
薳支切。又王僞切。六。
- 四聲・韻・小韻
- 上平聲・支・爲
- 反切
- 薳支切
俗。
- 四聲・韻・小韻
- 去聲・寘・爲
- 反切
- 于僞切
助也。
于僞切。又允危切。一。
異體字
簡体字。
音訓
- 音
- (1) ヰ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・支・爲』薳支切〉[wéi]{wai4}
- (2) ヰ(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・寘・爲』于僞切〉[wèi]{wai6}
- 訓
- (1) なす。つくる。をさめる。なる。まなぶ。まねする。たり。
- (2) たすける。ために。ためにする。
解字
白川
象と手の會意。
『説文解字』に母猴なり
とし、猴の象形とするが、卜文の字形に明らかなやうに、手で象を使役する形。象の力によつて、土木などの工事をなす意。
藤堂
會意。甲骨文は手と象に從ひ、象に手を加へて手懷け、調教するさま。人手を加へてうまく仕上げるの意。
轉じて、作爲を加へる→するの意となる。
また原形を變へて何かになるとの意を生じた。
落合
會意。象と手の形の又に從ひ、象を捕らへるさま。原義は恐らく「大きなことを成し遂げる」の意で、轉じて「なす」の意に用ゐられた。
甲骨文での用義は次のとほり。
- なす。おこなふこと。賓爲または爲賓とも稱されてをり、祭祀に參加する意であらう。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》303
丙申卜㱿貞、叀賓爲。
又が上部にある字形が後代に繼承され、金文で爪の形となり、また隸書で象の部分が變形した。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、又と象に從ひ、手で象を牽くさまに象る。古人は象を使役し、仕事に從事した。本義は事をなすこと。轉じて「有所作為」の為となす。古書に、商朝の時、人々は象を馴らして勞役の助けとしたと記載されてゐる。『呂氏春秋・古樂』商人服象、為虐于東夷、周公遂以師逐之、至于江南、乃為『三象』、以嘉其德。
為は象を仕事に使役することを表し、故に從事、使用、制作、行爲などの義を有し、後に為字をまた虛詞に用ゐる。
戰國楚文字はあるいは象の身體を省き、爪形と象の頭部と長い鼻を殘す。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 事をなすことを表す。《合集》15189
王為巳(祀)、若。
は、商王は祭祀を行ひ、うまくいくの意。 - 人名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 製作を表す。歸父敦
魯子中(仲)之子歸父為其善(膳)敦
。敦は古代の食器で、黍、稷、稻、粱などを盛るのに用ゐる。善は膳と讀み、飲食を表す。銘文は、魯子仲の子たる歸父が食物を盛る敦を製造すると記す。 - 作為(〜として)を表す。中山王方壺
為人臣而𢓉(反)臣其宔(主)、不祥莫大焉。
は、家臣として、反して以て君主を臣とするは、この上ない不詳である、の意。 - 媯の通假字となし、姓氏に用ゐる。敶子匜を參照のこと。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- なすことを表す。《上博竹書三・彭祖》簡3
敢昏(問)為人
は、身を處する道理を問ふの意。 - 治めることを表す。《上博竹書五・季庚子問於孔子》簡14-15
古之為邦者必以此
の「為邦」は國家を治めること。 - なることを表す。
- 《清華簡二・繫年》簡31
晉獻公之婢(嬖)妾曰驪姬、欲其子奚齊之為君也。
は、晉獻公の愛妾の驪姬が、子の奚齊が國君となることを欲する、の意。 - 《清華簡二・繫年》簡78
取(娶)以為妻。
- 《清華簡二・繫年》簡101
晉與吳會(合)為一、以伐楚。
- 《清華簡二・繫年》簡31
- 作為を表す。《上博竹書六・天子建州甲》簡3
不媺(美)為媺(美)
は、美しくないものを美しいとする、の意。 - 是を表す。《清華簡一・耆夜》簡1-2
縪(畢)公高為客、卲公保睪(奭)為夾(介)、周公弔(叔)旦為宔(主)。
は、畢公高は客であり、召公奭は(客の?)介添へであり、周公叔旦は主であるの意。
『説文解字』は變形した字形に據つて説を立ててをり、字形解釋が正確ではない。
屬性
- 爲
- U+7232
- JIS: 1-64-10
- 人名用漢字
- 𤓸
- U+244F8
- 𦥮
- U+2696E
- 為
- U+70BA
- JIS: 1-16-57
- 當用漢字・常用漢字
- 为
- U+4E3A
關聯字
爲に從ふ字を漢字私註部別一覽・象部・爲枝に蒐める。