夆 - 漢字私註

説文解字

夆
啎也。从𡴀聲。讀若縫。
夂部

説文解字注

夆
啎也。《午部》曰、、逆也。夆訓啎、猶逢迎逆遇遻互相爲訓。『〔爾雅〕釋訓』曰。甹夆、掣曳也。掣曳者、啎逆之意。夆、古亦借爲鏠字。从夂丰聲。讀若縫。敷容切。九部。

康煕字典

部・劃數
夂部四劃

『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤符容切、音逢。『說文』啎也。《徐曰》相逆啎也。

又牽挽。『爾雅・釋訓』甹夆掣曳也。一曰又與通、遇也。又江韻、音厖、厚也。亦姓。

从丰、三畫皆平。

音訓

ホウ(漢) 〈『廣韻・上平聲・鍾・逢』符容切〉[féng]{fung1}
あふ。さからふ。

解字

白川

の會意。丰は木のつ枝。杉鉾の形。そこに神が下降する。山ならば、その神氣に逢ふをといふ。

『説文解字』にさからふなりとあり、俄に逢つて驚く意のやうである。

『史記・天官書』に鬼哭若呼、其人逢俉。(鬼哭すること呼ぶがごとく,其の人逢俉す。)とあり、字はまた夆牾、逢迕に作る。

藤堂

(足)と音符(△型)の會意兼形聲。兩側から△型の峠を登つて頂點で逢ふことを表す。などの原字。

落合

の初文を夆に作る。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、に從ひ聲。𢓱、の初文。夂は眞正面から來る足を表し、本義は對面で逢ふ、面と向かつて遇ふこと。夆の義を取る字は遇ふことと關係がある。逢は路上で相逢ふことを表し、縫は兩側を縫ひ合はせること、また縫ひ合はせた所を表す。

丰はただの聲符ではなく、木を植ゑて分封を劃する疆界に象り、夆は封地を足で履むさまに象るとする學者がある(季旭昇)。孫常敍は、金文の逢字の下に兩手のを加へることを根據として、その字は兩手で根に土を被せて相合はせるさまに象り、故に相逢、遇合の義を有するとする。二説はいづれも夆、逢、封を同源の語とする。

金文では封の通假字となし、封土を表す。九年衛鼎𠟭(則)乃成夆(封)四夆(封)、顏小子具(俱)惠夆(封)。四面に土を盛り畝を作つて境界とし、顏小子は畝を作るのを助けた、の意。

また族氏に用ゐる。見夆弔(叔)盤、夆弔(叔)匜など。山東に逢國、逢山があり、齊に大夫の逢丑父がゐた(『左傳・成公二年』)。疑ふらくはこの夆叔が逢國の後裔で、東國に仕へた者であらう(陳槃)。

また芳の通假字となし、芳香を表す。㺇簋豳(芬)夆(芳)馨香

また豐の通假字となす。㺇簋豐魯の魯は福を表し、豐魯とは厚い福のこと。

漢帛書でも豐の通假字となす。《馬王堆帛書・老子乙本》第190行脩之國、其德乃夆(豐)。(補註: 『老子・第五十四章』に相當)

屬性

U+5906
JIS: 2-5-25
JIS X 0212: 24-64

關聯字

夆に從ふ字を漢字私註部別一覽・止部・夆枝に蒐める。