丰 - 漢字私註
説文解字
艸盛𡴀𡴀也。从生、上下達也。敷容切。
- 六・生部
説文解字注
艸盛丰丰也。引伸爲凡豐盛之偁。『〔詩〕鄭風〔丰〕』子之丰兮。毛曰、丰、豐滿也。鄭曰、面皃丰丰然豐滿。『方言〔一〕』好或謂之妦。妦卽丰字也。从𤯓。上下𨔶也。上盛者根必深。敷容切。九部。
康煕字典
- 部・劃數
- 丨部・三劃
- 古文
- 𫵮
『集韻』符風切、音馮。丰茸、草盛貌。『說文』从生、上下達也。《徐曰》艸之生、上盛者、其下必深根也。毛氏曰、凡邦夆峰豐等字从此。
又容色美好貌。『詩・鄭風』子之丰兮。
- 部・劃數
- 屮部四劃
- 部・劃數
- 艸部四劃
『集韻』同丰。『說文』草盛丰丰也。
又下瞎切、音轄。草名。『揚子・方言』蘇、沅、湘南謂之䒠、从𦵯省。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 上平聲・鍾・峯
- 反切
- 敷容切
丰茸美好。『說文』本作𡴀。草盛𡴀也。從生上下達也。
- 卷・韻・小韻
- 上平聲・鍾・峯
- 反切
- 敷容切
上〔丰〕同。
異體字
『康煕字典』の古文。
音訓義
- 反切
- 『廣韻・上平聲・鍾・峯』敷容切
- 『集韻・平聲一・鍾第三・𡴀』敷容切
- 『五音集韻・上平聲卷第一・鍾第三・敷・三峯』敷容切
- 官話
- fēng
- 粤語
- fung1
- 日本語音
- ホウ(漢)
- フウ(呉)
- 義
- 草の盛んに茂るさま。
- みめよいこと。
- 風と通用する。
解字
白川
象形。草木の盛んに茂るさまに象る。
『説文解字』に艸盛んにして丰丰たるなり。生に從うて、上下達するなり。
といふ。
金文の字形は禾の穗が高く伸びる形につくる。
周初の金文《康侯鼎》に康侯丰、寶𬯚彝を作る
とある「康侯丰」は、『書・康誥』に見える「小子封」にあたる。(補註: 小子封は康叔封のこと。)
奉は苗木や秀つ枝を奉ずる形、豐は禾の穗を豆に盛る形で、豐滿の意がある。
藤堂
象形。草の穗が△型に茂るさまを描いたもの。
落合
會意。甲骨文は土盛り(土)に植物を植ゑた形。封の初文。當時は境界に植物を植ゑたため、領域の意味として封や邦の字義となつた。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 領土の疆界。邊疆。《合集》24156
貞、射封、[屮戈]方。
- くに。地方勢力を指して使用され、この場合の繁文は邦。甲骨文では主に敵對勢力に對して用ゐられ、邦方とも稱される。また數字を附して三邦方のやうに邦數を記すものもある。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》879・後半驗辭
…子卜在𣬕…于漫、往來…王來征二邦方眔𠭯方…。
- 地名。《合補》7257
癸丑卜行貞、今夕亡禍。在封。
- 祭祀名。《合補》6832
癸巳卜子、封羊、用至大牢于掃壬。
繁文の封は植物を植ゑる手の形を加へた會意字で、金文で出現し、篆文で偏旁ともに變形した。
邦も金文で作られた字形で、意符として邑を加へた形聲字、丰亦聲。
別字
甲骨文に既に手の形を加へた字形があるが、用法が異なつてをり、狩獵を意味する𥄲(補註: 网と目に從ふ)とともに用ゐられることが多く、同じく狩獵を意味する。𥄲と組みあはせた合文(⿰𥄲封)もある。
《屯南》2170其𥄲、于東方封、禽。
【補註】落合は上述の字を丰と又に從ふとするが、字は木と土と又に從ふ形。埶字條も參照のこと。
漢語多功能字庫
封の初文。甲骨文、金文は、土の上に樹を植ゑ、林木を以て境界とする形に象る(李孝定、郭沫若)。一説に丰は植物の根莖の肥大する形に象り、植物の茂盛することを表す(高田忠周、何琳儀、黃德寬)。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 方國の封疆を表す。
- 《合集》36528反
四丰方
。 - 《合集》36530
三丰方
。 - 《合補》11284
二丰方
。
- 《合集》36528反
- 族名に用ゐる。《合集》27893
㠯(以)多田伐又(有)封、廼(乃)…
金文では人名に用ゐる。康侯丰鼎康侯丰乍(作)寶[阝尊](尊)。
《馬王堆漢墓帛書・五十二病方》第236行旦取丰卵一潰
を、原整理者は讀みて「丰(蜂)卵」となし、蜜蜂の卵を指すとする。王寧は、王寧は修飾詞で、「丰卵」は大きく豐滿な卵のこととし、これに從ふべし。潰は割ること(參・陳劍)。朝に大きく豐滿な卵を取つて割ることをいふ。
傳世文獻では草木の茂ることを表し、引伸して豐かであることを表す。
- 『詩・鄭風・丰』
子之丰兮、俟我乎巷兮。
毛傳丰、豐滿也。
- 漢・司馬相如〈長門賦〉
羅丰茸之遊樹兮、離樓梧而相撐。
また風に同じく、人の風格、風采を表す。
- 唐・韓凝〈漢齊蓋廟碑〉
神識沈敏、凜肅丰姿。
- 『明史・卓敬傳』
(卓)敬立朝慷慨、美丰姿、善談論、凡天官、輿地、律曆、兵刑諸家無不博究。
丰と丯は別々の字であり、混ぜるべきではない。
屬性
- 丰
- U+4E30
- JIS: 1-14-6
- 𡴇
- U+21D07
- 䒠
- U+44A0
- 𡴀
- U+21D00
- 𫵮
- U+2BD6E
關聯字
丰に從ふ字
漢字私註部別一覽・丰部に蒐める。
其の他
- 豐
- 丰を豐の簡体字に用ゐる。
- 丯
- 別字。