厲 - 漢字私註

説文解字

旱石也。从省聲。
厂部
𧓽
或不省。
別條に揭ぐ。

説文解字注

𠪄
旱石也。旱石者、剛於柔石者也。『〔書〕禹貢』厲砥砮丹。『〔詩〕大雅〔公劉〕』取厲取鍛。引伸之義爲作也。見『釋詁』。又危也。見『大雅・民勞・傳』、虞注『周易』。又烈也。見『〔楚辭〕招䰟』王注。俗以義異、異其形。凡砥厲字作。凡勸勉字作勵。惟嚴厲字作厲。而古引伸假借之法隠矣。凡經傳中有訓爲惡、訓爲病、訓爲鬼者、謂厲卽癘之假借也。訓爲遮列者、謂厲卽迾之假借也。『周禮』之厲禁、是也。有訓爲涉水者、謂厲卽濿之假借。如『詩〔邶風・匏有苦葉〕』深則厲、是也。有訓爲帶之𡍮者、如都人士垂帶而厲。傳謂厲卽烈之假借也。烈、餘也。从厂、𧍣省聲。按『說文』<萬篆文:𥝄>與<蠆篆文:𦹌>篆形絕異。厲从𧍣省聲則字當作𠪄。而𥻳體𧍣作蠆、𠪄作厲。皆从萬、非也。後人以𥻳改篆、則又篆皆从萬矣。漢𥻳存者、作𧔐作𠪿可𦒱也。今篆體及說解皆正。力制切。十五部。
𠪿
或不省。今各本篆从萬下。非是。漢人𥻳多作𠪿不省。

康煕字典

部・劃數
厂部十三劃

『唐韻』『集韻』『韻會』力制切『正韻』力霽切、𠀤音例。『說文』旱石也。从厂、蠆省聲。《徐曰》旱石、麤悍石。『玉篇』磨石也。『詩・大雅』取厲取鍛。

又磨也。『左傳・成十六年』秣馬厲兵。『荀子・性惡篇』鈍金必將待礱厲然後利。

又『說文』嚴也。『論語』聽其言也厲。

又『廣韻』烈也、猛也。『禮・表記』不厲而威。

又『玉篇』危也。『易・乾卦』厲无咎。

又『爾雅・釋詁』厲、作也。《註》【穀梁傳】曰、始厲樂矣。《疏》興作也。『方言』厲、𠨐、爲也。甌越曰𠨐、吳曰厲。

又『玉篇』虐也。『孟子』厲民以自養也。

又『玉篇』上也。『詩・衞風』在彼淇厲。『韻會』岸危處曰厲。

又『詩・衞風』深則厲。《註》以衣涉水、由帶以上曰厲。

又『周禮・秋官・司厲註』犯政爲惡曰厲。

又『爾雅・釋天』月在戌曰厲。

又『韻會』醜惡也。『莊子・天地篇』厲之人夜半生子、恐其似己。

又『史記・嚴安傳』民不夭厲。《註》厲、病也。

又『前漢・儒林傳』以厲賢才焉。《註》師古曰、厲、勸勉之也。

又『息夫躬傳』鷹隼橫厲。《註》師古曰、厲、疾飛也。

又『正韻』厲鬼。『左傳・昭七年』子產曰、鬼有所歸、乃不爲厲。

又『正韻』鞶厲、帶重也。『左傳・桓二年』鞶厲斿纓。

又姓。『廣韻』漢有魏郡太守厲溫。

又『集韻』『正韻』𠀤落蓋切、音賴。『前漢・地理志』厲鄕、故厲國也。《註》師古曰、厲、讀曰賴。

又『史記・范雎傳』漆身爲厲。《註》厲、音賴。言以漆塗身、而生瘡爲病癩。

又『韻會』力孽切『正韻』良薛切、𠀤音列。『韻會』嚴也。一曰囊垂飾。『詩・小雅』心之憂矣、如或結之。今兹之正、胡然厲矣。『左思・蜀都賦』巴姬彈絃、漢女擊節。起西音於促柱、歌江上之𩙂厲。《註》𩙂厲、歌聲淸越也。

異體字

或體。

簡体字。

音訓

(1) レイ(漢) 〈『廣韻・去聲・祭・例』力制切〉[lì]{lai6}
(2) ライ(漢、呉) 〈音賴、去聲泰韻〉[lài]{laai6}
(3) レツ 〈『韻會』力孽切『正韻』良薛切、音列〉
(1) といし。はげしい。はげむ。はげます。あし(厲氣、厲鬼)。

癩と通用するときは音(2)に讀む。

解字

白川

と萬の會意。

『説文解字』に旱石なりとあり、柔石に對して剛石、すなはち砥石の意とするが、その字は。またの省聲とするが、聲も合はない。

萬はさそりのやうな蟲の形、厂は巖下のやうな祕密のところ。そのやうな窟室で、この蟲を蠱靈とし呪儀を行ふことを原義とするものであらう。そこで嚴厲・厲惡の義を生じ、その呪詛によつて生ずるものを癘といふ。

厲にまた厲禁、遮列の意があり、厲に列の聲義がある。列は斷首を列して遮列とすることをいふ。『周禮・地官・山虞物為之厲(物、之がレツを爲す)、『秋官・司隸』守王宮與野舍之厲禁(王宮と野舍の厲禁を守る)はみな遮列の意。

詩・大雅・公劉取厲取鍛(厲を取り鍛を執る)は旱石を求める意で、その厲は礪。

藤堂

(石)と萬(さそり、強い毒)の會意。萬は、二つの毒刺を持つた蠍を描いた象形字。厲は、蠍の毒のやうに嚴しい摩擦を加へる石、つまり砥石を示す。

また、猛毒を持つ意から、毒氣や毒のひどい病氣の意。ひどい、きついなどの意を含む。

漢字多功能字庫

金文はに從ひ萬聲。厂はの略體。金文や戰國竹簡には石に從ふ形もある(參考: 魯大司徒子仲白匜、《清華簡三・說命中》簡2、《上博竹書三・周易》簡22)。の初文。本義は粗く硬い砥石。磨礪(研ぎ磨くこと)、整飭(整へること)、振奮(奮ひ立つこと)、嚴厲(嚴しいこと)、猛烈などの義を派生する。

金文での用義は次のとほり。

戰國竹簡での用義は次のとほり。

現代漢語では劇烈、凶猛の意の「厲害」を表す。本來は「利害」に作り、良いところと惡いところを指す。「利害」と關係あることは往々にして比較的嚴重であるから、引伸して嚴重なるの意を有する。また劇烈、凶猛などの意を派生する。一般の人は利字の義と、劇烈や凶猛などの義に關聯があるとは考へないので、厲字で代替する(裘錫圭)。

屬性

U+53B2
JIS: 1-14-84
JIS X 0212: 20-48
𠪄
U+20A84
U+5389