朱 - 漢字私註
説文解字
赤心木。松柏屬。从木、一在其中。
- 六・木部
説文解字注
赤心木。松柏屬。朱本木名。引伸假借爲純赤之字。《糸部》曰、絑、純赤也。是其本字也。從木、一在其中。赤心不可像。故以一識之。若本𠅅非不可像者。於此知今本之非也。章俱切。古音𡉈四部。又按此字解云赤心木、松柏屬。當廁於松樠檜樅柏之処。今本失其舊次。本柢根株𠅅五文一貫。不當中骾以他物。葢淺人類居之。以傳會其一𡉈上、一𡉈中、一𡉈下之說耳。
康煕字典
- 部・劃數
- 木部・二劃
『唐韻』章俱切『集韻』『韻會』鐘輸切『正韻』專於切、𠀤音珠。『說文』赤心木、松柏之屬。从木、一在其中。一者記其心。徐曰、木之爲物、含陽於內、南方之火所自藏也。
又『山海・西荒經』蓋山之國有樹、赤皮、名朱木。
又朱赤、深纁也。『詩・豳風』我朱孔陽。《註》謂朱色光明也、寄位於南方。
又朱儒、短小之稱。『左傳・襄四年』臧武仲敗於邾。國人誦之曰、朱儒、朱儒、使我敗於邾。或作侏儒。
又姓。『統譜』顓頊之後封邾、後爲楚滅、子孫去邑爲朱。又望出吳郡。
又『集韻』慵朱切、音殊。朱提、縣名。『前漢・地理志』屬犍爲郡。
音訓
- 音
- シュ(漢) ス(呉) 〈『廣韻・上平聲・虞・朱』章俱切〉[zhū]{zyu1}
- 訓
- あか。あけ。あかい。
解字
白川
象形。木の幹の部分に、肥點を加へた形。
『説文解字』に赤心の木、松柏の屬なり。
といふ。
本、末も同じやうにその部位を示す指示的な造字法であるから、朱を株部を示す字と解することもできようが、金文においては朱は丹朱の意に用ゐ、朱巿、朱黃(衡)といひ、字をまた𫁍に作ることがある。
𫁍は丹朱の製法に關する字であるらしく、西周の金文に、家臣の葬にあたつて𫁍を賜うた例がある。𫁍の穴の部分は、蓋の左右に蒸氣拔けの穴のある形で、恐らく朱沙を固めて木に著け、それを薰蒸して水銀を分離するアマルガム精錬法のやうな方法が採られたのであらう。
殷墓の槨室からは朱塗りの明器や、またその朱の雕文がそのまま土に附著して殘された花土などが、多く出土してゐる。
藤堂
指示。木と一印から成り、木字の中央を一線で斷ち切ることを示す。つまり、切り株を示す。株の原字だが、切り株の木質部の赤い色をいふのに轉用された。
落合
指示。株の初文。木の幹の部分を指示記號で示した字。
甲骨文では地名に用ゐる。《甲骨綴合集》377・後半驗辭戊午卜貞、王田株、往來亡災。王占曰、吉茲御、獲兕十虎一狐一。
後に轉じて顏料の意味などで使はれるやうになつたため、古文で意符として木を更に加へた繁文(株)が作られた。
漢字多功能字庫
朱は株の初文。本義は、地面から露出した木の根、木の幹、あるいは切り株。假借して赤色、紅色の意。甲骨文、金文は、木と圓點に從ひ、木の幹、木の根元の所在を示す。構形取義は本や末と同じ。
『説文解字』株、木根也。
徐鍇《繫傳》入土曰根、在土上者曰株。
《段注》株、今俗語云樁。
『易・困』臀困于株木
。『韓非子・五蠹』田中有株、兔走觸株、折頸而死。
金文は中間の圓點を後に引き伸ばして一橫劃とし、あるいは二橫劃の形に作る。
甲骨文では地名に用ゐる。
金文では赤色を表す。毛公鼎朱巿
は、赤い蔽膝(古く衣裳の上に著けた服飾)のこと。
また重量の單位に用ゐ、後世には銖に作る。
季旭昇は、甲骨文や金文の鼄に束に從ふものと朱に從ふものがあつたり、楚簡の速字にまた二朱に從ふものがあるので、朱と束は一字から分化したものであるとする。按ずるにこれはただ聲符を換へたと見ることが可能で、しかも朱と束の用法を相同じくする例は見えないので、必ずしも一字の分化ではない。
屬性
- 朱
- U+6731
- JIS: 1-28-75
- 當用漢字・常用漢字