巨 - 漢字私註

説文解字

巨
規巨也。从、象手持之。其呂切。
工部
榘
巨或从。矢者、其中正也。
別條に揭出する。
𢀓
古文巨。

説文解字注

巨
規巨也。周髀筭經』曰、圜出於方、方出於矩。矩出於九九八十一。故折矩以爲句廣三、股脩四、徑隅五。旣方其外。半之一矩。環而共盤。得成三四五。㒳矩共長二十有五。是謂積矩。用矩之道。平矩以正繩。偃矩以望高。覆矩以測湥。臥矩以知遠。環矩以爲圓。合矩以爲方。方屬地。圓屬天。天圓地方。方數爲典。以方出圓。按規矩二字猶言法度。古不分別。規圜矩方者、圜出於方。圜方皆出於矩也。《夫部》曰、規、有法度也。不言圜曰規。『〔周禮〕考工記』斬轂之道必矩其陰陽。《注》矩謂刻識之也。凡識其廣長曰矩。故凡有所刻識皆謂之矩。从工、象手持之。謂⊐也。其吕切。五部。按後人分別、巨、大也、矩、法也、常也。與『說文』字異。其吕切、『唐韵』也。『廣韵』作矩、榘。入『〔廣韻・上聲〕九麌』、俱雨切。又云、『說文』又其吕切。此出『說文音隱』。
榘
巨或从木矢。矢者其中正也。《矢部〔短字條〕》曰、有所長短、以矢爲正。按今字作矩省木。
𢀓
古文巨。此爲象手持之。小篆變之。取整齊耳。『〔禮記〕大學』絜矩之道。《注》云、矩或作巨。此古文之遺也。

康煕字典

部・劃數
工部・二劃
古文
𢀑㠪𠫕

『唐韻』其呂切『集韻』臼許切、𠀤渠上聲。『說文』䂓巨也。从工、象手持之。

又『玉篇』大也。『孟子』爲巨室。

又巨萬、數也。『史記・平準書』京師之錢累巨萬。《註》巨萬、今萬萬。

又姓。『何氏姓苑』巨氏出南昌。『廣韻』漢有巨武、爲荆州刺史。又巨毋、複姓。『前漢・王莽傳』有奇士、長丈、大十圍、自謂巨毋霸。莽更其姓、曰巨母氏。謂因文母而霸王符也。『後漢・光武紀』作巨無霸。

又『韻會』通作鉅。『前漢・食貨志』庶人之富者累鉅萬。『李賀・高軒過詩』文章鉅工。

又與詎同。『前漢・高帝紀』公巨能入乎。『師古曰』巨讀曰詎、猶豈也。

又『類篇』求於切、音蕖。未央也。『韻會』亦作渠。【詩・小雅・庭燎・註】夜未渠央。義與遽同、言未便至夜也。

部・劃數
工部(一劃)

『玉篇』古文字。註詳二畫。

部・劃數
工部(一劃)

『篇海』同𢀑

部・劃數
厶部(一劃)

『篇海』古文字。註詳工部二畫。

異體字

或體。

音訓

キョ(漢) コ(慣) 〈『廣韻・上聲・語・巨』其吕切〉[jù]{geoi6}
おほきい。おほい(巨萬)。あに。なんぞ。

解字

白川

象形。把手のある矩形の定規に象る。

『説文解字』規巨(矩)なりとし、工に從ひ、手もて之れを持つに象る。と會意に解するが、指矩の象形。

榘は矢の曲直を正す意の會意字。

規は夫に從ひ、夫の初文は𝒳でぶんまはし、巨は方、規は圓を作る。

【補註】𝒳は類似形による代用。畫の甲骨文の構成要素として見える形。落合は乂を當てる。

後漢の范式の字は巨卿。巨(矩)によつて定式を得るので、巨と式とが對待の語となる。

巨大の意は鉅と通用の義。人の上に移して巨魁、巨子といひ、數量の上に移して巨萬のやうにいふ。

藤堂

象形。I型の角定規に、手で持つための把手のついた姿を描いたもの。規矩の(角定規)の原字。

のち、兩端が隔たつたの意味から、巨大の意に轉用された。

漢字多功能字庫

金文は矩尺(曲尺)の形に象る。矩は方形を畫くのに用ゐる道具。

金文はに從ひ、矩尺の形に象る。の省文。規矩は圓を畫き方を畫く道具で、規は圓形を畫くのに用ゐ、矩は方形を畫くのに用ゐる。『孟子・離婁上』離婁之明、公輸子之巧、不以規矩、不能成方員。《段注》引『周髀筭經』圜出於方、方出於矩。工に加へられる形は、人が操作するときの手の形を表す。後に巨を借りて巨大の巨となし、矩尺の義は矩で以て表示する。

金文では人名に用ゐる。また大を表す。郾王職戈郾王職乍(作)巨𫾧鋸

巨をまた榘、𢀓に作る。「規巨」は「規矩」、木工で測定に用ゐる道具。『説文解字』巨、規巨也。(後略)

屬性

U+5DE8
JIS: 1-21-80
當用漢字・常用漢字
𢀑
U+22011
U+382A
𠫕
U+20AD5
𢀓
U+22013

關聯字

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