工 - 漢字私註
説文解字
巧飾也。象人有規榘也。與巫同意。凡工之屬皆从工。
- 五・工部
古文工从彡。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𢀚
- 㣉
- 𠜝
『唐韻』古紅切『集韻』沽紅切、𠀤音公。『說文』巧飾也、象人有䂓榘也。『廣韻』巧也。『玉篇』善其事也。『詩・小雅』工祝致告。《傳》善其事曰工。《疏》工者巧於所能。
又『玉篇』官也。『書・堯典』允釐百工。
又共工、官名。『書・堯典』共工方鳩僝功。
又『韻會』匠也。『禮・曲禮』天子之六工、曰土工、金工、石工、木工、獸工、草工。『周禮・冬官考工記』審曲面埶、以飭五材、以辨民器、謂之百工。
又『正韻』事任也。『書・臯陶謨』無曠庶官、天工人其代之。『集傳』庶官所治、無非天事。
又射工、蟲名。『博物志』射工蟲口中有弩形、氣射人影、隨所著處發瘡。
又通作功。『魏志・管輅傳註』輅弟辰曰、與輅辨人物、析臧否、說近義、彈曲直、拙而不功也。
- 部・劃數
- 工部三劃
『玉篇』古文工字。註詳部首。
- 部・劃數
- 彡部・三劃
『說文』古文工字。註詳部首。
- 部・劃數
- 刀部七劃
『正字通』古文工字。註見部首。
異體字
或體。
音訓
- 音
- コウ(漢) ク(呉) 〈『廣韻・上平聲・東・公』古紅切〉[gōng]{gung1}
- 訓
- たくみ。つかさ。
解字
白川
象形。道具の形に象る。
『説文解字』に巫と同意なり
とする。巫の持つところは、左、尋、隱の字形に含まれる工と同じく、神事に用ゐる呪具。工具の工は、金文に鍛冶の臺の形に見えるものがあり、巫祝の用ゐるものとは異なるものであらう。
金文の《明公𣪘》に魯侯に𡆥工又り
とは、祝禱の功あるをいひ、また『詩・小雅・楚茨』工祝致告
(工祝告ることを致す)、『詩・周頌・臣工』嗟嗟臣工、敬爾在公。
(嗟嗟臣工、爾の公(宮)に在るを敬め)とある工祝とは巫祝、臣工は神事につかへるものであつた。『書・酒誥』に「宗工」「百宗工」の名があり、これも神事を主とするものであらうが、のち百工、百官の意となつた。西周期の《伊𣪘》に康宮の王の臣妾、百工を官𤔲(司)せよ
とあるのは、宮廟に隸屬する職能的品部を指すものであらう。
藤堂
指示。上下二線の間に縱線を描き、上下の面に穴を通すことを示す。また、鉤型物差しの象形ともいふ。
穴を開けるのは高度の技であるので、細工することを意味するやうになつた。
落合
工具の鑿の象形。下部は刃先、上部は柄を表す。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 職人。鑿の形からの派生義であらう。王に仕へる職人集團は多工や百工と稱される。《合集》19433(下揭)
- 物品を納めること。この義では貝を加へた貢が繁文に當たる。《甲骨綴合集》228
戊其有貢。
- 祭祀名。
- 地名またはその長。北工は隣接地か。《合集》9472
貞、我使工。
《合集補編》434貞、令在北工廾人。
- 工典
- 周祭に先立つて行はれる儀禮。祭祀豫定を記した簡牘を作つて祖先神に報告することであらう。《合集補編》11469・後半記時
癸巳卜泳貞、王旬亡禍。在六月、甲午工典、其幼。
甲骨文の要素としては、具體的な加工作業を表す字のほか、工業を象徵するものとしても用ゐられてゐる。
なほ、細い鑿は丵。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、ある種の道具の形を象る。早期金文は下部の橫劃が太く、斧鉞を象る王の刃の形に似る。本義は刃を持つ道具で、その上部は恐らく矩(曲尺)の機能を持つ(季旭昇)。功績、巧みの意を派生する(張日昇)。
楊樹達は、矩字が人の工を手に持つさまを象ることを根據に、工は曲尺を象るとする。鄒景衡、劉新民は、工は建設の道具であるとする。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 方國名、地名。
- 身分を表し、低級官吏あるいは工匠のこと。《合集》19433
多工
。《屯南》2525百工
。 - 假借して貢となす。
- 《合集》38310
工(貢)冊
は、簡冊を獻ずること。 - 《合集》27462
工(貢)父甲三牛
は、父甲に對して牛三頭を獻ずること。
- 《合集》38310
金文での用義は次のとほり。
- 𤔲工丁爵
𤔲工
は、文獻の「司空」のこと。 - 戰國の兵器銘文に「工帀(師)」と見え、「工師」とは器を鑄造する工匠を主管する官のこと。
- 國名。工吾王夫差劍
工吾
とは文獻の「句吾」、春秋の呉國のこと。『左傳・宣公八年』盟吳、越而還
孔穎達疏大伯、仲雍讓其弟季歷、而去之荊蠻、自號句吳。句或為工、夷言發聲也。
- 假借して功となし、功績を表す。
- 班簋
廣成厥工(功)
- 中山王方壺
休又(有)成工
休は庇護を指し、美善あるの意。 - 沈子它簋
告剌(烈)成工(功)
- 中山王圓壺
先王之工(功)剌(烈)
「工剌」は「功烈」のこと。『禮記・祭法』此皆有功烈於民者也
鄭玄注烈、業也。
- 班簋
戰國竹簡でも功績、成功を表す。《上博竹書一・孔子詩論》簡5「「又(有)城(成)工(功)者可(何)女(如)。曰、『訟(頌)』氏(是)也。」は、國家に成就あり功業あり、いかに處理すべきか、『頌』に述べられてゐる、の意(季旭昇)。
屬性
- 工
- U+5DE5
- JIS: 1-25-9
- 當用漢字・常用漢字
- 𢀚
- U+2201A
- 㣉
- U+38C9
- 𠜝
- U+2071D
- 𢒄
- U+22484
関聯字
工に從ふ字を、漢字私註部別一覽・工部に蒐める。