牙 - 漢字私註
説文解字
牡齒也。象上下相錯之形。凡牙之屬皆从牙。五加切。
- 二・牙部
古文牙。
説文解字注
壯齒也。壯、各本譌作牡。今本『篇』『韵』皆譌。惟石刻九經字㨾不誤。而馬氏版本妄改之。《士部》曰「壯、大也。」壯齒者、齒之大者也。統言之皆偁齒、偁牙。析言之則前當脣者偁齒。後在輔車者偁牙。牙較大於齒、非有牝牡也。『釋名〔釋形體〕』牙、樝牙也。隨形言之也。輔車或曰牙車。牙所載也。『詩〔召南・行露〕』誰謂雀無角、誰謂鼠無牙。謂雀本無角、鼠本無牙。而穿屋穿牆似有角牙者然。鼠齒不大、故謂無牙也。東方朔說騶牙曰、其齒前後若一、齊等無牙。此爲齒小牙大之明證。
象上下相錯之形。五加切。古音在五部。
凡牙之屬皆从牙。
古文牙。从齒而象其形也。𠚒古文齒。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𤘈
『唐韻』五加切『集韻』『類篇』『韻會』『正韻』牛加切、𠀤音芽。齒也。『說文』牡齒也。象上下相錯之形。『易・大畜』豶豕之牙。
又『戰國策』投之一骨。輕起相牙。《註》以牙相噬。
又『詩・周頌』設業設虡、崇牙樹羽。《疏》栒之上刻爲崇牙。以鋸齒捷業然、故謂之業牙、卽業之上齒也。『禮・明堂位』殷之崇牙。
又『禮・玉藻』佩玉有衝牙。《疏》其形似牙也。
又『周禮・春官・典瑞』牙璋以起軍旅、以治兵守。《註》牙璋、瑑以爲牙、牙齒兵象、故以牙璋發兵。
又『集韻』旗名。『張衡・東京賦』牙旗𦆯紛。《註》古者天子出、建大牙旗、竿上以象牙飾之。
又『韻會』立于帳前、謂之牙門。『後漢・公孫瓚傳』拔其牙門。
又『史記・東方朔傳』遠方當來歸義、而騶牙先見、其齒前後若一、齊等無牙、故謂之騶牙。
又姓。『風俗通』周大司徒君牙之後。
又與芽通。『前漢・金日磾傳』霍氏有事萌牙。《註》師古曰、萌牙者、言始有端緒、若草之始生。
又『集韻』語下切、音雅。車罔。
又『集韻』魚駕切『韻會』五駕切、𠀤音訝。『周禮・冬官考工記・輪人』牙也者、以爲固抱也。《註》牙讀如訝。謂輪輮也。《疏》訝、迎也。此車牙亦輮之、使兩頭相迎、故讀從之。
又『唐韻正』古音吾。『詩・小雅』祈父、予王之爪牙。胡轉予于恤、靡所止居。
又『唐韻正』與虞吾𠀤通。『詩・召南』吁嗟乎騶虞。『山海經』『墨子』𠀤作騶吾。『前漢・東方朔傳』作騶牙。
又叶五紅切。『詩・小雅』誰謂鼠無牙、何以穿我墉。
又叶音峨。『晉京洛童謠』遙望晉國何嵯峨、千歲髑髏生齒牙。
- 部・劃數
- 牙部・六劃
- 部・劃數
- 備考・牙部
集韻
- 卷・韻・小韻
- 平聲三・麻第九・牙
- 反切
- 牛加切〔音1〕
牛加切。
『說文』牡齒也。象上下相錯之形。
古作𤘈。
牙、一曰旗名。
文十九。
- 卷・韻・小韻
- 上聲下・馬第三十五・雅
- 反切
- 語下切〔音2〕
車罔。
- 卷・韻・小韻
- 去聲下・禡第四十・訝
- 反切
- 魚駕切〔音3〕
車輮也。
音訓義
- 音
- ガ(漢) ゲ(呉)⦅一⦆
- ガ(推)⦅二⦆
- ガ(推)⦅三⦆
- 訓
- きば⦅一⦆
- 官話
- yá⦅一⦆
- 粤語
- ngaa4⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・下平聲・麻・牙』五加切
- 『集韻・平聲三・麻第九・牙』牛加切〔集韻1〕
- 『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・疑二牙』五加切
- 聲母
- 疑(牙音・全濁)
- 等呼
- 二
- 官話
- yá
- 粤語
- ngaa4
- 日本語音
- ガ(漢)
- ゲ(呉)
- 訓
- きば
- 義
- 日本語では鋭く發達した犬齒や切齒を指す。
- 漢語では、古くは大きい齒を牙、小さい齒を齒と區別したといふ。(《段注》)
- 現代漢語では、牙齒ともに齒一般を指し、あるいは特に象牙を指す。日本語でいふ牙を獠牙などと呼ぶ。
- 將軍の旗を指し、またその居所を指す。牙旗、牙城など。
- 仲買人を指す。牙郎、牙媪、牙人、牙子、牙商、牙行など。
- 牙牙とは幼兒(白川、藤堂は女兒とする)が言葉を眞似る聲の形容。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・上聲下・馬第三十五・雅』語下切〔集韻2〕
- 『五音集韻・上聲卷第八・馬第十七・疑二雅』五下切
- 聲母
- 疑(牙音・全濁)
- 等呼
- 二
- 日本語音
- ガ(推)
- 義
- 車輪の外周の箍。輞。『集韻』
車罔。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・去聲下・禡第四十・訝』魚駕切〔集韻3〕
- 『五音集韻・去聲卷第十一・禡第十七・疑二迓』吾駕切
- 聲母
- 疑(牙音・全濁)
- 等呼
- 二
- 日本語音
- ガ(推)
- 義
- 車輪の最も外側の枠。輮。『集韻』
車輮也。
解字
白川
象形。牙の上下相交はる形。
『説文解字』に牡齒なり
とあり、《段注》に「壯齒」の誤りとする。
藤堂
象形。金文は㇗形と㇕形を嚙み合はせたさまを描いたもので、枒(木目込細工)の原字。轉じて、ちぐはぐに嚙み合ふ齒のこと。
漢語多功能字庫
古文字は正反の區別の無い場合がある。牙の字形を縱に置き、反時計廻りに90度廻すと、金文は齒が上下に交錯する形に象り、本義は牙齒(齒)。牙と齒には區別があり、『説文解字』に據ると、齒は門齒(前齒)を指し、牙は臼齒(奧齒)を指す。
『説文解字』牙、牡齒也。象上下相錯之形。(後略)
『毛詩・召南・行露』誰謂鼠無牙。何以穿我墉。誰謂女無家。何以速我訟。雖速我訟、亦不女從。
戰國竹簡の牙字は下に齒を加へて意符となす。これは『説文解字』古文の本である。
牙字は齒が上下に交錯する形に象ることから、交錯、交互の意を有し、故に互字を分化した。牙と互は意味が密接に關はる同源字である。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、猛獸の鋭い齒を表す。師克盨
干(捍)害(禦)王身、乍(作)爪牙。
爪牙は役に立つ助手の比喩。 - 人名に用ゐる。
牙と與の聲音は相近く、それで戰國竹簡中で牙字を假借して與となし、牙の隸變後の異體をまた与に作り、後には与を與の異體字と看做す。與字の從ふ与はその實は牙字(与、牙はいづれも金文「牙」字の隸定)であることに注意せよ。與字中の牙は聲符として用ゐられる外に、古人が婚約を結ぶときに牙を贈る傳統を反映してゐる。
《郭店楚簡・語叢三》簡9牙(與)為義者遊、益。牙(與)莊者處、益。……牙(與)不好學者遊、員(損)。
屬性
- 牙
- U+7259
- JIS: 1-18-71
- 常用漢字(平成22年追加)
- 𤘈
- U+24608
- 𤘉
- U+24609
- 𤘍
- U+2460D
關聯字
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