肇 - 漢字私註

説文解字

攴部肇字條

肇

擊也。从肈省聲。治小切。

攴部

説文解字注

肈の俗字として刪去する。

戈部肈字條

肈

上諱。臣鉉等曰「後漢和帝名也。案、李舟『切韻』云「擊也」。从聲。」直小切。

十二戈部

説文解字注

肈

上諱。按許原書無篆體、但言「上諱」、後人乃補此篆。說詳《示部〔祜字條〕》。「上諱」者、漢和帝諱也。『後漢書』作肈。李賢引『伏無忌古今注』曰「肈之字曰始、音兆。許愼『說文』肈音大小反。上諱也。伏許竝漢時人。而帝諱不同。葢應別有所據。」玉裁按古有肈無肇。从戈之肈、漢碑或从殳。俗乃从攵作肇。而淺人以竄入許書《攴部》中。『玉篇』曰「肇俗肈字」。『五經文字・戈部」曰「肈作肇、訛」。『廣韵」有肈無肇。伏侯作『古今注』時𣃔無从攵之肇。李賢注『後漢書』亦𣃔不至認肈肇爲二字。葢伏侯作肁、與許作肈不同。和帝命名之義取始。肁者、始開也。引申爲凡始。故伏云諱肁、而易之之字作始。實則漢人肁字不行。衹用肈字訓始。如『詩〔大雅〕生民・傳』、『夏小正傳』可證。外閒所諱者肈也。故許云諱肈此則伏許不同之由。章懷之所疑。而今日『後漢書』正文作肇譌也。李舟『切韵』云「肈、擊也」。其字从戈肁聲。形音義皆合直小切。許諱其字故不爲之解。今經典肈字俗譌从攵。不可不正。《攴部》妄竄之肇、今己芟去。

康煕字典

部・劃數
聿部・八劃

『廣韻』治小切『集韻』『韻會』『正韻』直紹切、𠀤音趙。『說文』擊也。

又『廣韻』始也。『書・舜典』肇十有二州。《傳》肇、始也。又『仲虺之誥』肇我邦于有夏。《傳》始我商家國于夏世。

又正也。『齊語』竱本肇末。《註》竱、等也。肇、正也。謂先等其本、以正其末也。

又敏也。『爾雅・釋言』肇、敏也。『書・酒誥』肇牽車牛、遠服賈。

又長也。『爾雅・釋詁』肇、謀也。『詩・大雅』肇敏戎公、用錫爾祉。《傳》肇、謀也。『釋文』韓詩云、長也。

又山名。『山海經』華山靑水之東有山、名曰肇山。

又與兆同。『詩・大雅』以歸肇祀。《傳》肇、始也。始歸郊祀也。《箋》肇、郊之神位也。《疏》肇、宜作兆。【春官・小宗伯】云「兆五帝于四郊」是也。又『商頌』肇域彼四海。《箋》肇、當作兆。《疏》言正天下之經界、以四海爲兆域。

又『集韻』杜皓切、音道。擊也。

部・劃數
聿部・八劃

『集韻』同

又『韻會』戟屬。

音訓義

テウ(漢) デウ(呉)⦅一⦆
タウ(推)⦅二⦆
はじめる⦅一⦆
ただす⦅一⦆
官話
zhào⦅一⦆
粤語
siu6⦅一⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・上聲』治小切
集韻・上聲下小第三十』直紹切
『五音集韻・上聲卷第八・小第十二・澄三肇』治小切
聲母
澄(舌上音・全濁)
等呼
官話
zhào
粤語
siu6
日本語音
テウ(漢)
デウ(呉)
はじめる
ただす
始める。
正す。
計る。謀る。
敏し。
擊つ。

⦅二⦆

反切
集韻・上聲下・晧第三十二・道』杜晧切
『五音集韻・上聲卷第八・皓第十四・定一道』徒皓切
聲母
定(舌頭音・全濁)
等呼
日本語音
タウ(推)
『集韻』肇、擊也。
『集韻』肈、謀也、始也。

解字

白川

肇はの會意。攴は神戸。聿は書。神戸の扉を啓いて、祝禱の書を見ることを啓といふ。神意を承け、それによつてことをはじめる意。それでことを「肇め」、また繼承する意に用ゐる。

金文に「肇緟」といふ語があり、再命して承繼することをいふ。金文には肇、啓ともにに從つて肈、啔に作ることがあり、戈はその神戸を守る意と考へられる。『詩・大雅・江漢』に肇敏戎公(戎公(軍事)に肇敏す)とあるのも、肇緟していそしむ意であらう。

『説文解字』に擊つなりと訓じ、字を肈の省聲に從ふとする。『同・戈部』に肈を錄して上の諱なり(和帝の名)とする。肈は李舟の『切韻』にも擊つなりとあり、肇、肈を別の字とするが、金文には「肇緟」にまた肈を用ゐてをり、同字と見てよい。また『同・戶部』に肁は始めて開くなりとあり、それが肇字の意。、肇、肈の三形は、もと同字と見てよい。

藤堂

𢼄との會意。𢼄は(動詞の記號)から成り、戸を手で左右に開くこと。肇は、物事の絲口を左右に開くこと。

落合

啓の略體と、筆を持つた形のから成る會意字。

漢語多功能字庫

金文は◎とに從ひ聲。戈は武器。方稚松は◎は疑ふらくは盾の象形初文とする。本義は攻擊、擊打。

『説文解字』肇、擊也。(後略)

肇字はあるいは◎ではなくに從ひ、戈で戶を擊つ形に象る(丁山、李孝定)。

金文では舊くは多く語氣の詞で義無しと解釋した(楊樹達)。最新の考釋では勤敏の意を表すとする。

後世では肇は開始を表す。『廣韻』肇、始也。

【補註】漢語多功能字庫は肇の甲骨文として擧げる字形(◎あるいは戶と戈に從ふ)に解説を加へてゐないが、落合はその字を捍とする。

屬性

U+8087
JIS: 1-40-5
人名用漢字
U+8088
JIS X 0212: 53-75