壺 - 漢字私註

説文解字

昆吾圜器也。象形。从、象其蓋也。凡壷之屬皆从壷。
段注に缶部〔匋字條〕曰、古者昆吾作匋。壷者、昆吾始爲之。聘禮注曰、壷、酒尊也。『公羊傳・注』曰、壺、禮器。腹方口圓曰壷。反之曰方壷。有爵飾。又喪大記狄人出壷、大小戴記投壺、皆壷之屬也。といふ。
壺部

康煕字典

部・劃數
士部・八劃
古文
𠻭

『廣韻』戸吳切『集韻』『韻會』『正韻』洪孤切、𠀤音胡。夏商曰尊彝、周制用壷、有方圜之異。『儀禮・燕禮』卿大夫用方、直方爲義也。士旅食用圜、順命爲宜也。『左傳・昭十五年』晉荀躒如周葬𥠇后、除喪以文伯宴、樽以魯壷。

又官名。『周禮・夏官』挈壷氏掌挈壷以令軍井、凡軍事、懸壷以序聚𣟄。

又『禮・投壷・註』諸侯卿大夫士皆用之。

又唾壷。『晉書・王敦傳』敦酒後輒詠魏武樂府、以如意擊唾壷爲節。

又壷蘆、瓜屬、俗作葫。『詩・豳風』八月斷壷。『鶡冠子・學問篇』一壷千金。

又地名。壷關、在上黨、古黎侯國。『前漢・武五子傳』壷關三老茂上書。又壷頭、在崇陽縣北。『後漢・馬援傳』援征五溪蠻、至下巂、卒于壷頭、卽此。『禮・檀弓』戰于臺駘。《註》臺當作壷。

又山名。壷口山、在河東猗氏。『書・禹貢』旣載壷口。又三壷。『王子年・拾遺記』東海中三山、一方壷、則方丈也、二蓬壷、則蓬萊也、三瀛壷、則瀛州也。

又姓。晉大夫采邑、因爲氏、見『統譜』。又壷丘、複姓。

又叶呼古切、音虎。『宋玉・招魂』幸而得脫、其外曠宇些。赤蟻若象、元蠭若壷些。

又叶羊洳切、音預。『魏・邯鄲淳・投壷賦』敬不可久、禮成于𩜈、乃設大射、否則投壷。

『說文』昆吾圜器也。《徐曰》昆吾、紂臣、作瓦器。

部・劃數
士部・九劃

。與壼別。

部・劃數
口部十一劃

『六書本義』古文字。註詳士部八畫。

部・劃數
備考・士部

『篇海類編』同。『字彙補』作𡔳。

異體字

或體。

簡体字。

音訓

つぼ。ふくべ。

解字

白川

象形。壺の器と蓋の全形に象る。

『説文解字』缶部匋字條に古者昆吾作匋。(いにしへ、昆吾匋を作る。)とその起源説話を記すやうに、昆吾はその職能的祖神の名である。『國語・鄭語・注』に昆吾は祝融の孫、陸終の第三子なり(補註: 第一子の誤り?)とあつて、火神祝融の後とされる。

『爾雅・釋器』に壺の古名を康瓠と記してをり、壺の原型はに象る。(補註: 『爾雅・釋器康瓠、謂之甈。)

藤堂

象形。壺を描いたもの。上部の印は蓋の形。

腹が膨れて(うり)と同じ形をしてゐるので、コといふ。

落合

象形。蓋の附いた酒樽である「壺」の象形。但し甲骨文には原義での用例が見られない。

甲骨文では、地名またはその長を表す。《英國所藏甲骨集》751貞、勿于壺力。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、古代の酒や水を入れるのに用ゐた葫蘆を象つた容器である壺の形を象る。本義は水を入れる器。甲骨文、金文の上部はの形につくり、壺の蓋を象る。蓋の上には紐があり、器の身には耳が二つあり、下部は大きい腹、底には圈足がある。『詩・大雅・韓奕』清酒百壺。『周禮・秋官・掌客』壺四十、鄭玄注壺、酒器也。説文解字に昆吾圜器也。とあり、段注に缶部曰、古者昆吾作匋。壷者、昆吾始爲之。といふ。一説に昆吾は壺の別名といふ。王筠『說文釋例』昆吾者、壺之別名也。昆讀如渾、與壺雙聲、吾與壺疊韻。

甲骨文では人名に用ゐ、金文では本義に用ゐて水を入れる器を表す。令狐壺乍(作)鑄尊壺。は、祭祀に用ゐる壺を鑄造することをいふ。己侯壺己侯乍(作)鑄壺

郭店竹簡〈語叢四〉簡26の壺字は意符の缶、聲符のに從ふ。《郭店・語叢四》簡26三壺一𦳚(堤)は、壺三つが一緒に机の類の臺座の上に置かれてゐることをいふ。『淮南子・泰族』甂甌有𦳚。『淮南子・詮言』瓶甌有堤

古文字のは壺を借用して表した。

器の壺と、古の宮中の道たる壼を混同してはならない。

屬性

U+58F7
JIS: 1-36-59
U+58FA
JIS: 1-52-68
𠻭
U+20EED
𡔳
U+21533
𡔲
U+21532
U+58F6