士 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
事也。『豳風』『周頌』傳凡三見。『大雅〔文王有聲〕』武王豈不仕《傳》亦云、仕、事也。鄭注表記申之曰、仕之言事也。士事㬪韻。引伸之、凡能事其事者偁士。『白虎通〔爵〕』曰、士者、事也。任事之稱也。故傳曰、通古今、辯然不、謂之士。
數始於一。終於十。从一十。三字依『廣韻』。此說會意也。孔子曰、推十合一爲士。『韻會』『玉篇』皆作推一合十。鉉本及『廣韻』皆作推十合一。似鉉本爲長。數始一終十。學者由博返約。故云推十合一。博學、審問、愼思、明辨、篤行、惟以求其至是也。若一以貫之。則聖人之極致矣。鉏里切。一部。
凡士之屬皆从士。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤鉏里切、音仕。四民士爲首。『詩・大雅』譽髦斯士。『禮・王制』命鄕論秀士、升之司徒、曰選士。司徒論選士之秀者、升之學、曰俊士。升於司徒者、不征於鄕、升於學者、不征於司徒、曰造士。大樂正論造士之秀者、升之司馬、曰進士。
又官總名。『書・立政』庶常吉士。『禮・王制』天子之元士、諸侯之上士、中士、下士。
又『孔安國曰』士、理官也、欲得其曲直之理也。『書・舜典』帝曰:臯陶、汝作士。『左傳・僖二十八年』士榮爲大士。
又漢制、嘗爵爲公侯奪免者、曰公士。
又『前漢・鄒陽傳』武力鼎士。《註》能舉鼎者。
又『前漢・李尋傳』拔擢天士。《註》能知天道者。
又『後漢・李業傳』王莽以業爲酒士。《註》時官酤酒、故置酒士。
又侍從之士。『通鑑』唐杜如晦等十八學士、時謂之登瀛州。
又士卒。『左傳・丘甲註』革車一乘、甲士三人、步卒七十二人。『家語』孔子之宋、匡人以。甲士圍之。
又男子通稱。『詩・周頌』有依其士。
又女之有士行者曰女士。『詩・大雅』釐我女士。
又『管子・牧民篇』有士經。《註》士、事也。經、常也。
又『梵書』釋子勤佛行者曰德士、無上士。
又俗塐神像曰木居士。『韓愈詩』偶然題作木居士、便有無窮求福人。
又『山海經』大荒西有國、名淑士。
又士鄕。『後漢・鄭𤣥傳』昔齊置士鄕。《註》管仲相桓公、制國爲二十一鄕、工商之鄕六、士鄕十五。
又縣名、勇士縣、屬天水郡、見『後漢・西羌傳』。
又姓。陶唐之苗裔士蔿之後、爲士氏、見『統譜』。
又複姓、漢士孫瑞、扶風人。
又與事通。『書・洛誥』見士于周。《註》悉來赴役也。『詩・豳風』勿士銜枚。《註》自今可勿爲行𨻰銜枚之事。
又叶主矩切、音雨。『詩・大雅』赫赫明明、王命卿士。叶下父。父、音甫。
『說文』士、事也。數始于一、終于十、从一从十。
『集韻』本作𣎶。又與仕通。
音訓
- 音
- シ(漢) ジ(呉) 〈『廣韻・上聲・止・士』鉏里切〉[shì]{si6}
- 訓
- をとこ。こと。つかへる。
解字
金文の字形を見る限りは、斧鉞に象るとするのが妥當か。
白川
象形。鉞の刃部を下にして置く形に象る。その大なるものは王。王、士ともに、その身分を示す儀器。
『説文解字』に事なり
と疊韻を以て解し、數は一に始まり、十に終る。一と十に從ふ。孔子曰く、十を推して一に合するを士と爲す
と孔子説を引くが、當時の俗説であらう。
士は戰士階級。卿は廷禮の執行者。大夫は農夫の管理者。この三者が古代の治者階級を形成した。
藤堂
象形。陰莖の突き立つさまを描いたもの。牡字の旁。成人して自立する男。
落合
象形。字源には諸説あるが、建築物の象形である享の初文の亯や高の上部と似た形であり、恐らく小さな建物であらう。
甲骨文では祭祀名に用ゐる。《合集》11006貞、勿士燎十牛。
【補註】落合の擧げる字が、金文以降と繼承關係を有する字なのか、不詳。
漢字多功能字庫
金文は斧の類に象る。手に斧を持つ武士(兵士)を表すのに用ゐ、本義は兵士。
『詩・小雅・采芑』鄭玄箋士、軍士也
。士は斧を象るが、それは士が斧を執り事をなす人であるからで、それで斧の形の向きを變へて、士字とした。斧鉞は王權の象徵で、また王を表すこともできる。甲骨文の士と王は同じ形で、讀んで士となすことができ、また讀んで王となすことができる(林澐)。後に士はまた男子の通稱に用ゐ、またひろく讀書人、辦事人、卿士、官吏を指す。
金文の士の底の橫劃は斧鉞の曲がつた刃を象り、後に簡化して上側の橫劃と同じやうな長さの橫筆となり、小篆以後、兩橫劃の上を長く下を短くして土と區別する。
金文での用義は次のとほり。
- 男子の通稱。
- 沇兒鐘
及我父兄庶士
。 - 師㝨簋
孚(俘)士、女、羊、牛
。 - 王孫誥鐘
及我父兄、者(諸)士
。
- 沇兒鐘
- 軍士を表す。
- 新郪虎符
凡興士披甲、用兵五十人以上、必會王符、乃敢行之。
- 新郪虎符
- 官名に用ゐる。
戰國文字では派生義に用ゐる。
- 《郭店簡・老子乙》簡9
上士昏(聞)道、堇(勤)能行於其中。中士昏(聞)道、若昏(聞)若亡。下士昏(聞)道、大笑之。
(補註: 『老子・第四十一章』に相當。) - 《郭店簡・老子甲》簡8
古之善為士者、必非(微)溺(妙)玄達、深不可志(識)
。(補註: 『老子・第十五章』に相當。) - 《郭店簡・五行》簡7
士又(有)志於君子道胃(謂)之𠱾(志)士
。 - 《清華簡一・皇門》簡11
良士
。
漢帛書での用義は次のとほり。
- 武士(兵士)を表す。
- 《馬王堆帛書・老子甲本》第70行
善為士者不武、善戰者不怒。
(補註: 『老子・第六十八章』に相當。) - 《馬王堆帛書・老子甲本卷後古佚書》第176行
士有志於君子道胃(謂)之之(志)士。
- 《馬王堆帛書・老子甲本》第70行
- 事の通假字となし、事奉(つかへること?)を表す。《馬王堆帛書・老子甲本卷後古佚書》第314-315行
君子從而士(事)之也[者]、猶顏子、子路之士(事)孔子也。士(事)之者、成(誠)士(事)之也。
屬性
- 士
- U+58EB
- JIS: 1-27-46
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
士に從ふ字を漢字私註部別一覽・士部に蒐める。