大 - 漢字私註

説文解字

大部大字條

大
天大、地大、人亦大。故大象人形。古文大他達切也。凡大之屬皆从大。徒蓋切。
大部

説文解字注

大
天大、地大、人亦大焉。依『韵會』訂。象人形。老子〔二十五〕』曰、道大、天大、地大、人亦大。人法地、地法天、天法道。按天之文从一大、則先造大字也。人儿之文但象臂脛。大文則首手足皆具。而可以參天地。是爲大。徒葢切。十五部。古文亣也。大下云、古文亣亣下云、籒文大。此以古文籒文互釋。明衹一字而體稍異。後來小篆偏旁或从古、或从籒。故不得不殊爲二部。亦猶从人儿必分系二部也。然則小篆作何字。曰小篆作古文也。凡大之屬皆从大。

亣部亣字條

亣
籒文大、改古文。亦象人形。凡大之屬皆从大。他達切。
亣部

説文解字注

亣
籒文大。改古文。謂古文作大、籒文乃改作亣也。本是一字。而凡字偏旁或从古、或从籒不一。許爲字書乃不得不析爲二部。猶人儿本一字、必析爲二部也。顧野王『玉篇』乃用隷法合二部爲一部。遂使古籒之分不可攷矣。亦象人形。亦者、亦古文也。大象人形。此亦象人形。其字同、則其音同也。而大徐云、大徒葢切、亣他達切。分別殊誤。古去入不分。凡今去聲之字、古皆入聲。大讀入聲者、今惟有會稽大末縣。獨存古語耳。實則凡大皆可入。非古文去、籒文入之謂。凡亣之屬皆从亣。

康煕字典

部・劃數
部首
古文
𠘲

『唐韻』『集韻』『韻會』徒蓋切。『正韻』度柰切、𠀤音汏。小之對。『易・乾卦』大哉乾元。『老子・道德經』域中有四大、道大、天大、地大、王亦大。『莊子・天地篇』不同同之謂大。『則陽篇』天地者、形之大。隂陽者、氣之大。

又初也。『禮・文王世子』天子視學、大昕鼓徵。《註》日初明、擊鼓徵召學士、使早至也。

又徧也。『禮・郊特牲』大報天而主日。

又肥美也。『儀禮・公食大夫禮』士羞、庶羞皆有大、贊者辨取庶羞之大、以授賓。《註》大、以肥美者特爲臠、所以祭也。

又過也。『戰國策』無大大王。

又長也。『爾雅・釋器』珪大尺二寸謂之玠。《疏》大、長也。

又都大、官名。宋制有兩都大、一提舉茶馬、一提點坑冶鑄錢與提𠛬序官。

又措大、士也。『書・言故事』窮措大、眼孔小、與錢十萬貫、塞破屋子矣。

又唐大、弓名、見『周禮・夏官』。

又四大、地、水、火、風也、見『梵書・圓覺經』。

又姓大。廷氏之後、見『風俗通』。

又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤他蓋切、音忲。【易】大和大極。【書】【詩】大王大師。【禮】大羹大牢。𠀤音泰。

又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤唐佐切、音䭾。『杜甫・天狗賦』不愛力以許人兮、能絕目以爲大。

又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤吐臥切、音拕。猛也、甚也。『禮〔曲禮上〕童子不衣裘裳・註』鄭康成爲大溫也。徐邈大音唾。

又叶徒計切、音第。『詩・大雅』戎雖小子、而式弘大、叶厲泄愒敗。『正字通』楊愼曰、大無音一駕切者、韻書二十二禡不收。考淮南子、宋康王世、有雀生鸇。占曰、小而生大、必霸天下。大叶下、古亦有一駕切之音。

『說文』天大、地大、人亦大。象人形。《徐曰》本古文人字。一曰他達切、經史大通。

部・劃數
亠部・二劃

『唐韻』他達切、音闥。『說文長箋』原本亣、佗蓋切、與字徒蓋切本作一字異傍、居上爲大、處下爲亣。徐氏謬讀蓋爲盇、又改作佗達切、而歸之入聲、誤矣。

部・劃數
几部三劃

『字彙補』古文字。註見部首。亦作[⿱一𢁒]。

音訓

⦅一⦆

反切
廣韻・去聲』徒蓋切
集韻・去聲上夳第十四』徒蓋切
『五音集韻・去聲卷第十・泰第十二・定・一大』徒蓋切
官話
dài
粤語
daai6
日本語音
ダイ(呉)
タイ(漢)
おほきい
おほいに

現代官話では、「大夫」(醫者の意に用ゐる場合)、「大王」(戲曲や古い小説で盜賊の首領を呼ぶ場合)など、特殊な場合にのみ用ゐる模樣。

⦅二⦆

反切
廣韻・去聲・箇・䭾』唐佐切
集韻・去聲下・箇第三十八・馱』唐佐切
『五音集韻・去聲卷第十一・箇第十五・定・一䭾』唐佐切
官話
日本語音
ダ(呉)
タ(漢)
おほきい
おほいに

現代官話では、官名の「大夫」や、王侯を尊稱するときの「大王」は、この音に讀む。

⦅三⦆

反切
集韻・去聲上夳第十四』他蓋切
『五音集韻・去聲卷第十・泰第十二・透・一泰』他蓋切
官話
tài
粤語
taai3
日本語音
タイ(漢、呉)
はなはだしい(藤堂)

に通ず。

⦅四⦆

反切
集韻・去聲下・過第三十九・拕』他佐切
『五音集韻・去聲卷第十一・箇第十五・透・一拖』吐邏切
太也。何休曰約誓大甚。(『集韻』)
猛也、甚也。(『康煕字典』)

⦅五⦆

反切
集韻・入聲上・曷第十二・闥』他達切
『五音集韻・入聲卷十四・曷第七・透・一闥』他達切

解字

白川

象形。人の正面形に象る。

『説文解字』の釋は『老子・二十五故道大、天大、地大、王亦大。による。

金文の大保關係の器に、大を特に圖象化して、優れた體格の樣式に記されてをり、そのことは大保が最高の聖職者であつたことと關係があらう。

藤堂

象形。人が手足を擴げて大の字に立つた姿を描いたもの。大きく、たつぷりとゆとりがある意。

(ゆとりがある)はその入聲に當たる。

落合

象形。手足を擴げて身體を大きく見せた人を正面から見た形。

甲骨文では字形が近い夫や天を大の代替字とすることもある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. おほきな。大豕や大星などの用法がある。また年長や格上の意でも用ゐられる。
  2. おほいに。非常に。大規模に。
  3. 系譜上で遠い先王の名に加へられる字。大乙や大丁など。
  4. 地名またはその長。殷に敵對して大方と呼ばれることもある。また出組、何組の貞人名としても見える。
大子
年長の男子。
大水
水害。洪水。單に水ともいふ。
大示
大乙以後の遠い先祖の集合。
大吉
甲骨占卜において、より強い吉兆が出現すること。合文で記されることもある。
大邑商
殷の都の商の別稱。大邑や天邑商ともいふ。但し大邑は大きな都市の意であり、稀に商以外にも用ゐられることがある。
大牢
祭祀犧牲の種別であり、後代にいふ大牢と同じく牛、豚、羊のセットと考へられてゐる。甲骨文では單に牢とする記述が多い。
大宗
祭祀施設。具體的な位置などは不明。殷都には小宗も置かれてゐる。
大學
施設名。後代にいふ大學と同じく王立學校と言はれるが、甲骨文には詳細な記述がなく、正否不明。
大食
午前中の時間帶を指す。大食日、食日、大采、采日ともいふ。それぞれ異なる時間帶とする説もある。
大歳
祭祀對象。後にいふ歳星(木星)と言はれるが、甲骨文には詳細な記述がなく、正否不明。

甲骨文の要素として使はれる場合には、と同じく、人の動作や狀態を表す字の一部となることが多い。

漢字多功能字庫

正面に立ち、兩手を下に垂れる人に象る。本義は成年の人で、子供を象ると相對し、年齢が子供に比べて大きいので、大きいの義を派生する。

金文では大を表し、と相對する。また人名に用ゐる。また通讀してとなす。「大(太)史」(史官)、「大(太)保」(官名、輔弼重臣)、「大(太)室」(太廟の中室)、「大(太)師」(官名)など。

古文字の大と夫は一つの字の分化したもので、大は本來は夫(成年男子)を表し、また大を表す。後に大の上に短い橫劃を加へて夫字を分化した。

また亣に作る。

屬性

U+5927
JIS: 1-34-71
當用漢字・常用漢字
U+4EA3
𠘲
U+20632

関聯字

大に從ふ字

漢字私註部別一覽・大部に蒐める。

其の他

亣とは別の字。亓はの異體字。