衰 - 漢字私註
説文解字
艸雨衣。秦謂之萆。从衣、象形。穌禾切。
- 八・衣部
古文衰。
説文解字注
艸雨衣。雨衣有不艸者。『左傳〔哀二十七年〕』成子衣製杖戈。杜曰、製、雨衣。按言製則非艸爲。若今油布衣。秦謂之萆。《艸部》曰、萆、雨衣。一曰衰衣。此則著萆爲秦語也。『〔詩〕小雅〔無羊〕』何蓑何笠。《傳》曰、蓑所以僃雨、笠所以禦暑。『公羊傳〔定元年〕』不蓑城也。何云、若今以艸衣城。『齊語・注』云、襏襫、蓑襞衣也。襞或萆字。亦作薜。『六韜〔龍韜・農器〕』蓑薜簦笠。衰俗从艸作蓑、而衰遂專爲等衰、衰絰字。衰絰本作縗。衰其假借字也。以艸爲雨衣、必層次編之、故引伸爲等衰。後世異其形、異其音。古義茫昧矣。从衣。象形。謂冄也。穌禾切。十七部。
古文衰。
康煕字典
- 部・劃數
- 衣部・四劃
- 古文
- 𠆂
- 𠌺
『唐韻』所危切『集韻』雙隹切、𠀤音䙑。小也、減也、殺也。『類篇』浸微也。『韻會』弱也、耗也。
又『集韻』初危切、音夂。『玉篇』等衰也。『齊語』相地而衰征、則民不移。
又『集韻』倉回切、音崔。『類篇』同縗、喪服也。『禮・喪服小記』斬衰括髮以麻、齊衰惡筓以終喪。
又邑名。『晉語』公子濟河、召令狐臼、衰、桑、泉皆降。《註》三者皆晉邑。
又『集韻』蓑本字。『說文』艸雨衣。秦謂之萆。『詩・小雅』何衰何笠。『石經』作蓑。
又『韻補』所類切、音帨。『東方朔・七諫』駑駿雜而不分兮、服疲牛而驂驥。年滔滔而日遠兮、壽冉冉而愈衰。
- 部・劃數
- 人部・十一劃
『集韻』衰、古作𠌺。註詳衣部四畫。
- 部・劃數
- 亠部・十三劃
『字彙補』古文衰字。『亢倉子・道政篇』𠆂末之世。餘詳衣部四畫。
音訓
- 音
- (1) スイ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・脂・衰』所追切〉[shuāi]{seoi1}
- (2) シ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・支・衰』楚危切〉[chuāi/cuī]{ceoi1}
- (3) サイ(漢) 〈『集韻』倉回切、音崔、平聲灰韻〉[cuī]{ceoi1}
- (4) サ 〈『説文解字』穌禾切、平聲戈韻〉{so1}
- 訓
- (1) おとろへる
- (2) そぐ
等衰は音(2)に讀み、等級の意。
藤堂は音(2)の官話發音を、古くはchuāi、今はcuīとする。
斬衰、齊衰、衰絰、衰麻など、音(3)に讀んで、縗と通じ、喪服を表す。
音(4)に讀んで、蓑に通ず。
解字
白川
『説文解字』に蓑の意とするが、冄は死葬のとき、衣に著ける呪飾で、衰は縗の初文。《糸部》に縗を喪服とする。
葬送のときには禮を減衰するので、また減少、衰微の意となる。
藤堂
衣と蓑の垂れたさまの會意。蓑のやうにしほたれたの意を含む。力無く小さく萎れること。蓑の原字。
漢字多功能字庫
金文は蓑に象る。衰は蓑の初文で、本義は蓑、雨衣。後に假借して衰弱、衰減の衰とする。小篆は意符として衣を加へる。『説文解字』は秦謂之萆。
といひ、萆を釋して雨衣、一曰衰衣。
とする。
金文では崔の通假字とし、姓氏に用ゐる。庚壺衰(崔)子
は、齊の靈公、莊公のときの崔杼を指す。
戰國竹簡ではあるいは意符に心を加へ、心智の衰弱を表す。《郭店簡・窮達以時》簡10を參照。
戰國竹簡での用法は以下のとほり。
- 衰減を表す。《郭店簡・窮達以時》簡9-10
子疋(胥)前多功、後翏(戮)死、非亓(其)智衰也。
は、伍子胥は以前多くの功を立て、後に殺されたが、その智が衰へたためではない、の意。 - 衰壞、敗壞(損なふこと)を表す。《上博竹書一・孔子詩論》簡8
〈雨亡(無)政〉、〈即(節)南山〉、皆言上之衰也、王公恥之。
は、〈雨無正〉、〈節南山〉の二つの詩はいづれも、上位にある者の德行が損はれることを述べてをり、王公は引用して恥ぢる、の意。 - 老衰を表す。《睡虎地秦簡・為吏之道》簡33壹
智能愚、壯能衰
は、智者は愚かになり、壯士は老衰する、の意。 - 粗麻でつくられた喪服を表す。《郭店簡・成之聞之》簡8
君衰絰而凥(處)立(位)
は、君主が粗麻でできた喪服を著け、その位に即くことをいふ。
屬性
- 衰
- U+8870
- JIS: 1-31-74
- 當用漢字・常用漢字
- 衰󠄁
- U+8870 U+E0101
- CID+13863
- 衰󠄄
- U+8870 U+E0104
- MJ058692
- 𠆂
- U+20182
- 𠌺
- U+2033A
関聯字
衰聲の字
- 榱
- 𤸬
- 縗
- 蓑
- 簑