糸 - 漢字私註
説文解字
細絲也。象束絲之形。凡糸之屬皆从糸。讀若覛。
- 十三・糸部
古文糸。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𢆯
『廣韻』莫狄切、音覓。『說文』細絲也。《徐鍇曰》一蠶所吐爲忽、十忽爲絲。糸、五忽也。
又『博雅』微也。『玉篇』幺也。
又『集韻』新兹切。絲或省作糸。
- 部・劃數
- 幺部(一劃)
『玉篇』𢆯、今文玄。註詳部首。
又『說文』古文糸字。註詳部首。
音訓
- 音
- ベキ(漢) ミャク(呉) 〈『廣韻・入聲・錫・覓』莫狄切〉[mì]{mik6}
- 訓
- ほそいと。かすか。
解字
白川
象形。絲束の形を象る。糸を縒り合はせたものが絲。
絲束を拗つたものを幼といふ。幼は絲に木を通して拗る形。絲を練り、染めるとき、汁をしぼるのに勒してしぼつた。幺の下邊に、左右に垂れる形が糸である。
『繫傳』に一蠶の吐く所を忽と爲す。十忽を絲と爲す。糸は五忽なり。
とあつて、絲の半分を糸といふ。
藤堂
象形。蠶の吐く細い原絲を描いたもの。
落合
甲骨文の段階では出現せず。
【補註】 落合は、漢字多功能字庫が糸に當てる字も、漢字多功能字庫が袋の兩端を束縛する形として束に當てる字も、同じく絲束の象形として束に當てる。當否は判斷不能。
漢字多功能字庫
束ねた絲の形を象り、上下の兩端に絲の端があるものもある。本義は細い絲。比較的早い時期の古文字では、糸と絲は同一の字で、後に二つの字に分化したといふ。甲骨文では糸と幺に區別はない。糸と束、橐は形が近く、容易に混淆する。(補註: 落合は漢字多功能字庫が糸の甲骨文として擧げるものも束に當てる。)
甲骨文では人名に用ゐる。《合集》21306乙卣比糸責、亡(無)𡆥(憂)
は、卣が責祭を進行する糸を輔助し、憂ふことがないことをいふ。
金文では族名に用ゐる。糸父壬爵糸父壬。
戰國の燕國の刀幣にまた糸字が見えるが、その義は不詳。
傳世文獻で本義の細い絲の意に用ゐるのが見えるが、原文は既に訛して系につくる。『管子・輕重丁』君以織籍、籍於系[糸]
は、君主は絹織物に徵税するなら、生絲に徵税すべきであるといふ。また、細絲の意から微小の意を派生する。『廣雅・釋詁四』糸、微也。
屬性
- 糸
- U+7CF8
- JIS: 1-27-69
- 𢆯
- U+221AF
関聯字
糸に從ふ字
漢字私註部別一覽・幺部・糸枝に蒐める。
其の他
- 絲
- 別字。絲を略して糸に作ることがある。