幼 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
康煕字典
- 部・劃數
- 幺部・二劃
- 古文
- 𠣎
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤伊謬切、憂去聲。〔音1〕『爾雅・釋言』幼、穉也。『釋名』幼、少也。言生日少也。『禮・曲禮』人生十年曰幼學。《疏》幼者、自始生至十九時。故檀弓云、幼名者、三月爲名稱幼。冠禮云、棄爾幼志、是十九以前爲幼。喪服傳云、子幼。鄭康成云、十五以下。今云、十年曰幼學、是十歲而就業也。
又慈幼也。『孟子』幼吾幼、以及人之幼。《註》幼、猶愛也。又王莽錢名。『前漢・食貨志』徑八分、重五銖曰幼錢、直二十。
又『集韻』乙六切、音郁。〔音3〕義同。
又『集韻』一笑切、音要。〔音2〕幼眇、精微也。『前漢・元帝紀贊』窮極幼眇。《註》幼、讀曰要。『司馬相如・長門賦』聲幼妙而復揚。
又與袎通。〔音4〕『集韻』袎或作幼。
- 部・劃數
- 幺部・二劃
『字彙補』與幼同。『皇甫君𥓓』𢆲挺雕龍之采。
- 部・劃數
- 勹部三劃
『玉篇』古文幼字。註見幺部二畫。
異體字
『五音集韻』所載。
音訓義
- 音
- イウ(漢)(呉) エウ(慣)⦅一⦆
- エウ(漢)(呉)⦅二⦆
- ヰク(推)⦅三⦆
- アウ(推)⦅四⦆
- 訓
- をさない⦅一⦆
- 官話
- yòu⦅一⦆
- yào⦅二⦆
- 粤語
- jau3⦅一⦆
- jiu3⦅二⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・幼・幼』伊謬切
- 『集韻・去聲下・幼第五十一・幼』伊謬切
- 『五音集韻・去聲卷第十二・宥第八・影四㓜』伊謬切
- 聲母
- 影(喉音・全清)
- 等呼
- 四
- 官話
- yòu
- 粤語
- jau3
- 日本語音
- イウ(漢)(呉)
- エウ(慣)
- 訓
- をさない
- 義
- 年少。未熟。幼少。幼稚。
- 小兒。幼兒。
- 釋
- 『廣韻』
幼: 少也。伊謬切。一。
- 『集韻』
幼: 伊謬切。『說文』少也。文四。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・去聲下・笑第三十五・要』一笑切
- 『五音集韻・去聲卷第十一・笑第十二・影四要』於笑切
- 聲母
- 影(喉音・全清)
- 等呼
- 四
- 官話
- yào: 藤堂に據る。
- 粤語
- jiu3
- 日本語音
- エウ(漢)(呉)
- 義
- か細い。細やか。
- 釋
- 『集韻』
幼: 幼眇、精微也。
- 『康煕字典』上揭。
- 補註
- 汉典は幼眇にyòu miǎoを示す。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・屋第一・㦽』乙六切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・影三郁』於六切
- 聲母
- 影(喉音・全清)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- ヰク(推)
- 義
- ⦅一⦆の異音。
- 釋
- 『集韻』
幼: 少也。
- 『康煕字典』上揭。
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・去聲下・效第三十六・靿』於教切
- 『五音集韻・去聲卷第十一・效第十三・影二靿』於教切
- 聲母
- 影(喉音・全清)
- 等呼
- 二
- 日本語音
- アウ(推)
- 義
- 袎に同じ。
- 釋
- 『集韻』
袎幼: 襪頸或省。
- 『康煕字典』上揭。
解字
白川
象形。絲枷に木を通して拗つてゐる形。拗の初文。幼少の意に用ゐるのは假借。
『説文解字』の釋は微力の意とするものであらうが、力はものを扐する意。
藤堂
力と音符幺の會意兼形聲。幺は細く小さい絲。幼は力の弱い小さい子。
落合
力と幺の會意。幺亦聲。耜の象形の力に絲束の象形の幺を附けた字。幼の推定上古音は影紐幽部、幺の上古音は幽部とする説と宵部とする説があり、亦聲か否かは不明。
字源には諸説あるが、甲骨文では祭祀名として使はれてをり、農耕儀禮の表現と推定される。
甲骨文での用例を次に示す。
- 《合補》11469・後半記時
癸巳卜泳貞、王旬亡禍。在六月、甲午、工典、其幼。
- 《屯南》2291
其戊幼盂田、叀豝用。
後代に「をさない」の意味となつたのは假借であらう。
東周代には子を意符、幽を聲符とする𫲪なども使はれてゐたが、後代には殘らず。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は幺と力に從ふ。力は土を掘り起こす農具(耒)の形に象る。幺は絹絲の形に象る。一説に耒の下に縛り繫いだ繩を象り、古代の耦耕(二人で耕すこと)の用具で、耕種のとき、一人は耒で土を耕し、一人は索を引くといふ(金文形義通解)。一説に本義は力量が微少なること、小さいの意を派生するといふ(馬敍倫)。
按ずるに造字本義に定論はない。金文は幺の中に力がある形。戰國中山國の幼字は子に從ひ幽聲で、三晉系の字である。
甲骨文では人名、祭名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 幼少、兒童を表す。禹鼎
勿遺壽幼
は、老人や幼兒に遺漏のないやうに、の意。 - 年少を表す。中山王鼎
寡人幼[立重]
、幼[立重]を讀んで「幼沖」となし、中山王が年幼いことを表す。- 『書・大誥』
洪惟我幼沖人
孔安國《傳》我幼童人
。 - 『書・盤庚下』
肆予沖人
孔穎達《疏》沖、童聲相近、皆是幼小之名。
- 『漢書.叙傳』
孝昭幼沖。
- 『後漢書・沖帝紀』李賢注
幼少在位曰沖。
- 『書・大誥』
屬性
- 幼
- U+5E7C
- JIS: 1-45-36
- 當用漢字・常用漢字
- 𢆲
- U+221B2
- 𠣎
- U+208CE
- 㓜
- U+34DC
関聯字
幼に從ふ字を漢字私註部別一覽・幺部・幼枝に蒐める。