六 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
『易』之數、侌變於六、正於八。此謂、六爲陰之變、八爲陰之正也。與下文言七九一例。八篆巳見《二篇》。故類言之。六爲陰之變、九爲陽之變。聖人以九六繫爻、而不以七八。金氏榜曰、乾鑿度謂七八爲彖、九六爲變、故彖占七八、爻占九六。一爻變者以變爻占。是爻占九六也。六爻皆不變及變兩爻以上者、占之彖辭。是彖占七八也。公子重耳筮得貞屯悔豫皆八。董因筮得泰之八。穆姜筮得艮之八。凡陰不變者爲八也。
从入八。會意。力竹切。三部。
凡六之屬皆从六。
康煕字典
- 部・劃數
- 八部・二劃
『唐韻』『集韻』『韻會』力竹切『正韻』盧谷切、𠀤音陸。『說文』易之數、隂變于六、正于八。『玉篇』數也。『增韻』三兩爲六、老隂數也。
又國名。『左傳・文五年』楚人滅六。『史記・黥布傳』布者、六人也。《註》索隱曰、地理志、廬江有六縣。蘇林曰、今爲六安也。
又叶錄直切、音近力。『前漢・西域敘傳』總統城郭、三十有六。修奉朝貢、各以其職。
音訓義
- 音
- ロク(呉) リク(漢)⦅一⦆
- 訓
- むつ⦅一⦆
- むたび⦅一⦆
- 官話
- liù⦅一⦆
- lù⦅一⦆
- 粤語
- luk6⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・屋・六』力竹切
- 『集韻・入聲上・屋第一・六』力竹切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・來三六』力竹切
- 聲母
- 來(半舌音・次濁)
- 等呼
- 三
- 官話
- liù
- lù
- 粤語
- luk6
- 日本語音
- ロク(呉)
- リク(漢)
- 訓
- むつ
- むたび
- 補註
- 現代官話では、數はliù、地名(昔の六縣、今の六安(zhwp)や六合(zhwp))など)はlùと讀むらしい。
解字
甲骨文は宀に近い形。
6の義は假借。
白川
象形。小さな幕舍の形に象る。坴、陸はその形に從ひ、陸は神の陟降する前にその幕舍を作り、これを迎へる意。
その音を假借して數の六に用ゐる。
『説文解字』に易の數理によつて説くが、卜文、金文の字形は幕舍の象。篆文の字形は戰國期末の竹簡に見えるが、字の初形ではない。
藤堂
象形。覆ひをした穴を描いたもの。
數詞の六に當てたのは假借。
一説に高い土盛りの形で、陸(高い丘)の異體字ともいふ。
落合
甲骨文は家屋の象形、特に屋根の部分を強調して示してゐる。
甲骨文では專ら假借の用法で數字として用ゐられてゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- むつつ。《殷墟花園莊東地甲骨》451
庚午、歳妣庚黑牡又六羊、子祝。
- 六番目。《合補》496
貞、于來乙酉、酒。六月。
- 六元示
- 殷初の祖先神である上甲、匚乙、匚丙、匚丁、示壬、示癸の六柱を指す。上甲六示や六示とも言ふ。《合集》14829
甲子卜爭貞、來乙亥、告[⿳匕凶十]其西于六元示。
- 六大示
- 恐らく大乙から中丁の直系王を指す。《屯南》1138
甲午貞、大禦自上甲六大示、燎六小[⿱冖羊]、卯九牛。
漢字多功能字庫
早期の甲骨文、金文では六と入は同じ形で、兩者は古く一字であつたと疑はれる。後に假借して數詞となし、故に拂ひを二筆加へて分化した(參・郭沫若、李孝定、丁山)。一説に、六は小屋の形に象り、廬の本字で、後に假借して數詞としたといふ(劉興隆)。裘錫圭は、原始社會で數を記すのに用ゐられた記號であるとする。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 數詞に用ゐ、基數を表す。《合集》32320
𤉲(燎)六羊。
- 序數を表す。《合集》7775
今六月王入于商。
金文での用義は次のとほり。
- 數詞に用ゐ、基數を表す。
- 坪安君鼎
六益半釿之冢(重)。
銘文中の「六𠂤」は、西周の時、宗周を中心とする王朝の軍隊を指し、西の地にあることから、「西六𠂤」とも稱し、傳世典籍では「六師」につくる。 - 禹鼎
王迺命西六𠂤(師)、殷八𠂤(師)
。
- 坪安君鼎
- 序數に用ゐる。亞魚鼎
才(在)六月、隹(唯)王七祀翌日
は、六月の、王の七度目の祭祀の翌日、の意。
戰國文字では數詞に用ゐる。
- 《上博竹書二・容成氏》簡30-31
質既受命、作為六類(律)六呂、辨為五音、以定男女之聖(聲)。
「六律六呂」は傳世文獻中の「十二律呂」のこと。 - 《清華簡二・繫年》簡34-35
立六年、秦公率𠂤(師)与(與)惠公戰于倝(韓)。
屬性
- 六
- U+516D
- JIS: 1-47-27
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
六に從ふ字
漢字私註部別一覽・六部に蒐める。
其の他
- 陸
- 大字。