入 - 漢字私註
説文解字
內也。象从上俱下也。凡入之屬皆从入。
- 五・入部
説文解字注
內也。自外而中也。象從上俱下也。上下者、外中之象。人汁切。七部。凡入之屬皆从入。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』人執切『集韻』『韻會』日汁切『正韻』日執切、𠀤任入聲。『說文』內也。『玉篇』進也。『禮・少儀』事君、量而後入。『檀弓』孟獻子𧝓比御而不入。《註》言雖比次婦人之當御者、猶不入寢也。
又『春秋・隱二年』莒人入向。『定六年』於越入吳。《傳》造其國都曰入、弗地曰入。《註》謂勝其國邑、不有其地也。入者、逆而不順、非王命而入人國也。
又『廣韻』納也、得也。
又『增韻』沒也。
又『楞嚴經』六入謂六塵、卽眼入色、耳入聲也。
又『敎坊記』每日常在天子左右爲長入。
音訓
- 音
- ニフ(呉) ジフ(漢) 〈『廣韻・入聲・緝・入』人執切〉[rù]{jap6}
- ジュ(慣)
- 訓
- いる。いれる。はひる。をさめる。
解字
白川
象形。室の入口の形に象る。これに屋形を加へたものは內。卜文、金文は、木を∧形に組んだ形で、出入口を示す。
國語では入内、入御の音がある。
藤堂
指示。↑型に中へ突き込んでいくことを示す。また、入口を描いた象形と考へてもよい。
內に音符として含まれる。
落合
象形。屋根や蓋の形を表してゐる。
多くの研究者が建物の入口の形とするが、殷代の用法を見ると、內では入口の形として用ゐられてゐるものの、會意字では屋根や蓋の象形である今と入れ替はることがあり、また家屋の象形の宀に替へて用ゐられる場合もある。從つて、建物の入口に限らず、屋根のやうな覆ふ構造の一般形とするのが妥當であらう。
屋根の形から轉じて建物の内部を表し、更に「はひる」の意となつた。
建物の入口の象形である丙の略體とする説もあるが、字の要素としては通用せず。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 屋内。屋根の下。《殷墟花園莊東地甲骨》355
乙巳、于入飲。用。
- はひる。都市や施設に入ること。特定の人物、集團の所へ行く意でも用ゐられる。《合補》2221
辛卯卜㱿貞、來辛丑、王入于商。
- いれる。納入する。送り屆ける。迎へ入れる。《合集》376・貢納記錄
畫入二。在高。
- 降雨や、厄災が起こること。《合集》29770
翌日戊、雨入。
- 入乙
- 祖先名。殷の先王ではない。《瑞典斯德哥爾摩遠東古物博物館所藏甲骨文字》1
乙巳卜爭貞、呼商酒伐于入乙。
- 入日
- 日の入り。沈む太陽。祭祀對象。日の出を表す出日と合はせて出入日とも。《懷特氏等所藏甲骨文集》1569
乙酉卜、侑出日入日。
六と同字とする説もあるが、六は家屋全體の象形で屋根を強調したものであり、會意字で入れ替はることはあるものの、字源としては誤り。
內から分化した字とする説もあるが、殷代の會意字では、內と入の通用が見られない。
漢字多功能字庫
内に進むことを示す指示符號。入と六は同じ形の字で、兩字の表す語義は別々だが書き方は同じ。入の古文字の字形を調べると、左右は對稱的で、左右の長短が揃つてゐない人字とは同じでない。戰國文字には縱劃の上に飾點を加へるものがある。曾侯乙墓楚簡簡208字形に見える。隸變の過程で、人字は左右對稱となり、入と人とを混同するやうになつた。二字を區別するために、入字は段々と今のやうに右拂ひが左拂ひに被さるやうな形となつた。
甲骨文の用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、進入を指す。
- 《合集》7840
乙卯入商。
- 《合集》39990
今夕王入商。
- 《合集》7840
- 貢納を指す。《合集》190反
雀入三十
は雀を三十貢納したことをいふ。 - 借りて地名に用ゐる。《合集》16348
才(在)入。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、進入を指す。宅𣪕
其萬年用卿(饗)王出入
は、萬年この𣪕を宴に用ゐ、王のために奔走する、の意。 - 特に王廷に進入することを指す。毛公鼎
𩁹之、庶出入事(吏)、于外尃(敷)命尃(敷)政。
出入は王廷に出入することを指す。全句で、過去、官吏は王廷に出入りし、外に在つて施政令を布く、の意。 - 用ゐて納となし、獻納を指す。頌鼎
頌拜稽首、受令冊佩以出、反入堇章。
「反入堇章」を郭沫若は「返納瑾璋」と讀み、周の世の王臣は王の冊命を受けた後、天子の有司に對して美玉を貢納し、報答としたことを指す。
戰國竹簡では多く內を入と讀む。《上博竹書一・性情論》簡10𦡊(體)丌(其)宜(義)而節取之、里(理)丌(其)情而出內(入)之。
は、彼の適當な擧動を觀察し、それを取るため(制御するため?)に節制を加へ、彼の情感を處理し、それを言葉に出すことで治めさせる、の意。
屬性
- 入
- U+5165
- JIS: 1-38-94
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
入に從ふ字を漢字私註部別一覽・入部に蒐める。