貝 - 漢字私註

説文解字

貝
海介蟲也。居陸名、在水名蜬。象形。古者貨貝而寶龜、周而有泉、至秦廢貝行錢。凡貝之屬皆从貝。博蓋切。
貝部

説文解字注

貝
海介蟲也。介蟲之生於海者。居陸名猋、在水名蜬。見『〔爾雅〕釋魚』。猋作贆、俗字也。蜬亦當作函。淺人加之偏傍耳。《虫部》曰、蜬、毛蠹也。註1則非貝名。象形。象其背穹隆而腹下岐。博葢切。十五部。古者貨貝而寶龜。謂以其介爲貨也。『〔詩〕小雅〔菁菁者莪〕』旣見君子、錫我百朋。《箋》云、古者貨貝、五貝爲朋。『周易』亦言、十朋之龜。故許以貝與龜類言之。『〔漢書〕食貨志』王莽貝貨五品。大貝、壯貝、幺貝、小貝皆二枚爲一朋。不成貝不得爲朋。『〔又〕』龜貨四品。元龜當大貝十朋。公龜當壯貝十朋。矦龜當幺貝十朋。子龜當小貝十朋。此自莽法。鄭箋『詩』云古者五貝爲朋。注『易』以『爾雅』之十龜。未嘗用歆、莽說也。周而有泉。周禮〔天官〕外府』掌邦布之入出。以共百物而待邦之用。『〔同・地官〕泉府』掌以市之征布。斂市之不售、貨之滯於民用者。《注》云、布、泉也。讀爲宣布之布。其藏曰泉、其行曰布。取名於水泉。其流行無不徧。泉始葢一品。周景王鑄大泉而有二品。按許謂周始有泉、而不廢貝也。至秦廢貝行錢。秦始廢貝專用錢。變泉言錢者、周曰泉、秦曰錢。在周秦爲古今字也。《金部》錢下鍇本云、一曰貨也。『〔禮記〕檀弓・注』曰、古者謂錢爲泉布、則知秦漢曰錢、周曰泉也。『周禮・泉府・注』云、鄭司農云、故書泉或作錢。葢周人或用假借字。秦乃以爲正字。凡貝之屬皆从貝。
註1
『説文解字』に蜬字は見えず、蜭字條に毛蠹也。とある。

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤博蓋切、音䟺。『埤雅』貝以其背用、故謂之貝。『說文』海介蟲也。古者貨貝而寶龜、周而有泉、至秦廢貝行錢。『爾雅・釋魚』貝居陸贆、在水者蜬、大者魧、小者𧐐。《註》大貝如車渠、細貝亦有紫色者。『又』餘貾黃白文。《註》黃爲質、白文爲點。『又』餘泉白黃文。《註》白爲質、黃爲文點、今紫貝也。『又』蚆博而頯。《註》頯者、中央廣兩頭銳。『又』蜠大而險。《註》險者、謂汙薄。《疏》此辨貝居陸、居水、大小文采不同之名也。『相貝經』朱仲受之於琴高、以遺會稽大守嚴助、其略曰、貝盈尺、狀如赤電黑雲曰紫貝、赤質紅章曰珠貝、靑地綠文曰綬貝、黑文黃畫曰霞貝。下此有浮貝、濯貝、皭貝、慧貝。又『山海經』隂山漁水中多文貝、邽山濛水多黃貝。『易・震卦』億喪貝。《註》貝、資貨糧用之屬也。『書・盤庚』具乃貝玉。《疏》貝者、水蟲。古人取其甲以爲貨、如今之用錢然。又『顧命』大貝。《傳》大貝如車渠。『史記・平準書』農工商交易之路通、而龜貝金錢刀布之幣興焉。《註》『食貸志』有十朋五貝、皆用爲貨、各有多少、兩貝爲朋、故直二百一十六。

又錦名。『書・禹貢』厥篚織貝。《疏》貝、錦名。『詩・小雅』萋兮斐兮、成是貝錦。

又樂器。『正字通』梵貝、大可容數斗、乃蠡之大者、南蠻吹以節樂。

又飾也。『詩・魯頌』貝胄朱綅。《傳》貝胄、貝飾也。《疏》貝甲有文章、故以爲飾。

又州名。『廣韻』周置貝州、以貝丘爲名。

又姓。『玉篇』貝氏、出淸河貝丘。【姓苑】古有賢者貝獨坐、唐有貝韜。

又『正韻』邦妹切、音背。義同。

又『集韻』古作貝。註詳攴部七畫。

音訓義

⦅一⦆

反切
廣韻・去聲』博蓋切
集韻・去聲上夳第十四』博蓋切
『五音集韻・去聲卷第十・泰第十二・幫・一貝』博蓋切
官話
bèi
粤語
bui3
日本語音
バイ(慣)
ハイ(呉、漢)
かひ

⦅二⦆

反切
集韻・去聲上・夬第十七・敗』簿邁切
を古く貝に作る。(『集韻』)

解字

白川

象形。子安貝の形。子安貝は古くは呪器とされ、また寶貝とされた。

金文の賜與に「貝三十朋」、「貝五十朋」のやうにいひ、『詩・ 小雅 ・菁菁者莪』に錫我百朋(我に百朋を錫ふ)の句がある。朋は前後兩系に貝を綴ぢたもので、金文にはこれを荷ふ圖象の銘識がある。またその十數朋を以て彝器の費用に充てることを記す銘文もあり、當時は甚だ貴重なものであつた。子安貝の原産地は沖繩であつたと考へられ、これを入手することはかなり困難であつたらしく、殷周期の裝飾品には、玉石を以てその形に模した物が多い。

のち財寶關係の字は、多く貝に從ふ。

藤堂

象形。割れ目のある子安貝、または二枚貝を描いたもの。

古代には貝を交易の貨幣に用ゐたので、貨、財、費などの字に貝印を含む。

落合

子安貝の貝殼の象形。

殷代には貝が貴重品とされたため、甲骨文では貝殼に關する字のほか、財貨に關する字の要素としても使はれてゐる。殷代に通貨の概念はなく、あくまで貴重品としての賜與、流通がされてゐた。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. かひ。子安貝などの貝殼。《合集》20576…勿克貝集南邦方。
  2. 祭祀名。貝を捧げる儀禮か。《輯佚》398戊寅卜貞、王貝㝏、叀其來艱。
貝朋
穴を開けた子安貝に紐を通して束にしたもの。當時の墓葬から出土してゐる。《合集》11438庚戌…貞、賜多女有貝朋。

漢字多功能字庫

甲骨文は貝殼の形を象る。古人は貝を以て貨幣となし、これにより、貝に從ふ字は財貨や賣買に關係がある。甲骨文は海貝の一種を象り、西周金文は下に二本短い縱劃を引き、字形の上方の角狀の部分が戰國期に段々と線になり、橫一劃となつた。按ずるに、郭沫若は古人は最初貝殼を頸飾に用ゐ、後に變化して貨幣となつたとする。

甲骨文での用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

戰國文字では本義に用ゐ、海貝を指す。

甲骨文の貝との二字は形が近い。金文の貝とも容易に混じる。

屬性

U+8C9D
JIS: 1-19-13
當用漢字・常用漢字

関聯字

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