敗 - 漢字私註
説文解字
毀也。从攴、貝。敗、賊皆从貝、會意。
- 三・攴部
籒文敗从賏。
康煕字典
- 部・劃數
- 攴部・七劃
- 古文
- 贁
- 貝
- 𤖐
『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤簿邁切、音浿。『說文』毀也。『爾雅・釋言』覆也。『釋名』潰也。又壞也。『玉篇』破也。『增韻』損也。又頹也。『易・需卦』敬愼不敗也。『書・大禹謨』反道敗德。
又『左傳・文十年司敗註』𨻰楚名司𡨥爲司敗。『論語』𨻰司敗問、昭公知禮乎。
又『爾雅・釋器』肉謂之敗。《註》臭壞。『論語』魚餒而肉敗。
又『廣韻』補邁切『集韻』北邁切『韻會』『正韻』布怪切、𠀤音拜。破他曰敗。『增韻』凡物不自敗而敗之、則北邁切。物自毀壞、則薄邁切。『詩・召南』勿翦勿敗。『音義』敗、必邁反。
又『左傳・莊十一年』凡師敵未𨻰曰敗、大崩曰敗績。『顏氏家訓』江南學士讀左傳、口相傳述、自爲凡例。軍自敗曰敗、打破人軍曰敗、讀補敗反、諸記傳未見補敗反。徐仙民讀左氏、唯一處有此音。又不言自敗敗人之別、此爲穿鑿耳。
又『韻補』叶蒲昧切。『荀子・賦篇』功立而身廢、事成而家敗。棄其耆老、收其後世。
- 部・劃數
- 攴部十四劃
『說文』籀文敗字。
- 部・劃數
- 爿部・十劃
『集韻』敗、古作𤖐。註詳攴部七畫。
- 部・劃數
- 貝部十一劃
『集韻』敗古作贁。註詳攴部七畫。
異體字
簡体字。
音訓
- 音
- ハイ(漢) 〈『廣韻・去聲・夬・敗』薄邁切、又北邁切〉〈『廣韻・去聲・夬・敗』補邁切〉
- 訓
- やぶる。やぶれる。まける。そこなふ。くづれる。くつがへす。ついえる。
解字
白川
貝と攴の會意。貝は寶とすべきもの。これを毆つて毀敗することをいふ。
説文解字に毀るなり
とし、籀文の字形を擧げる。籀文は二貝の形に從ふ。
則の金文は二鼎の形に從ふ。篆文で貝に從ふとする員、賊、貳などは、もと鼎に從ふ字。卜文には敗の字形を、寶貝を擊つ形と、また鼎の形に從ふものとがあるが、賊、貳は鼎銘を削つてその誓約を破棄する意であり、敗も聖器を毀敗して盟約を破棄する意であらう。それで敗德、敗軍、また敗俗、喪失の意に用ゐる。
成敗のやうに用ゐる成は、聖器としての戉(鉞)に呪飾の緌を加へて祝ふ意で、成敗はいづれも聖器を對象とする呪的な方法をいふ語。
藤堂
攴(動詞の記號)と音符貝の會意兼形聲。貝は、二つに割れた貝を描いた象形字。敗は、纏まつた物を二つに割ること、または二つに割れること。
落合
貝と攴の會意、貝亦聲。子安貝の貝殼を手に持つた棒で叩き壞す樣子。財貨の破壞から「そこなふ」を表し、更に後代に「やぶれる」の意を派生した。
鼎を壞す樣の形についても損害の意味で用ゐられる。
甲骨文では、そこなふこと、神が人に害を及ぼすことを表す。《合集》2274丙子卜賓貞、父乙異、惟敗王。
漢字多功能字庫
甲骨文は鼎と攴に從ひ、鼎を毀壞する意と解ける。鼎は古代の食物を盛る器で、多く祭祀に用ゐる。祭器を毀壞することは十分に重大なことである。本義は破壞、損毀、轉じて失敗(敗れる、負ける、失敗)の意。後に鼎に從はず貝に從ひ、棍棒の類を手にして貝を壞すさまと解ける。貝は亦た敗の聲符(何琳儀、張美玲)。古文字では鼎と貝は偏旁として常に混用される。金文は二貝に從ひ、上側の貝の形はあるいは下部の兩筆を省略されて目の形に作る。あるいは攴に從はず殳に從ふ。打撃、損毀の意は同じ。
甲骨文では本義に用ゐ、敗壞を表す。
- 《合集》17318
貞、亡(無)敗。
- 《合集》2274正
敗王
とは「害王」(饒宗頤)で、王に對し害有ることを表す。
金文では打敗(打ち負かすこと)を表す。
- 噩君啟車節
大司馬卲陽敗晉帀(師)於襄陵之歲
。 - 五年師[㫃史]簋
敬母(毋)敗𨒪(績)
は、虔敬(執事)は敗績(戰敗)することなかれの意。『尚書・湯誓』夏師敗績、湯遂從之。
陸宗達は、𨒪は迹の籀文で、「敗績」の「績」は本來「迹」に作り、道に從ひて行くことを迹といひ、車が道に從つて行くこと能はざることを敗績といふ。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 打敗を表す。
- 《清華簡二・繫年》簡19
大敗衛師於睘
。 - 《清華簡一・祭公》簡15
藍(監)于夏商之旣敗
。 - 《上博竹書四・曹沫之陳》簡46
三軍大敗
。
- 《清華簡二・繫年》簡19
- 失敗を表す。
- 《郭店竹簡・老子甲》簡11
是以聖人亡(無)為古(故)亡(無)敗
。
- 《郭店竹簡・老子甲》簡11
漢帛書でも失敗を表す。《馬王堆・老子乙本卷前古佚書》第3行或以敗、或以成
。
屬性
- 敗
- U+6557
- JIS: 1-39-52
- 當用漢字・常用漢字
- 𣀕
- U+23015
- 𤖐
- U+24590
- 贁
- U+8D01
- JIS X 0212: 63-32
- 败
- U+8D25