氏 - 漢字私註
説文解字
巴蜀山名岸脅之㫄箸欲落𡐦者曰氏、氏崩、聞數百里。象形、乁聲。凡氏之屬皆从氏。《楊雄・賦》響若氏隤。
- 十二・氏部
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』承旨切『集韻』『韻會』『正韻』上紙切、𠀤音是。氏族也。『白虎通』有氏者何、貴功德、下伎力、所以勉人爲善也。『左傳・隱八年』天子建德、因生以賜姓、胙之土而命之氏。諸侯以字爲諡、因以爲族。官有世功、則有官族、邑亦如之。《疏》釋例曰、別而稱之謂之氏、合而言之則爲族。『趙彥衞・雲麓漫抄』姓、氏後世不復別、但曰姓某氏、雖史筆亦然。按姓者、所以統系百世、使不別也。氏者、所以別子孫所自出。如周姓姬氏、所以別子孫、如魯衞毛耼邘晉應韓之分、若夫『易』云、黃帝堯舜氏作。堯舜雖非姓氏、旣是天子當一代、稱曰堯舜氏、義亦通。此又不拘姓氏之例。『柳芳・論氏族』氏於國則齊魯秦吳、氏於諡則文武成宣、氏於官則司馬司徒、氏於爵則王孫公孫、氏於字則孟孫叔孫、氏於居則東門北郭、氏於志則三馬五鹿、氏於事則巫乙匠陶。又古者貴有氏、賤無氏、故其詛辭有曰、墜命亡氏、言奪爵失國也。詛辭見『左傳・襄十一年』。
又婦人例稱氏。『儀禮・士昏禮』祝告婦之姓、曰某氏來歸。
又樂氏、津名、在鄭。『左傳・襄二十六年』涉於樂氏。
又元氏、猗氏、盧氏、尉氏、皆縣名。『廣輿記』元氏屬常山、今屬眞定府。猗氏屬河東、今屬平陽府。盧氏本漢縣、今屬河南府。尉氏本秦縣、今屬眞定府。
『師古・漢書註』凡地名稱某氏者、皆謂因之而立名。如尉氏、左氏、緱氏、禺氏之類。
又以氏名其物。『大戴記』蘭氏之根、櫰氏之苞。
又姓。『吳志』有氏儀、後改姓是。
又猛氏、獸名。『司馬相如・上林賦』鋋猛氏。『郭璞曰』今蜀中有獸、狀似熊而小、毛淺有光澤、名猛氏。
又『說文』巴蜀山名岸脅之旁著欲落墮者曰氏。氏崩、聞數百里。『揚雄・解嘲』響若氏隤。○按今『揚雄傳』作𨸝。『玉篇』亦云、巴蜀謂山岸欲墮曰氏、崩聲也。承紙切。又『元包經』剝屵氏。傳曰、山崩於地也。註、屵音蔡、氏音支。與『說文』『玉篇』義同而音異。
又『集韻』掌是切、音紙。姓也。義同上。
又『廣韻』『集韻』『韻會』章移切『正韻』旨而切、𠀤音支。月氏、西域國名、在大宛西。『史記・大宛傳』有大月氏、小月氏。亦作月支。
又閼氏、單于后名。『史記・韓王信傳』上乃使人厚遺閼氏。《註》閼音燕、氏音支。
又烏氏、縣名。『史記・酈商傳』破雍將軍烏氏。《註》烏音於然反、氏音支、縣名。屬安定。『前漢・地理志』作閼氏。又『史記・貨殖傳』烏氏倮。《註》韋昭曰、烏氏、縣名、倮、名也。索隱以烏氏爲姓、非是。
又『廣韻』子盈切『集韻』咨盈切、𠀤音精。狋氏、縣名。『前漢・地理志』代郡有狋氏縣。《註》孟康曰、狋音拳、氏音精。
亦作𠂩。『古今印史』𠂩、承旨切、族下所分也。古者姓統族、族統𠂩。適出繼位之餘、凡側出者皆曰𠂩。故爲文從側出以見意。
異體字
上揭。
音訓・用義
- 音
- (1) シ(漢) ジ(呉) 〈『廣韻・上聲・紙・是』承紙切〉[shì]{si6}
- (2) シ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・支・支』章移切〉[zhī]{zi1}
- 訓
- (1) うぢ
音(2)は月氏(國名)や閼氏(單于の后妃の稱號)などに用ゐる。
解字
白川
象形。小さな把手のある刀の形を象る。共餐のときに用ゐる肉切り用のナイフ。その共餐に與る者が氏族員であつたので、氏族の意となる。族は㫃(はたあし)と矢に從ひ、矢は誓約に用ゐ、氏族旗の下で誓約に加はる者の意。氏は祭祀、族は軍事、ともにその氏族儀禮に與る者をいふ。
氏の音は是と近く、段玉裁は是を氏の本字とするが、是は匙の象形字。先がスプーンの形。氏族共餐の儀禮としては、廟祭に長老が牲肉を頒つのを宰(廟屋の形と、牲肉を切る曲刀の形)といふやうに、共餐の肉を頒つ氏の方が相應しい。
氏の大なるものは厥、いはゆる剞厥(彫り物刀)の厥の初文で、これは彫刻などに用ゐる。
古代の氏族は、王朝との關係において、職能的に組織されることが多く、『周禮』の官制には保氏、媒氏、射鳥氏、方相氏のやうに、氏を官名とするものが多い。その古禮を傳承する氏族の名であらう。
藤堂
象形。先の鋭い匙を描いたもので、匙と同系。但し古くより傳遞の遞(次々と傳はる)に當て、代々と傳はつていく血統を表す。
漢字多功能字庫
郭沫若は、金文は匕(食物を掬ふ匙)と似てをり、氏の字音は匙と同じであるから、匙の初文であるとする。後に姓氏、氏族の氏を表す。
金文での用義は次のとほり。
- 姓の分枝を表す。𠫑氏鐘
𠫑氏之鐘
。 - 既婚婦人の呼稱に用ゐ、前にその姓を冠する。乎簋
乎乍(作)姞氏寶𣪕(簋)
。 - 官名の接尾辭。令鼎
師氏
、𤼈鐘尹氏
。 - 是の通假字。
- 中山王鼎
隹(唯)俌(傅)㑄氏(是)從
は、傅師や保姆に從ふの意。 - 中山王方壺
氏(是)以身蒙㚔(甲)冑、以誅不順。
介賓短語「是以」を用ゐて因果句に連接し、結果あるいは結論を表し、「以此」、「因此」に相當する。鎧を著けて國家に從はざるを征伐するの意。
- 中山王鼎
戰國竹簡では氏族を表す。
- 《清華簡二・繫年》簡14
飛𤯌(廉)東逃于商蓋氏
は、飛廉(紂王の家臣)は東に逃れ商の蓋氏のもとに至るの意。 - 《清華簡二・繫年》簡102
晉人且有范氏与(與)中行氏之禍、七歲不解甲。
古文字の氏と氒(厥)は形が近く混淆し、《清華簡一》で氒(厥)は全て誤つて氏と書かれてをり、《清華簡一・皇門》簡2-3以惠氏(氒/厥)辟
の氏は氒(厥)の誤字で、以て君主を輔助するの意。
屬性
- 氏
- U+6C0F
- JIS: 1-27-65
- 當用漢字・常用漢字
- 𠂩
- U+200A9
関聯字
氏に從ふ字
- 氒
- 氐