族 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
矢鏠也。今字用鏃、古字用族。《金部》曰、鏃者、利也。則不以爲矢族字矣。束之族族也。族族、聚皃。《毛傳》云、五十矢爲束。引伸爲凡族類之偁。
从㫃从矢。會意。
㫃所㠯標衆。衆矢之所集。此說从㫃之意。㫃所以標衆者、亦謂旌旗所以屬人耳目。旌旗所在而矢咸在焉。衆之意也。『韵會』『集韵』『類篇』皆引此。而衍「一曰从」三字。則不可解矣。昨木切。三部。
康煕字典
- 部・劃數
- 方部・七劃
- 古文
- 㞺
- 𥎩
- 𥎼
- 𥏁
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤昨木切、音鑿。『說文』矢鋒也。束之族族也。『類篇』一曰从㫃、㫃所以標衆矢之所集。又聚也。『書・堯典』以親九族。《註》高祖至玄孫之親。『詩・周南』振振公族。《傳》公族、公同祖也。『周禮・春官・小宗伯』掌三族之別、以辨親疏。《註》三族、謂父子孫、人屬之正名。『左傳・隱八年』無駭卒、羽父請諡與族。《疏》族者、屬也。與其子孫共相聯屬、其傍支別屬、則各自立氏。
又『書・堯典』方命圯族。《傳》族、類也。
又『書・泰誓』罪人以族。《傳》一人有罪、𠛬及父母妻子、言𠛬濫。
又『周禮・地官・大司徒』四閭爲族。《註》閭二十五家、族百家。
又『左傳・襄八年』謀之多族。《註》族、家也。
又『爾雅・釋詁』木族生爲灌。《註》族、叢生。《疏》木叢生者爲灌。
又『莊子・養生主』庖丁解牛、每至於族、吾見其難爲。《註》交錯聚結爲族。
又『集韻』作木切、音鏃。義同。
又千𠋫切、音凑。與蔟同。『前漢・律歷志』一曰黃鐘、二曰太族。『淮南子・泰族訓註』泰言古今之道、萬物之指、族於一理、明其所謂也。
又『集韻』『正韻』𠀤則𠋫切、音奏。樂變也。『前漢・嚴安傳』調五聲、使有節族。《註》蘇林曰、族音奏。師古曰、奏、進也。
又『集韻』『類篇』𠀤先奏切、音漱。嗾、或作族。使犬聲。
- 部・劃數
- 山部五劃
『玉篇』古文族字。註見方部七畫。
- 部・劃數
- 矢部四劃
- 部・劃數
- 矢部六劃
『集韻』族古作𥎼。註詳方部七畫。
- 部・劃數
- 矢部六劃
『字彙補』古文族字。註詳方部七畫。
音訓義
- 音
- ゾク(呉) ソク(漢)⦅一⦆
- ソウ(漢) ス(呉)⦅二⦆
- ソウ(推)⦅三⦆
- ソウ(推)⦅四⦆
- ソク(推)⦅五⦆
- 訓
- やから⦅一⦆
- ともがら⦅一⦆
- あつまる⦅一⦆
- 官話
- zú⦅一⦆
- còu⦅二⦆
- 粤語
- zuk6⦅一⦆
- cau3⦅二⦆
- zau3⦅三⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・屋・族』昨木切
- 『集韻・入聲上・屋第一・族』昨木切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・從切一族』昨木切
- 聲母
- 從(齒頭音・全濁)
- 等呼
- 一
- 官話
- zú
- 粤語
- zuk6
- 日本語音
- ゾク(呉)
- ソク(漢)
- 訓
- やから
- ともがら
- あつまる
- 義
- やから。身内。家族。親族。血族。氏族。
- 同種、同類の事物。
- 集まる。群がる。多い。
- 一族皆殺しの刑。族滅。族誅。またその刑を行ふ意。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・去聲下・𠊱第五十・湊』千𠊱切
- 『五音集韻・去聲卷第十二・候第九・清一輳』倉奏切
- 聲母
- 清(齒頭音・次濁)
- 等呼
- 一
- 官話
- còu: 專ら藤堂に據る。漢語資料に確認できず。
- 粤語
- cau3
- 日本語音
- ソウ(漢)
- ス(呉)
- 義
- 蔟に同じ。太族、あるいは太簇は、十二律(jawp)の一。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・去聲下・𠊱第五十・𡴝』則𠊱切
- 『五音集韻・去聲卷第十二・候第九・精一奏』則𠉀切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 粤語
- zau3
- 日本語音
- ソウ(推)
- 義
- 『集韻』
樂變也。『漢書』聲有節族。蘓林讀通作奏。
節族あるいは節奏は、音樂の調子、リズムの意。
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・去聲下・𠊱第五十・漱』先奏切
- 『五音集韻・去聲卷第十二・候第九・心一瘶』蘇奏切
- 聲母
- 心(齒頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- ソウ(推)
- 義
- 『集韻』
嗾、『說文』使犬聲。引『春秋傳』「公嗾夫獒」。
とし、あるいは族に作るとする。
⦅五⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・屋第一・鏃』作木切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・精切一鏃』作木切
- 聲母
- 精(齒頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- ソク(推)
- 義
- 『集韻』に鏃をあるいは族に作るとする。
解字
白川
㫃と矢の會意。㫃は氏族旗。矢は矢誓、誓約に用ゐるもの。氏族旗のもとで誓約する族人をいふ。
『説文解字』に、鏃を束ねる意で、族集のさまをいふとするが、鏃は後の形聲字で、族の初義ではない。族は矢誓の族盟に參加するもので、氏族軍、その構成者をいふ。
金文の《毛公鼎》(下揭)に乃の族を以ゐて、王の身を干吾(攼敔)せよ
とあり、軍を派遣するときには、《明公𣪘》唯れ王、明公に命じ、三族を遣はして東或(國)を伐たしむ
のやうにいふ。
また族集の意となる。
藤堂
㫃(旗)と矢の會意で、旗の下に矢を集めて置いたさま。同じものを集めてグループに纏めた意を含む。のち血族集團の意に專用された。
落合
甲骨文は、軍旗を表す㫃と矢の會意で、軍隊を意味する。異體字に矢を二つにしたものなどもある。
甲骨文では軍隊の意に用ゐる。
- 《合集》5728
叀族馬令、往。
- 《殷墟小屯中村南甲骨》239
戊申貞、王令郭以族⿸㫃尹、涉河東𰛗。
- 王族
- 王の軍隊。甲骨文では王の親族の意はない。
- 多子族
- 子は地方領主の稱號で、その軍隊の多數形。
- 三族
- 殷王の軍隊の全軍を指し、右、中、左の三部隊で構成される。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は㫃と矢に從ひ、衆を集める旗(㫃)と、敵を殺すのに用ゐる箭(矢)を象り、本義は氏族を基礎とする軍旅組織。古代の氏族は同時に軍事組織で、族字の構形は古代軍事の文化を保ち留める。族字が㫃と矢に從ふ意義は、西突厥の沙缽羅咥利失可汗が十部に箭を賜ひ、十箭と稱したり、清に八旗の制度があつたりした意義と同樣である。
甲骨文では本義に用ゐ、氏族を基礎とする軍事組織を表す。王族、子族、多子族、三族、五族など、多く軍旅と關係がある。
金文では本義に用ゐる。毛公鼎以乃族干(捍)吾(禦)王身
(訓讀上揭)は、汝の部族に周王を守らせる、の意。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐる。《上博竹書五・姑成家父》簡1
姑(苦)成家父以亓(其)族參(三)郤正(征)百豫。
は、苦成家父が彼の俗人の三郤に百豫を征伐させるの意。 - 宗族の語が見える。
- 《郭店簡・六德》簡29-30
為宗族瑟(失)朋友、不為朋友瑟(失)宗族。
- 《睡虎地秦簡・為吏之道》簡25伍
宗族昆弟
。
- 《郭店簡・六德》簡29-30
- 足の通假字とする。《郭店簡・語叢三》簡14
自視(示)丌(其)所不族(足)、嗌(益)。
は、自ら己の不足を示すことは、有益である、の意。
族は矢に從ひ、それで後に鏃を表すやうになつた。『説文解字』は族字の本義を鏃とするが、その實は族の後起の義である。鏃は多く金屬製であり、族字は多く部族、宗族を表すので、金を加へて鏃字をつくり、鏃を專門に表す。
屬性
- 族
- U+65CF
- JIS: 1-34-18
- 當用漢字・常用漢字
- 㞺
- U+37BA
- 𥎩
- U+253A9
- 𥎼
- U+253BC
- 𥏁
- U+253C1
関聯字
族聲の字
- 蔟
- 嗾
- 鏃
- 簇