畐 - 漢字私註
説文解字
滿也。从高省、象高厚之形。凡畗之屬皆从畗。讀若伏。芳逼切。
- 五・畗部
説文解字注
滿也。『方言〔六〕』「悀、偪、滿也。凡以器盛而滿謂之悀。《注》言涌出也。腹滿曰偪。《注》言勅偪也。」按『廣雅』「悀、愊、滿也」、本此。而『玉篇』云「腹滿謂之涌、腸滿謂之畐」、與今本方言異。玄應書畐塞注曰、普逼切、引『方言』「畐、滿也」。是則希馮、玄應所據『方言』皆作畐也。許書無偪逼字。大徐附逼於《辵部》。今乃知「逼仄」「逼迫」字當作畐。偪逼行而畐廢矣。『荀卿子〔賦〕』「充盈大宇而不窕、入卻穴而不偪」、『淮南・兵略訓』「入小而不偪、處大而不窕」凡云「不偪」者、皆謂不塞。『淮南・俶眞訓』「處小隘而不塞」、『要略訓』「置之尋常而不塞」、『氾論訓』「內之尋常而不塞」、『齊俗訓』「大則塞而不入、小則窕而不周」、偪與塞義同。畐偪正俗字也。『〔爾雅〕釋言』曰「逼、迫也」。本又作偪。二皆畐之俗字。
从高省。謂也。象高厚之形。謂也。
凡畐之屬皆从畐。讀若伏。芳逼切。按畐伏二字古音同在第一部。今音同房六切。
康煕字典
- 部・劃數
- 田部四劃
『廣韻』『集韻』𠀤房六切、音伏。〔音1〕『說文』滿也。从高省、象高厚之形。
又『集韻』芳六切、音蝮。〔音3〕又『廣韻』芳逼切『集韻』拍逼切、𠀤音堛。〔音2〕義𠀤同。
又『集韻』方六切、音福。〔音4〕與幅同。布帛廣也。
- 部・劃數
- 田部五劃
『集韻』答、古作畗。〔音5〕註詳竹部六畫。
又『五音集韻』古文福字。〔音4〕註詳示部九畫。
音訓義
- 音
- フク(漢) ブク(呉)⦅一⦆
- ヒョク(漢) ヒキ(呉)⦅二⦆
- フク(推)⦅三⦆
- フク(推)⦅四⦆
- タフ(漢) トフ(呉)⦅五⦆
- 訓
- みちる⦅一⦆⦅二⦆⦅三⦆
- 官話
- fú⦅一⦆
- bì⦅二⦆
- fú⦅四⦆
- dá⦅五⦆
- 粤語
- fuk6⦅一⦆
- fuk1⦅四⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・屋・伏』房六切
- 『集韻・入聲上・屋第一・伏』房六切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・奉切三伏』房六切
- 聲母
- 奉(輕脣音・全濁)
- 等呼
- 三
- 官話
- fú
- 粤語
- fuk6
- 日本語音
- フク(漢)
- ブク(呉)
- 訓
- みちる
- 義
- 容器の名。足の無い鬲。清・倪濤『六藝之一録・卷二百十四』
畐、無足鬲也。
- 釋
- 『廣韻』
畐: 滿也。
- 『集韻』
畗: 滿也。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・職・堛』芳逼切
- 『集韻・入聲下・職第二十四・堛』拍逼切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・職第六・滂三堛』芳逼切
- 聲母
- 滂(重脣音・次清)
- 等呼
- 三
- 官話
- bì
- 日本語音
- ヒョク(漢)
- ヒキ(呉)
- 訓
- みちる
- 釋
- 『廣韻』
畐: 道滿也。
- 『集韻』
畐偪: 『說文』「滿也。从髙省、象髙厚之形。」或作偪。
- 『五音集韻』
畐偪: 腸滿也。
- 『康煕字典』上揭。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・屋第一・蝮』芳六切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・敷切三蝮』芳福切
- 聲母
- 敷(輕脣音・次清)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- フク(推)
- 訓
- みちる
- 釋
- 『集韻』
畗: 滿也。
- 『康煕字典』上揭。
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・屋第一・福』方六切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・非切三福』方六切
- 聲母
- 非(輕脣音・全清)
- 等呼
- 三
- 官話
- fú
- 粤語
- fuk1
- 日本語音
- フク(推)
- 義
- 幅。布の幅。
- 福の古文。
- 釋
- 『集韻』
幅䋹畐: 『說文』布帛廣也。或作䋹、亦省。
- 『康煕字典』上揭(畐)、上揭(畗)。
⦅五⦆
- 反切
- 『集韻・入聲下・合第二十七・答』德合切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・合第九・端一答』都合切
- 聲母
- 端(舌頭音・全清)
- 等呼
- 一
- 官話
- dá
- 日本語音
- タフ(漢)
- トフ(呉)
- 義
- 答の古文。
- 釋
- 『集韻』
答畣畗: 德合切。當也。古作畣畗。通作荅。文十九。
解字
白川
象形。酒樽など下部に膨らみのある器の形。盈滿の意がある。
『説文解字』に滿つるなり。高の省に從ふ。高厚の形に象る。讀みて伏の若くす
とするが、字は建物の形ではなく、樽や壺など、器腹の膨らみのある器の形。脚のない鬲をいふとする説がある。
『方言・六』に悀、偪、滿也。凡以器盛而滿謂之悀腹滿曰偪。
(偪は滿つるなり。〜腹の滿つるを偪といふ。)とあり、畐聲の字にみなその意がある。
藤堂
畐
象形。一杯酒を詰めた德利狀の器を描いた字。
畗・畣
合の上部(蓋)と畐(德利)の略體の會意。蓋と身がぴつたり合ふさまを示す。もとは答の古文。
落合
注ぎ口のある酒樽の象形。示を加へた福と同じ。(補註: 落合は甲骨文の畐と福を同字の異體とする。)
畐や異體の畗は、今では「みちる」の字義であるが、單獨で使はれることは少なく、主に他字の聲符として見える。
畗を畣の異體とする説もあるが、字形、字音ともに違ひが大きく、明らかに別字。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、酒罈(補註: 罈は口が小さく腹の膨れた陶器)の形に象る。朱芳圃《殷周文字釋叢》字象長頸鼓腹圜底之器
。本義は酒器。
また福の初文。後に示を加へて福字をつくる。
甲骨文では祈願の詞に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 用ゐて福となす。士父鐘
降余魯多畐(福)亡(無)彊
。 - 族氏名に用ゐる。
小篆は畗につくる。
屬性
- 畐
- U+7550
- JIS: 2-81-27
- 畗
- U+7557
関聯字
畐に從ふ字を漢字私註部別一覽・畐部に蒐める。