自 - 漢字私註
説文解字
自部自字條
鼻也。象鼻形。凡自之屬皆从自。
- 四・自部
古文自。
説文解字注
鼻也。象鼻形。此以鼻訓自。而又曰象鼻形。《王部〔皇字條〕》曰、自讀若鼻、今俗以作始生子爲鼻子、是。然則許謂自與鼻義同音同。而用自爲鼻者絕少也。凡从自之字、如《尸部》㞒、臥息也。《言部》詯、膽气滿聲在人上也。亦皆於鼻息會意。今義從也、己也、自然也、皆引伸之義。疾二切。十五部。
古文自。
𪞶部𪞶字條
- 黑白の白は別字。
此亦自字也。省自者、詞言之气、从鼻出、與口相助也。凡白之屬皆从白。
- 四・𪞶部
説文解字注
此亦自字也。省自者。䛐言之气从鼻出。與口相助。䛐者、意内而言外也。言从口出、而气从鼻出。與口相助。故其字上从自省、下从口。而讀同自。疾二切。十五部。凡白之屬皆从白。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𦣹
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤疾二切、音字。『玉篇』由也。『集韻』從也。『易・需卦』自我致寇、敬愼不敗也。《疏》自、由也。『書・湯誥』王歸自克夏、至于亳。『詩・召南』退食自公、委蛇委蛇。《傳》自、從也。
又『玉篇』率也。
又『廣韻』用也。『書・臯陶謨』天秩有禮、自我五禮、有庸哉。《傳》自、用也。『詩・周頌』自彼成康、奄有四方、斤斤其明。《傳》自彼成康、用彼成安之道也。『古義』自彼者、近數昔日之辭。
又自然、無勉强也。『世說新語』絲不如竹、竹不如肉、漸近自然。
又『集韻』己也。『正韻』躬親也。『易・乾卦』天行健、君子以自彊不息。
又『五音集韻』古文鼻字。註詳部首。○按說文作鼻本字。
- 部・劃數
- 自部(零劃)
『玉篇』古文自字。註詳自。
異體字
説文解字の重文。古文。
或體。
音訓
- 音
- ジ(呉) シ(漢) 〈『廣韻・去聲・至・自』疾二切〉[zì]{zi6}
- 訓
- おのれ。みづから。おのづから。より。よる。したがふ。もちゐる。
解字
白川
卜辭に「〜自り〜に至る」の用法があり、「從り」と同義。
金文に「自ら寶𬯚彝を作る」のやうに自他の自の意に用ゐる。
『書・皋陶謨』に自我五禮
(我が五禮を自ゐる)とあり、その用義は、もと犧牲を用ゐるとき、その鼻血を用ゐたことからの引伸義であらう。『穀梁傳・僖十九年』に 用之者、叩其鼻以衈社也。
(之を用ゐるとは、其の鼻を叩きて、以て社に衈るなり。)と見える。
藤堂
象形。人の鼻を描いたもの。
「私が」といふとき、鼻を指差すので、自分の意に轉用された。
また出生の際、鼻を先に生まれ出るし、鼻は人體の最先端にあるので、起點を表す言葉となつた。
落合
鼻の象形。
甲骨文での用義は次のとほり。殆どが助辭または副詞の用法で、原義で使はれる例はごく僅か。
- 鼻。《合集》11506
貞、有疾自、惟有𧉘。
- 〜より。時間、空間などの起點を示す助辭。假借の用法。《合補》3536
甲午卜、自今至于丁、雨。
- みづから。自分で。《合補》2489
叀王自饗。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、人の鼻に象る。林義光、商承祚は、兩橫は鼻の上の腠理、皺を象り、鼻の初文、本義を鼻とする。後に、人が自己を指すとき、手指で己の鼻を指すことから、自己を表すのに用ゐるやうになつた。
甲骨文では、鼻の初文と、自己の自の、二つの言葉を表す(林澐)。後に二字を區別するのに、自の下に聲符の畀を加へて鼻字をつくり、鼻を表すやうになつた。徐灝『說文解字箋注』人之自謂或指其鼻、故有自己之稱。
甲骨文の底部の筆畫は不連續で、兩の鼻孔を象り、金文で初めて底部の筆畫が連なるやうになつた。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐて鼻を表す。《合集》11506正(上揭)は鼻に病があることを表す。
- 自己、自らの意を表す。《合集》24951
叀王自正(征)
は、商王が自ら出征することをいふ。 - 從(〜から)の意を表す。
- 《合集》24228
王步自商
は、王が商の地から出て行くことをいふ。 - 《合集》28188
自瀼至于膏
の瀼、膏はともに地名。
- 《合集》24228
金文での用義は次のとほり。
- 自己を表す。叔朕簠
自乍(作)薦𠤳(簠)
の簠は食器。自ら食物を進めるのに用ゐる簠を鑄造することをいふ。 - 從、由を表す。
- 令鼎
王歸自諆田
。 - 孟簋
易(賜)朕文考臣自厥工
は、毛公が彼の工奴の中から臣僕を賞賜として孟の父親に賜ふことを表す(裘錫圭)。
- 令鼎
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 自然而然(おのづから)の意を表す。
- 從、由を表す。
- 《郭店簡・性自命出》簡2-3
眚(性)自命出、命自天降
。 - 《上博竹書六・用曰》簡9
禍不降自天、亦不出自地。
- 《郭店簡・性自命出》簡2-3
- 鎮靜自如、毫不拘束(落ち著いてゐて思ひのまま、毫も拘束されず)の意。《上博竹書七・凡物流形甲本》簡18
冬(終)身自若
。
屬性
- 自
- U+81EA
- JIS: 1-28-11
- 當用漢字・常用漢字
- 𦣹
- U+268F9
- 𦣼
- U+268FC
- 𪞶
- U+2A7B6
関聯字
自に從ふ字を漢字私註部別一覽・自部に蒐める。