行 - 漢字私註
説文解字
人之步趨也。从彳从亍。凡行之屬皆从行。戶庚切。
- 二・行部
説文解字注
人之步趨也。步、行也。趨、走也。二者一徐一疾。皆謂之行。統言之也。『爾雅〔釋宮〕』室中謂之時、堂上謂之行、堂下謂之步、門外謂之趨、中庭謂之走、大路謂之奔。析言之也。引伸爲巡行、行列、行事、德行。从彳亍。彳、小步也。亍、步止也。戶庚切。古音在十部。凡行之屬皆从行。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』戸庚切『集韻』『韻會』『正韻』何庚切、𠀤音蘅。『說文』人之步趨也。『類篇』从彳从亍。『韻會』从彳、左步。从亍、右步也。左右步俱舉、而後爲行者也。『爾雅・釋宮』堂上謂之行、堂下謂之步。『釋名』行、伉也、伉足而前也。
又『廣韻』適也、往也、去也。
又『增韻』路也。『禮・月令』孟冬、其祀行。《註》行、在廟門外之西、爲軷壤、高二寸、廣五寸、輪四尺、設主軷上。
又道也。『晉語』下有直言、臣之行也。
又五行。『書・洪範』我聞在昔、鯀陻洪水、汨𨻰其五行。『韻會』五行、運于天地閒、未嘗停息、故名。
又行人、官名。『廣韻』周有大行之官。『論語』行人子羽修飾之。
又語也。『爾雅・釋詁』行、言也。《註》今江東通謂語爲行。
又歌行。『前漢・司馬相如傳』爲鼓一再行。『師古曰』行謂引、古樂府長歌行、短歌行、此其義也。
又『唐書・韓琬傳』器不行窳。『音義』不牢曰行、苦惡曰窳。
又『廣韻』下孟切、胻去聲。『玉篇』行、迹也。『周禮・地官・師氏』敏德以爲行本。《註》德行內外、在心爲德、施之爲行。
又姓。『後漢・光武紀』隗囂遣將行巡𡨥扶風。《註》行、姓。巡、名。漢行祐爲趙相。
又『集韻』寒岡切、音杭。『類篇』列也。『左傳・隱十一年』鄭伯使卒出豭、行出犬雞。《註》百人爲卒、二十五人爲行。行亦卒之行列。『吳語』吳王陳士卒百人以爲徹行百行。《註》以百人通爲一行、百行爲萬人、謂之方𨻰。
又中行、複姓。『通志・氏族略』中行氏、晉公族隰叔之後也、漢文時有宦者中行說。
又太行、山名。『書・禹貢』太行、恆山、至于碣石。《註》太行在河內山陽縣西。
又『廣韻』戸浪切、音笐。次第也。
又輩行也。『杜甫詩』豈如吾甥不流宕、丞相中郞丈人行。
又『韻會』行行、剛健貌。『論語』子路行行如也。
又『類篇』下朗切、音沆。義同。
又『韻補』叶先韻。『焦氏・易林』缺破不完、殘祭側偏。公孫幽遏、跛踦後行。
又『集韻』乎監切、音嗛。與銜同。
音訓・用義
- 音
- (1) カウ(漢) ギャウ(呉) アン(唐) 〈『廣韻・下平聲・庚・行』戸庚切〉[xíng]{hang4/haang4}
- (2) カウ(漢) ギャウ(呉) 〈『廣韻・去聲・映・行』下更切〉[xìng]{hang6}
- (3) カウ(漢) ギャウ(慣) ガウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・唐・航』胡郎切〉[háng]{hong4}
- (4) カウ(漢) ガウ(呉) 〈『廣韻・去聲・宕・吭』下浪切〉[hàng]{hong6}
- 訓
- (1) みち。ゆく。ゆくゆく。おこなふ。たび(旅行)。
- (2) おこなひ(修行)。ふるまひ(品行)。
- (3) ならび(行列)。
音(4)は輩行など、年齡、世代、仲間などの順序、序列を表すときに用ゐる。
行行を音(4)に讀み、剛健なるさまをいふ。
解字
白川
象形。十字路の形。交叉する道をいふ。卜文、金文の字形は、十字路の形に作る。
金文に先行、行道のやうに用ゐる。
呪力は道路で行ふことによつて、他の地に機能すると考へられ、術、衒など呪術に關する字に、行に從ふものが多い。
藤堂
象形。十字路を描いたもので、道、道を行く、動いて動作する(行ふ)などの意を表す。また、直線をなして進むことから、行列の意ともなる。
落合
象形。四辻の象形。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ゆく。進行する。道路の象形からの派生義。往行とも言ふ。《合補》1245
乙酉卜賓貞、呼、延復有行。十月。
- 地名またはその長。第二期(祖庚祖甲代)には貞人としても見える。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》412
貞、行弗其戴王使。
- 行用
- 軍事行動に關する語。詳細不明。《合集》26887
貞、非行用、⿻屮戈雉衆。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、四方八方に通ずる道路、今で言ふ十字路に象る。本義は道路。步き進むの意を派生する。行は古文字の偏旁となり、往々にして省略されて彳につくり、彳に從ふ字はみな行くことや道路と一定の關係を有す。
本義の道路から出發して、步き進むの意や、行列の意を派生する。步き進むの義から、流行、通行、施行、經歷、巡視、行爲などの義を派生する。行列の義から排行、行業(業種)の意を派生し、業種の義から商行(商店)、銀行の義を派生する。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 道路を表す。《屯南》2718
遘才(在)行
は、路上で遇ふの意。 - 步き進むの意。《乙》947
王不行自雀
は、王は雀の地から步き進まずの意。
金文での用義は次のとほり。
- 道路を表す。
- 曾伯簠
金導(道)錫行
は、金錫を入貢あるいは交易する路の意(郭沫若)。 - 史牆盤
宏魯卲(昭)王、廣笞楚刑(荊)、隹(唯)貫南行。
は、周の昭王が大擧して楚を攻め伐ち、南方から貫通し金屬を掠奪せんとする道路の意(裘錫圭)。
- 曾伯簠
- 步き進むこと、遠くへ行くことを表す。
- 曾伯簠
以征以行
。 - 陳公子弔邍父甗
用征用行
。 - 樊夫人龍嬴鬲
自乍(作)行鬲
は、旅に出るときに用ゐる鬲(食器)を鑄造するの意。
- 曾伯簠
- 行爲、品行を表す。
- 中山王鼎
侖(論)其惪(德)、眚(省)其行。
- [妾子]𧊒壺
惪(德)行盛𡉚(旺)
。
- 中山王鼎
- 施行、履行を表す。
- 中山王鼎
事少女(如)長、事愚女(如)智、此易言而難行焉。
- 新郪虎符
必會王符、乃敢行之。
- 中山王鼎
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 道路を表す。《上博竹書一・緇衣》簡21
『詩』員(云)、人之好我、示我周行
は、人(賓客達)は我に對してとても好く、我に公德大道を指し示すの意(參・季旭昇)。 - 實行、施行を表す。
- 《郭店簡・五行》簡22
不行不義
。 - 《上博竹書一・緇衣》簡16
可言不可行、君子弗言。可行不可言、君子弗行。
- 《上博竹書七・武王踐阼》簡6
毋行可𢘓(悔)
。
- 《郭店簡・五行》簡22
- 可行(實行し得る)を表す。《郭店簡・窮達以時》簡1-2
又(有)丌(其)人、亡(無)丌(其)殜(世)、唯(雖)臤(賢)弗行矣。
- 品行を表す。《上博竹書八・子道餓》簡2
攸(修)亓(其)惪(德)行
。
屬性
- 行
- U+884C
- JIS: 1-25-52
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
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