陸 - 漢字私註

説文解字

陸

高平地。从𨸏、坴亦聲。力竹切。

十四𨸏部
𠃈

籒文陸。

説文解字注

陸

高平地。〔爾雅〕釋地』、《毛傳》皆曰、高平曰陸。

从𨸏坴聲。《土部》下曰、土塊坴坴也。然則陸从坴者、謂其有土無石也。大徐作「从𨸏从坴、坴亦聲。」力竹切。三部。

𠃈

籒文陸。从古文𨸏省。从籒文𡵉不从者、从𨸏而土見矣。

康煕字典

部・劃數
阜部八劃
古文
𤱒

『唐韻』『廣韻』『集韻』『類篇』『韻會』𠀤力竹切、音六。『玉篇』厚也。『廣韻』高也。『爾雅・釋地』高平曰陸。『釋名』陸、漉也。水流漉而出也。『易・漸卦』鴻漸于陸。『詩・豳風』鴻飛遵陸。

又地名。『孟子』孟子之平陸。《註》齊下邑。

又藪名。『爾雅・釋地』晉有大陸。『左傳・定二年』魏獻子田於大陸。

又縣名。『隋書・地理志』趙郡大陸縣。

又州名。唐置。

又漢侯國、在壽光。見『史記・建元以來王子侯者年表』。

又𤰞陸、外國名。『前漢・西域傳』𤰞陸國王、治天山東乾當國。

又『玉篇』星也。『爾雅・釋天』北陸、虛也。西陸、昴也。《疏》陸、中也。北方之宿、虛爲中也。西方之宿、昴爲中也。『左傳・昭二年』古者日在北陸而藏冰、西陸朝覿而出之。《註》陸、道也。在北陸、謂夏十二月、日在虛危。在西陸、謂夏三月、日在昴畢。

又『玉篇』道也、無水路也。『周禮・冬官考工記』作車以行陸。『莊子・則陽篇』方且與世違、而心不屑與之俱、是陸沈者也。《註》人中隱者、譬之無水而沈也。

又『玉篇』陸離、猶參差也、雜亂也。『屈原・離騷』斑陸離其上下。

又魁陸、水族。『爾雅・釋魚』魁陸、卽今之蚶也。《疏》卽魁蛤也。一名魁陸。

又『揚雄・甘泉賦』飛蒙茸而走陸梁。《註》走者陸梁而跳也。

又姓。『廣韻』古天子陸終之後。『正字通』齊後有大陸氏、後因姓陸。又春秋陸渾之戎、後亦爲陸氏。

又『後漢・馬援傳』今更共陸陸。《註》猶碌碌也。

又『唐韻正』音溜。『隂符經』龍蛇起陸。叶上宿下覆。

又叶林直切。『郭璞・騊駼贊』騊駼野駿、產自北域。交頸相摩、分背翹陸。

『說文』籀文作𨽰。『集韻』作𨽫

部・劃數
阜部二十一劃

『說文』籀文字。『玉篇』作𨽫

部・劃數
田部五劃

『字彙補』古文字。註詳阜部八畫。

異體字

或體。

或體。

簡体字。

音訓義

ロク(呉) リク(漢)⦅一⦆
をか
くが
官話
⦅一⦆
粤語
luk6⦅一⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・入聲』力竹切
集韻・入聲上屋第一』力竹切
『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・來三六』力竹切
聲母
來(半舌音・次濁)
等呼
官話
粤語
luk6
日本語音
ロク(呉)
リク(漢)
をか
くが
水面より上に出た土地。をか。陸地。陸上。
補註
官話ではの大字に用ゐるときにはliùと讀む。

解字

早期の字形はに從ふ形ではなく、と二に從ふ形や二阜と圥に從ふ形。春秋以降の作例にを加へる形が見える。なほ、睦の金文とされる字形(《𠑇匜》西周晚期)も、坴に從ふ形ではなく、と三圥に從ふ。

白川

形聲。聲符は。坴は恐らく、神を迎へる幕舍の形。聖梯の前に幕舍を列ね、土主を置いて祀るところ。

左傳・昭四年』に、日が北陸にあるとき、冰を藏し、四月立夏、西陸にあるとき、冰を出す藏冰の儀禮のことを規定してをり、陸には日景を觀測する機能があるらしい。

籀文(𠃈)の字形は三𡴆に從ふ形。

藤堂

と音符の會意兼形聲。

坴は(ひろがる)と土の會意字で、土が高く積もつて擴がつたさま。(補註: 『学研漢和大辞典』陸字條は左のとほり。『同』坴字條の説明とは異なる。)

陸は、盛り上がつて連なるの意を含む。

落合

甲骨文は、丘の象形()と、二つの(建物の屋根を強調した形)に從ふ會意字。圥亦聲。丘と屋根を合はせて高所を表した字。圥はからの分化字に當たる。

甲骨文での用義は不明。《合集》36825甲子…在𦟀…⿰主尋…陸…亡災…十…。

後代には轉じて陸上の意でも用ゐられた。

東周代には阜と二つの六に從ふ形があり、更に下部にを加へた形が作られた。六を一つにした形(阜、六、土に從ふ形)もあり、その六を圥に戾した形が現用の陸に當たる。

現用の字形(陸)は聲の形聲の構造となつてゐるが、坴の字義は「土の塊」で、字源とは關聯しない。

漢字多功能字庫

甲骨文はと二に從ふ。早期金文は二阜と圥に從ふ。圥は聲符、阜は山稜に象る意符。本義は大きな土山、それより陸地の意を派生する。『楚辭・九嘆・憂苦』巡陸夷之曲衍兮、幽空虛以寂寞。王逸注大阜曰陸。は、山丘、平原、更にはくねり曲がる水澤の地を遊覽し、空虛寂寞の感に至る、の意。

春秋以後、あるいはを意符に加へ、あるいは圥に替へて二に從ひ聲符とする。小篆に至り簡化して阜と圥と土に從ふ。

甲骨文は辭殘、意義不詳。

金文での用義は次のとほり。

戰國竹簡では本義に用ゐ、土丘あるいは高く平らな地を表す。《上博竹書三・周易》簡50鴻漸于陸は、鴻雁(雁を指す)が土山に至るの意。

屬性

U+9678
JIS: 1-46-6
當用漢字・常用漢字
𨽰
U+28F70
𤱒
U+24C52
𠃈
U+200C8
𨽫
U+28F6B
U+9646

関聯字

陸を六の大字に用ゐる。