羽 - 漢字私註
説文解字
鳥長毛也。象形。凡羽之屬皆从羽。王矩切。
- 四・羽部
説文解字注
鳥長毛也。長毛、別於毛之細縟者。引伸爲五音之羽。『晉書・樂志〔上〕』云、羽、舒也。陽氣將復。萬物孳育而舒生。『漢〔律曆〕志〔上〕』曰、羽、宇也、物聚臧宇覆之。『爾雅〔釋樂〕』羽謂之桺。象形。長毛必有耦、故竝。《𠘧部》曰、<𠘱篆文>新生羽而飛也。、竝<𠘱篆文>也。王矩切。五部。凡羽之屬皆从羽。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤王矩切、音禹。『說文』鳥長毛也。『廣韻』鳥翅也。『易・漸卦』其羽可用爲儀。『書・禹貢』齒革羽毛。《傳》羽、鳥羽。『周禮・天官・庖人』冬行鱻羽。《註》羽、鴈也。又『地官・司徒』宜羽物。《註》翟雉之屬。『禮・月令』其蟲羽。《註》象物从風鼓葉、飛鳥之屬。
又五聲之一。『周禮・春官・大師』皆文之以五聲、宮商角徵羽。又『大司樂』凡樂、圜鐘爲宮、黃鐘爲角、大簇爲徵、姑洗爲羽。《註》凡五聲、宮之所生、濁者爲角、淸者爲徵羽。『禮・月令』其音羽。《註》羽數四十八、屬水者、以爲最淸物之象也。又『樂記』宮爲君、商爲臣、角爲民、徵爲事、羽爲物。『前漢・律歷志』羽、宇也、物聚臧宇覆之也。
又舞者所執也。『書・大禹謨』舞幹羽於兩階。《傳》羽、翳也、舞者所執。『周禮・地官・舞師』敎羽舞。《註》羽、析白羽爲之、形如帗也。『左傳・隱五年』初獻六羽。公問羽數于衆、仲對曰:天子用八、諸侯六、大夫四。
又山名。『書・舜典』殛鯀於羽山。《傳》羽山、東裔在海中。又『禹貢』蒙羽其藝。《疏》羽山、在東海祝其縣南。『史記・五帝紀註』羽山、在沂州臨沂縣界。
又星名。『史記・天官書』其南有衆星、曰羽林天軍。《註》羽林三十五星、三三而聚散、在壘辟南、天軍也。
又官名。『前漢・百官志』期門羽林。《註》師古曰、羽林、亦宿衛之官、言其如羽之疾、如林之多也。一說羽、所以爲王者羽翼也。
又姓。『左傳・襄三十年』羽頡出奔晉。又『山海經』羽民國、其人長項、身生羽。
又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤王遇切、音雩。義同。
又『集韻』『類篇』𠀤後五切、音戸。緩也。『周禮・冬官考工記・矢人』五分其長、而羽其一。
音訓
- 音
- ウ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・麌・羽』王矩切〉[yǔ]{jyu5}
- 訓
- は。はね。たすけ(羽翼)。
解字
白川
象形。鳥の羽の形に象る。
『説文解字』に鳥の長毛なり
とし、𠘧を短羽の象とする。
藤堂
象形。二枚の羽を竝べたもので、鳥の身體に覆ひ被さる羽。
落合
象形。鳥の羽毛を象形字にしたもの。鳥の翼とする説もあるが、雪の形容としても使はれてゐるので、羽毛と考へる方が良い。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 祭祀名。《合集》698
丙戌卜、羽尊于宗。
- 地名またはその長。《合補》1845
辛丑卜賓貞、叀羽令、以戈人、伐𢀛方、⿻屮戈。十三月。
漢字多功能字庫
【補註】 漢字多功能字庫は、落合が羽の甲骨文とする字を、彗の甲骨文とする。
金文、簡帛文字、小篆は二本の小鳥の羽毛の形に象り、本義は鳥類の長い羽毛。羽字は羽毛一本ごとに三劃を畫き出し、三條の毛を象る。三を以て多數を代表してをり、又(手の形を象る)が三叉で手の五指を象るに類似してゐる。張舜徽《說文解字約注》象鳥長毛、小篆屈曲其體而猶存其三畫、亦猶手之列多、略不過三之意。
戰國竹簡では本義に用ゐる。
- 《上博竹書四・采風曲目》簡4
鴼(鷺)羽之白也
は、鷺の羽の白いことをいふ。 - 《上博竹書八・鶹鷅》簡1
婁(鶹)栗(鷅)之羽
は、鶹鷅の羽を指す。鶹鷅は鳥の名で、あるいは鶹離、流離、留離にもつくり、梟(貓頭鷹)の別名で、幼いときは美しく、長じた後は醜陋となり、且つ己の母親を食べ、故に「不孝鳥」と呼ばれる。『詩・邶風・旄丘』毛亨傳流離、少好長醜。
孔穎達疏陸機云、『流離,梟也。自關之西謂梟為流離。其子適長大,還食其母。故張奐云「鶹鷅食母」,許慎云「梟,不孝鳥」是也。』
- 《睡虎地秦簡・為吏之道》簡26叄
金錢羽旄
。金銭は金錢豹(豹)の尻尾を指し、羽は鳥の長い羽毛のことで、多く孔雀の長い羽毛を指し、旄は旄牛(ヤク)の尾を指す。豹の尾、孔雀の羽、ヤクの尾は古く車や馬の裝飾に用ゐられた。
漢帛書では借りて翼を指す。《馬王堆漢帛書・老子甲本卷後古佚書・五行》第185-186行『嬰嬰(燕燕)于蜚(飛)、差池其羽。之子于歸、袁(遠)送于野。瞻望弗及,汲(泣)沸(涕)如雨。』能差池其羽然[後能]至袁(遠)。
ここで引用する『詩・邶風・燕燕』は「雙雙共飛的燕子、它們的翅膀參差交錯。現在你要出嫁他國、我遠遠地送你到郊野、等到看不見你的身影的時候、我的眼淚像下雨似的落下。」の意。翼は互ひに交錯することが可能で(調和が取れ融合するさまの形容)、遠方に到達することができる。
鳥類の身體にあるのを羽、野獸にあるのを毛、龍蛇にあるのを鱗と稱する。『周禮』臝者、羽者、鱗者
鄭玄注臝者、謂虎、豹、貔、螭爲獸淺毛者之屬。羽、鳥屬。鱗、龍蛇之屬。
臝は毛の短い獸類を表す。『韓非子・解老』人無毛羽、不衣則不犯寒。
は、人の身體には長い獸毛や鳥の羽は生えてをらず、衣服を著なければ寒冷に勝つことはできない、の意(張覺)。
金文では人名に用ゐる。徐王之子羽戈䣄(徐)王之子羽元用戈
は、徐王の子の羽の專用する戈の意。徐國の君に羽といふ名の子がをり、章羽のこと。『春秋・昭公三十年』吳滅徐、徐子章羽奔楚。
成語「羽扇綸巾」は羽の著いた扇子を持ち、青い絹の頭巾を著けることを表し、從容たる態度の形容。蘇軾〈念奴嬌〉遙想公瑾當年、小喬初嫁了、雄姿英發。羽扇綸巾、談笑間、強虜灰飛煙滅。
は周瑜が壯年の頃意氣軒昂で、強暴な敵人を從容と撃退したことを形容する。また「羽翼已成」は、力になる助けがあり、勢力が既に鞏固なことを比喩する。『史記・留侯世家』彼四人輔之、羽翼已成。
羽は五聲音階の第五音、「宮商角徵羽」の羽を表す。第五音は五音の中で最も高い音で、音調は高揚して伸び擴がり、まるで翅を擴げて高く飛ぶやうである。段注引伸爲五音之羽、『晉書・樂志』云『羽、舒也。陽氣將復、萬物孳育而舒生。』
楚系金文では于聲を加へた𦏴を音律名の羽に用ゐる。曾侯乙編鐘に見える。
羽は現在、比較的珍しい姓氏で、廣東の新會、四川の合江、山西の太原、陽泉、朔州、山東の平邑などに分布する。春秋の鄭の子羽の後代と傳はる。『通志・氏族略』鄭樵注云姬姓、鄭子羽之後也。
宋代鄧名世『古今姓氏書辯證』羽、出自姬姓、鄭穆公之子揮、字子羽、其孫頡、爲馬師、以王父字爲氏。
屬性
- 羽
- U+7FBD
- JIS: 1-17-9
- 當用漢字・常用漢字
- 羽
- U+FA1E (CJK互換漢字)
- 羽︀
- U+7FBD U+FE00
- CJK COMPATIBILITY IDEOGRAPH-FA1E
- 羽󠄀
- U+7FBD U+E0100
- CID+8599
- 羽󠄃
- U+7FBD U+E0103
- IB2730
- MJ030216
- 羽󠄄
- U+7FBD U+E0104
- KS319620
- MJ058352
関聯字
羽に從ふ字を漢字私註部別一覽・羽部に蒐める。