彗 - 漢字私註
説文解字
掃竹也。从又持甡。祥歲切。
- 三・又部
彗或从竹。
古文彗从竹从習。
説文解字注
埽竹也。从又持。甡、衆生竝立之皃。從甡者、取排比之意。祥嵗切。十五部。
彗或从竹。凡帚、柔者用茢、施於淨處。剛者用竹、施於薉處。
古文彗从竹習。葢七部十五部合韵。
康煕字典
- 部・劃數
- 彐部・八劃
『唐韻』祥歲切、音篲。『說文』掃竹也。从又持甡。『廣韻』帚也。『禮・曲禮』國中以策彗卹勿驅、塵不出軌。
又草名。『爾雅・釋草』葥、王彗。《註》王帚也。似藜、其樹可以爲掃篲。
又『廣韻』妖星。『爾雅・釋天』彗星爲攙搶。《註》亦謂之孛。言其形孛孛如掃彗。『前漢・文帝紀・有長星出于東方・註』文穎曰、孛彗長三星、其形象小異、孛星光芒短、其光四出、蓬蓬孛孛也。彗星光芒長、參參如埽篲。長星光芒有一直指、或竟天、或十丈、或三丈二丈、無常也。
又『廣韻』『集韻』『正韻』𠀤徐醉切、音遂。又『集韻』雖遂切、音祟。義𠀤同。
又『類篇』須銳切、音歲。日中暴明也。『太公・兵法』日中不彗、是謂失時。
又『廣韻』于劌切、音衞。義同。
又與慧通。『史記・淮南王安傳』淮南王有女陵、彗有口辨。
- 部・劃數
- 竹部・十一劃
- 古文
- 𥱵
『唐韻』『廣韻』祥歲切『集韻』『類篇』旋芮切、𠀤音槥。『說文』掃竹也、本作彗。『爾雅・釋草』葥、王蔧。亦从艹。『竹譜』篲、篠竹、中掃箒細竹也。大者如箭、長者至丈許、根杪條等下節生、惟高隂動有町畝。又篲條蒼蒼、接可連篁、惟不𤰞植、必也巖岡。踰矢稱大、出尋爲長。物各有用、掃之最良。『史記・高祖紀』六年、高祖朝、太公擁篲。《註》篲、帚也。
又『集韻』兪芮切、音睿。『莊子・達生篇』操拔篲以侍門庭。郭象讀。
又以醉切、音𧸽。同篱。徐邈讀。
又雖遂切、音邃。義同。一曰星名。『篇海』妖星也。
又『集韻』『正韻』𠀤徐醉切、音遂。又『集韻』蘇骨切、音窣。義𠀤同。
又『爾雅・釋詁』篲、勤也。
- 部・劃數
- 竹部・十一劃
『集韻』篲、古作𥱵。註詳本畫。
又『廣韻』似入切『集韻』席入切、𠀤音習。簷𥱵、修船具。
音訓
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・至・遂』徐醉切
- 官話
- suì
- 日本語音
- スイ(漢)
- 訓
- ははき
- はく
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・祭・衞』于歲切
- 義
- 日に晒すこと。『廣韻』
日中必彗。
⦅三⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・祭・篲』祥歳切
- 日本語音
- セイ(漢)
- 訓
- ははき
- はく
現代音
- 官話
- huì
- suì
- 粤語
- seoi6
- wai6
いづれの系統か(あるいは合流したものか)不詳。
漢語資料を見る限り、官話はhuìが主。粤語もwai6が優勢か。
解字
白川
會意。手に帚を持つ形。
『説文解字』に掃竹なり
とし、重文として箒(補註: ママ)を錄する。
卜文に兩帚を奉ずる形の字があり、祼鬯して廟中を祓ふのに用ゐる。
また彗星をいひ、『左傳・昭十七年』に彗所以除舊布新也
(彗は舊を除き新を布く所以なり)といふ。
古文に𥱵に作り、習は摺の意をとるものであらう。
藤堂
會意。細い穗や竹枝を揃へて⺕(手)で持つさまを示したもの。細かい意を含む。
漢字多功能字庫
甲骨文は箒の形に象り、彗の初文。本義は箒。引伸して掃除の意。彗はまた篲、𥱵に作る。
【補註】漢字多功能字庫が彗の甲骨文として擧げる字を、落合は羽の甲骨文として擧げる。
彗星は長い尾を有し、帚に似た形であることから、彗星をまた「掃帚星」、「掃把星」(掃帚も掃把も箒の意)と呼ぶ。古人は一般的に彗星を凶星としたので、俗語「掃把星」は輕蔑の語で、單に己が不幸なだけではなく、周りの人をも不幸にする人を形容する。
- 『一切經音義』卷二引『爾雅』孫炎注
慧、妖星也。
- 『春秋公羊傳・文公十四年』
記異也。
何休注篲者、掃故置新之象也。
- 『新序・雜事四』
天之有彗、以除穢也。
彗星をまた「孛」(孛星)、「茀」(茀星)と稱する。
- 『穀梁傳・文公十四年』
秋、七月、有星孛入于北斗、孛之為言猶茀也。
- 『史記・天官書』
星茀于河戍。
司馬貞索隱茀、即孛星也。
甲骨文では人名、地名を除く外、除去の義を表す。《合集》13613王疾首、中日彗
は、商王は頭痛がするも、正午に除かれ癒えるの意(楊樹達)。
漢帛書では彗星を表す。《馬王堆漢帛書・五十二病方》第52-53行所載治嬰兒瘈方云祝之曰、噴者劇噴、上……如彗星、下如䏽(衃)血
。
古人は箒を用ゐて疾病を掃ふ習俗を有した。《馬王堆漢帛書・五十二病方》第104行所載治疣方云以月晦日之丘井有水者、以敝帚騷(掃)尤(疣)二七、祝曰、今日月晦、騷(掃)尤(疣)北。入帚井中。
「疣」(いぼ)は皮膚病の一種。「晦日」は陰暦の月末日、夜通し月明かりがなく、不吉で(不吉でなく?)、病魔を治すのに好い時機。疣を生じた後、陰暦月末に到り、空井戸に水が滿ちるときを待つて井戸のそばに行き、古い箒を用ゐて疣を十四度掃ひ、掃ふときに祝告して「今日は晦日、疣を掃ふ、疣は必ず敗れ逃れる」と言ひ、疣を掃つた後、直ちに箒を井戸の中に投げ棄てる、といふのが大意(參: 嚴健民)。唐・孫思邈『千金要方』卷二十三去疣方にまた以秃條帚掃三七遍
の方法がある。彗を箒の義から引伸して病愈の義となす證左となる(參: 裘錫圭)。
屬性
- 彗
- U+5F57
- JIS: 1-55-34
- 人名用漢字
- 篲
- U+7BF2
- JIS X 0212: 50-52
- 𥱵
- U+25C75
關聯字
彗に從ふ字を漢字私註部別一覽・帚部・彗枝に蒐める。