龢 - 漢字私註
説文解字
- 龢
調也。从龠禾聲。讀與和同。
- 二・龠部
康煕字典
- 部・劃數
- 龠部五劃
『唐韻』戸戈切『集韻』『韻會』胡戈切。𠀤同和。『說文』調也。『廣韻』諧也、合也。『左傳・襄十一年』如樂之龢。『前漢・敘傳』欥中龢爲庶幾兮、顏與冉又不再。《註》龢、古和字。
又晉邑名。『晉語』范宣子與龢大夫爭田。
又殿名。『張衡・東京賦』前殿靈臺、龢驩安福。《註》龢驩、殿名。
又鍾名。『六一題跋古器銘』寶龢、鍾也。
又人名。庾龢。見『晉書』。
音訓
- 音
- ワ(呉) クヮ(漢) 〈『廣韻・下平聲・戈・和』戸戈切〉〉
- 訓
- ととのふ。やはらぐ。
解字
白川
『説文解字』に調ふなり
とし讀みて和と同じうす
といふ。『一切經音義・六』に引いて音樂和調するなり
に作り、樂音の調和することをいふ字。和は軍門で和議を講ずること。兩者は字源を異にするが、通用することが多い。
龢が禾聲に從ふのは、農耕に關する儀禮に、籥(笛)を用ゐることがあるからであらう。
金文に𪟣字があり、これも籥と力(耒の象形)とに從ふ。《大克鼎》に克を王の服に𪟣はしむ
、《士父鐘》に永命に𪟣はしむ
のやうに用ゐる。龢、𪟣が禾、力に從ふのは、農事が陰陽律呂にかなふことが重要視されたからで、のち戰國期の鄒衍は、陰陽五行を以て律呂を按じ、寒冷の北地にも農耕を可能にしたと傳へられる。
漢字多功能字庫
甲骨文は禾と龠の省に從ふ。禾は聲符。龠は管で出來た樂器を象る。徐中舒は、龠の音は須く調ふべきであり、故に調和の義を派生する、と釋す。金文には龠の頂きの亼形を省く形もある。
甲骨文では祭名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 和睦を表す。秦公鎛
協龢萬民
。 - 調ふことを表す。秦公鐘
乍(作)厥龢鐘
の龢鐘は音が調ひ優美な樂鐘を指す。
屬性
- 龢
- U+9FA2
- JIS: 1-94-89