災 - 漢字私註

説文解字

火部烖字條

烖
天火曰烖。从𢦏聲。
火部
灾
或从、火。
𤆎
古文从才。
段注に形聲。といふ。則ち才聲。
災
籒文从𡿧。
段注に亦會意。亦形聲。といふ。

川部𡿧字條

𡿧
害也。从。『春秋傳』曰、川雝爲澤、凶。
十一川部

康煕字典

部・劃數
火部・三劃
古文
𤆎
𦸜

『唐韻』祖才切『集韻』『韻會』『正韻』將來切、𠀤音哉。『說文』天火也。『春秋・桓十四年』御廩災。

又『玉篇』害也。『書・舜典』眚災肆赦。《傳》過而有害當緩赦之。『左傳・僖十三年』天災流行國家代有救災恤鄰道也。

又作菑。『詩・大雅』無菑無害。

亦作甾。『史記・秦始皇紀』甾害絕息。

又叶子之切。『史記・龜筴傳』十有二月日至爲期、聖人徹焉、身乃無災。

又叶將侯切。『班固・幽通賦』震鱗漦于夏庭兮、帀三正而滅周。巽羽化于宣宮兮、彌五辟而成災。

『說文』本作。或作。籀文作災

部・劃數
火部・三劃

『說文』古文字。註見災。

偏はではなく、聲符の才。

部・劃數
火部・三劃

『說文』同

部・劃數
火部四劃

『說文』籀文字。

部・劃數
火部六劃

『集韻』本字。詳災字註。『禮・中庸』烖及其身者也。

又『詩・大雅』不烖我躬。《箋》烖、謂見誅伐。

又『爾雅・釋詁』烖、危也。

『說文』本作𤈮。从火𢦒。

部・劃數
火部七劃

『說文』本字。詳烖字註。

部・劃數
巛部(一劃)

『唐韻』本字。『說文』𡿧、害也。从一雝川。【春秋傳】曰、川雝爲澤凶。『玉篇』今通作災。詳見火部災字註。

異體字

或體。

音訓

サイ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・咍・烖』祖才切〉
わざわひ

解字

白川

𡿧

の會意。水流の形と、一とに從ふ。

卜文は水の橫流する形で水災を示し、また才の初形を聲符として加へることがある。才はのち烖の字形の𢦏の十の字形として殘されてゐる。

説文解字にそこなふなりと訓じ、一は水をふさぐ形であるとする。

災の初文とされるが、災は火災。水災の字を火災にも及ぼしたもので、災はまた烖、灾に作る。

卜辭に「往來𡿧わざわきか」と卜する例が多く、道路の往來について用ゐる。

のち災禍一般をいふ。

の會意。巛はもと𡿧に作り、水が壅がれて橫流することをいひ、水災を示す字。それに火を加へて、火災の意とした。

説文解字に烖を政治とし、天火を烖と曰ふとする。『周禮』に烖の字を用ゐることが多く、天譴の意がある。灾は天火のために宮廟などが燒失する意で、天譴によるものとされた。

藤堂

𡿧は象形、水の流れをせきとめた姿を描いたもの。

災はと音符𡿧の會意兼形聲。順調な生活を阻んで止める大火のこと。轉じて、生活の進行をせき止めて邪魔をする物事をいふ。

落合

甲骨文は、水の流れを示す(と同源で後に川に分化)を意符、在の初文の才を聲符とする形聲字。水害を表現した字であるが、甲骨文では災害一般に用ゐられる。巛だけの異體もある。

またに從ふ異體字(補註: 火の上に才を加へる。後の𤆎に當たるか。)やに從ひ𢦒の形に當たる異體字もあり、それぞれ火災、戰渦を表してゐる。

また水と火から成る字形も少數であるが甲骨文に既に見える。

支那の初期王朝は黃河の近くに都を置いてをり、そのため洪水が災害の代表とされたのであらう。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. わざわひ。自然災害や外敵の襲來、傷病などの總稱。《合集補編》9034辛未卜貞、王其田盂、亡災。
  2. 地名。殷に敵對して災方とも呼ばれる。《合集》6649・後半驗辭王占曰、吉、[屮戈]。之日、允[屮戈]災方。十三月。
災別
人名。第一期(武丁代)。昔別ともいふ。地名としての災に關係するかどうかは不明。《殷墟花園莊東地甲骨》295・末尾驗辭辛酉卜、從曰災別、禽。子占曰、其禽。用、三鹿。

と家屋の象形であるの會意。家が燃えてゐる樣子を表してゐる。甲骨文には火と宀の上下を入れ換へて屋根が燃えてゐる樣子を表した異體字が多い。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 動詞。火災があることか。《合集》3755乙未…貞、灾。
  2. 地名またはその長。《合集》8955丙子卜、勿羊令廾灾。

篆文以降には災の異體字として用ゐられた。

漢字多功能字庫

𡿧

甲骨文は洪水の橫流が災を成す形に象り、水災を表す。橫に書くか縱に書くか區別はない。あるいは才を聲符に加へる。小篆の字形は中間が變形して一橫劃となるが、説文解字は誤つて字形を一に從ひ川をふさとする。王筠『說文句讀』火部「烖」下云「天火曰烖」、則此「𡿧」謂水害也。

甲骨文に三種の字形があり、異なる災害を表す。𡿧は水災、灾は火災、𢦔は兵災である(商承祚)。卜辭では常々災害の有無を貞問する。

傳世文獻では災で各種災害を表す。

甲骨文に三種の字形があり、異なる災害を表す。𡿧は水災、灾は火災、𢦔は兵災(商承祚)。灾はに從ひ、火災を表す。あるいは火が宀の上にあるものがあり、疑ふらくはまた灾となす(參・《新甲骨文編》、《甲骨文字編》)。甲骨文では地名に用ゐる。《合集》7968反自灾。

小篆の字形は火に從ひ𢦏聲。説文解字の或體(灾)の字形は甲骨文と構形が相近い。籀文の字形は𡿧と火に從ひ、隸書で𡿧の橫劃を省き、災に作る。

簡帛文字では𥘔で災害を表す。に從ひ才聲。

災害を表す古文字には異體がとても多く、後に傳世文獻では大部分を災に作る。

屬性

U+707D
JIS: 1-26-50
當用漢字・常用漢字
𤆎
U+2418E
災
U+2F918 (CJK互換漢字)
災︀
U+707D U+FE00
CJK COMPATIBILITY IDEOGRAPH-2F918
災󠄂
U+707D U+E0102
MJ016285
U+70D6
JIS X 0212: 41-61
𤈮
U+2422E
U+707E
JIS: 2-79-59
𡿧
U+21FE7
𥘔
U+25614

關聯字

𡿧に從ふ字