云 - 漢字私註
説文解字
- 雲の重文第一。
古文省雨。
- 十一・雲部
説文解字注
古文省雨。古文上無雨。非省也。二葢上字。象自下回轉而上也。『〔詩・小雅〕正月』昏姻孔云。《傳》曰、云、旋也。此其引伸之義也。古多叚云爲曰。如詩云卽詩曰是也。亦叚員爲云。如『〔詩・商頌・玄鳥〕』景員維河《箋》云員古文作云、昏姻孔云本又作員、『〔詩・鄭風・出其東門〕』𦕼樂我員、本亦作云、『尙書』云來衞包以前作員來、小篆妘字籒文作𪔈是。云員古通用。皆叚借風雲字耳。自小篆別爲雲而二形迥判矣。
康煕字典
- 部・劃數
- 二部・二劃
『唐韻』『集韻』王分切『韻會』『正韻』于分切、𠀤音雲。〔音1〕『說文』山川氣也。象回轉形。後人加雨作雲、而以云爲云曰之云。『正字通』與曰音別義同。凡經史、曰通作云。
又運也。『管子・戒篇』天不動、四時云下、而萬物化。《註》云、運動貌。
又狎昵往復也。『詩・小雅』昏姻孔云。《朱傳》云、旋也。『左傳・襄二十九年』晉不鄰矣、其誰云之。《註》云、猶旋。旋歸之也。
又語助。『詩・小雅』伊誰云憎。『史記・封禪書』秦文公獲若石云于𨻰倉北坂。
又陸佃曰、云者、有應之言也。『左傳・襄二十六年』子朱曰、朱也當御。三云、叔向不應。又云云、衆語也。『前漢・汲黯傳』上曰、吾欲云云。《註》猶言如此如此也。
又云云、山名。『前漢・郊祀志』封大山禪云云。《註》云云、太山下小山。
又云爲。『易・繫辭』變化云爲。
又姓。漢云敞。
又與芸同。『莊子・在宥篇』萬物云云。《註》盛貌。老子作芸芸。
又紛云、興作貌。『呂覽・圜道篇』雲氣西行云云然。『前漢・司馬相如傳』威武紛云。俗作紜。
又『韻補』叶于先切、言也。『韓愈・剝啄行』我謝再拜、汝無復云。往追不及、來可待焉。
音訓義
- 音
- ウン(漢)(呉)⦅一⦆
- 訓
- いふ⦅一⦆
- ここに⦅一⦆
- 官話
- yún⦅一⦆
- 粤語
- wan4⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上平聲・文・雲』王分切
- 『集韻・平聲二・文第二十・雲』王分切
- 『五音集韻・中平聲卷第三・文第三・喻・三雲』王分切
- 聲母
- 云(喉音・次濁)
- 開合
- 合
- 等呼
- 三
- 推定中古音
- ɦʏə̆n
- 官話
- yún
- 粤語
- wan4
- 日本語音
- ウン(漢)(呉)
- 訓
- いふ
- ここに
- 義
- 言ふ。
- 引用するときに用ゐる。
- ここに。發語の辭。
- 云々は、(a)しかじか、言葉を省略するときの表現、(b)物が多く盛んなさま、芸芸に同じ。
- 釋
- 『廣韻』
云: 辝也、言也。『說文』古文雲字。亦姓、出自祝融之後。
- 『集韻』
云: 言也、語辭也。亦姓。通作貟。
- 『康煕字典』上揭。
解字
白川
象形。雲の形。
『說文』に雲の初文とする。
卜文の字形は、龍が雲中に頭を隱し、その卷いた尾が下に顯れてゐる形に作る。
藤堂
象形。息や空氣が曲折して立ち上がるさまを示す。もと、口の中に息がとぐろを卷いて口籠もること。
落合
雲の初文。雲の甲骨文を云に作る。橫線は天空を表し、曲線は雲が卷いてゐる樣子を表してゐる。
甲骨文での用義は雲字條に記す。
後に云を「いふ」の意に使ふやうになつたため、古文で降雨に關する意符として雨を加へ、雲の字體となつた。
漢字多功能字庫
上に從ひ旬(螾)聲。本義は雲。後に假借して言語の云となし、雨を加へて雲を作つて本義を保存した。蔡哲茂は、云の甲骨文は上に從ひ、天上あるいは上空を表し、旬(螾)聲、後に上字の下の筆劃と旬の上の筆劃を一緒にするといふ。季旭昇は、云の下部はもと雲氣が下に垂れるさま、後に甲骨文の旬と云が同形で、容易に混淆するため、一橫劃を加へて旬となし、上を加へて云となし、兩字を區別した、とする。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐる。《合集》13386
𢆶(茲)云其雨
は、この雲が雨を降らせるか否か、の意。 - 「各云」の語が見える。于省吾は、各は格で、來臨の意とする。崔恆昇は分散する雲を指すとする。劉興隆は色々な色の雲とする。《合集》21021
各云自北。
- 雲神に用ゐる。云の前に數詞を冠する。『周禮』に「五雲」とあり、五色の雲を指す。于省吾は、三云、四云などはいづれも雲の色の數であるとする。引用する文章は、雲神に對して燎祭を行ふことをいふ。
- 《合集》13401
尞于三云。
- 《合集》40866
尞豕四云。
- 《合集》13401
金文では無義の語氣の助詞に用ゐる。
- 姑發衈反劍
云用云隻(獲)、莫敢御(禦)余。
は、戰鬪に用ゐて俘虜を獲る、我に敢へて抵禦するもの莫し、の意。
季旭昇
雲字條を參照のこと。
屬性
- 云
- U+4E91
- JIS: 1-17-30
- 人名用漢字
関聯字
云に從ふ字
漢字私註部別一覽・云部に蒐める。
其の他
- 雲
- 原義を表す繁文。
- 云を雲の簡体字として用ゐる。