曰 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
䛐也。䛐者、意內而言外也。有是意而有是言。亦謂之曰、亦謂之云。云曰、雙聲也。『〔爾雅〕釋詁』粤、于、爰、曰也。此謂『詩』『書』古文多有以曰爲爰者。故粤于爰曰四字可互相訓。以雙聲㬪韵相假借也。
从口、㇗象口气出也。各本作「从口乙聲。亦象口气出也。」非是。『孝經音義』曰、从乙在口上。乙象氣。人將發語、口上有氣。今據正。王伐切。十五部。
凡曰之屬皆从曰。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤王伐切、音越。『說文』詞也。从口乙聲。亦象口气出也。《註》徐鍇曰、今試言曰、則口開而氣出也。『玉篇』語端也。『廣韻』於也、之也。『增韻』謂也、稱也。『書・堯典』曰若稽古帝堯曰放勳。○按『古文尙書』曰若作粵若、曰放勳作曰、蓋訓爲語端者與粵通、訓爲詞者則如字耳。
音訓・用義
- 音
- ヱツ(漢) 〈『廣韻・入聲・月・越』王伐切〉[yuē]{jyut6/joek6}
- 訓
- いふ。いはく。のたまはく。ここに。
曰若は發語の辭。「ここに」と訓ずる。また越若、粤若に作る。
解字
白川
象形。祝詞や誓盟を收める器の上部の一端をあげて、中の書を見る形に象る。その書の内容を他に告げる意。
『説文解字』に乙聲とし、亦た口气の出づるに象るなり
とするが、字は乙聲ではなく、口氣の象を示すものでもない。
金文に曶字があり、曰の上部に手を加へて、これを曶開する形。
藤堂
口と𠃊印の會意。口の中から言葉が出て來ることを示す。口に丸くゆとりをあけて言葉を出す意。
漢字を組み立てる際、曰印は、いふの意に限らず、廣く人の行爲を示す意符として用ゐられる。
落合
指示。口の上に指示記號の短線を加へた字。指示記號は口から發せられた言葉を抽象的に表現したものであらう。
甲骨文では、言ふこと、報告することを表し、「いふ」「いはく」と訓ず。祭祀の擧行などを神や祖先に告げる場合にも用ゐる。《合補》2031貞、王其侑、曰父乙。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、口と短橫劃に從ひ、口の上に出づるところあることを表し、短橫劃は口から出る聲氣を象る。本義は口で話す説話あるいは言葉。曰字の形構は今、言と類似してゐる。今は亼(倒口)の下に一、言は舌の上に一。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 話すこと。《合集》586
王曰
。 - 稱して呼ぶこと。「謂之」に相當する。《合集》14295
東方曰析、風曰劦。
は、東方を析と呼び、その風を劦と呼ぶことをいふ。
金文での用義は次のとほり。
- 話すこと。大盂鼎
王若曰
は、周王が斯樣に仰せ有るの意。 - 稱して呼ぶこと。曶鼎
受𢆶(茲)五[夫]、曰陪、曰恒、曰[耒耒]、曰□、曰省。
は、陪、恒、[耒耒]、□、省といふ名の五名の奴隸を受け取ることをいふ。 - 句首の語氣詞に用ゐる。史牆盤
曰古文王
。『尚書・堯典』曰若稽古
。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 話すこと。
- 《郭店簡・緇衣》簡45
宋人又(有)言曰
。 - 《上博竹書二・民之父母》簡3
孔子曰
。
- 《郭店簡・緇衣》簡45
- 稱して呼ぶこと。
屬性
- 曰
- U+66F0
- JIS: 1-59-9
関聯字
曰に從ふ字を漢字私註部別一覽・口部・曰枝に蒐める。