鹿 - 漢字私註
説文解字
獸也。象頭角四足之形。鳥鹿足相似、从匕。凡鹿之屬皆从鹿。盧谷切。
- 十・鹿部
説文解字注
鹿獸也。鹿字今補。三字句。『韵會』作山獸。象頭角四足之形。盧谷切。三部。
鳥鹿足相比、从比。依『韵會』訂。說从比之意也。上言比象其足矣。此當有一曰二字。鳥鹿皆二足相距密。不同他獸相距寬。故鳥从匕、鹿从比。比、密也。古匕與比通用。故槩之曰从比。
凡鹿之屬皆从鹿。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤盧谷切、音祿。『說文』獸也。『玉篇』麞屬。『爾雅・釋獸』鹿牡麚牧麀、其子麛、其跡速、絕有力𪊑。『埤雅』仙獸也。牡者有角。『字統』鹿性驚防、羣居分背而食、環角向外以備人物之害。『易・屯卦』卽鹿無虞、惟入于林中。《疏》卽鹿若無虞官、虛入林木中、必不得鹿。『詩・小雅』呦呦鹿鳴。
又鹿蜀、獸名。見『山海經』。
又鉅鹿、郡名。『前漢・地理志』鉅鹿、卽禹貢大陸。○按今屬順德府。
又獲鹿、束鹿、𠀤縣名。『唐書・地理志』隋鹿泉、唐攺獲鹿。隋鹿城、唐攺束鹿。
又地名。『左傳・僖二十四年』出于五鹿。《註》在今衞縣西北。
又山名。涿鹿在上谷。白鹿在荆州。鹿門舊名蘇嶺山、在襄陽。沙鹿在晉平陽元城縣東。
又鹿門、關名。『左傳・襄二十四年』臧紇斬鹿門之關以出。《註》魯南城東門。
又臺名。『書・武成』散鹿臺之財。『薛瓚曰』在朝歌城。
又衡鹿、官名。『左傳・昭二十年』山林之木、衡鹿守之。
又囷鹿。『吳語』大荒薦饑、市無赤米、而囷鹿空虛。《註》先儒以圓曰囷、方曰鹿。囷、聚也、亦散也。鹿善聚善散。故囷謂鹿。俗作簏。
又鹿車、小車也。『風俗通』鹿車小、裁容一鹿。
又酒器。『魯相韓敕修孔廟禮器𥓓』有雷洗觴觚、爵鹿柤梪。
又縷鹿、婦人冠名。見『蔡邕・獨斷』。
又鹿豆。『爾雅・釋草』蔨、鹿𧆑、其實莥。《註》今鹿豆也。
又活鹿、鹿蹄、鹿腸、鹿首、鹿麻、𠀤草名。見『本草綱目』。
又與麓通。『詩・大雅』瞻彼旱麓、棒楛濟濟。『周語』作旱鹿。
又姓。『正字通』漢鹿旗、明鹿麟。又五鹿、複姓。漢有五鹿充宗。
又鹿鹿、與錄錄通。『前漢・蕭曹傳贊』錄錄未有奇節。《註》錄錄、猶鹿鹿也。亦作碌碌。又作陸陸。
又『荀子・成相篇』剄以獨鹿、棄之江。《註》獨鹿、與屬鏤同。
音訓義
- 音
- ロク(漢)(呉)⦅一⦆
- 訓
- しか⦅一⦆
- 官話
- lù⦅一⦆
- 粤語
- luk6⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・屋・禄』盧谷切
- 『集韻・入聲上・屋第一・祿』盧谷切
- 『五音集韻・入聲卷第十三・屋第一・來切一禄』盧谷切
- 聲母
- 來(半舌音・次濁)
- 等呼
- 一
- 官話
- lù
- 粤語
- luk6
- 日本語音
- ロク(漢)(呉)
- 訓
- しか
- 義
- 鯨偶蹄目鹿科の動物の總稱。本邦では日本鹿を指すことが多い。
- 帝位の喩へ。『史記・淮陰侯傳』
秦失其鹿、天下共逐之。
- 麓と通ず。
解字
白川
象形。鹿の形に象る。
『説文解字』(段注本)に鳥鹿の足は相比す。比に從ふ。
とするが、比は鹿足の形で、相比する意ではない。
卜文に鹿頭刻辭があり、また彝器に鹿頭、鹿文を文樣として用ゐるものがある。
『詩・大雅・靈臺』は周の神都辟雍のさまを歌ふものであるが、神鹿の遊ぶことが歌はれてゐる。
祿、麓と音が通じ、その意にも用ゐる。
藤堂
象形。鹿の姿を描いたもので、細長く連なつて列をなす鹿を表す。
落合
鹿の象形。甲骨文では枝分かれした角や大きな目が表現されてゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- しか。狩獵の對象として記される。《合集補編》11291・後半驗辭
壬申卜貞、王田𠵤、往來亡災。獲白鹿一狐二。
- 地名。《殷墟花園莊東地甲骨》196
庚戌、歲妣庚羒一、入自鹿。
甲骨文の要素としては、鹿に關係する字のほか、狩獵の獲物の一般像としても用ゐられる。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、側面から鹿を見る形に象り、鹿の分叉してゐる角を強調してゐる。本義は鹿。甲骨文は二本の角と四足を持つ鹿の形を象り、あるいは一角、二足の形に作る。金文は多くが雙角、四足の形に作る。戰國文字は雙角が段々と簡化されて一角に近づき、獨角の廌字と上部の形が近い。また戰國期の鹿字の下部は多く兩脚が相背く形に作る。
甲骨文、金文では本義に用ゐる。
- 《合集》10410正
隻(獲)鹿五
は、鹿を五頭捕獲することをいふ。 - 《合集》10265
逐鹿。
- 命𣪕
王易(賜)命鹿
は、王が鹿を賜ふことをいふ。 - 貉子卣
王令(命)士衜(道)歸(饋)貉子鹿三
は、王が道饋に命じて貉子に鹿三頭を賜ふことをいふ。
戰國簡では鹿を戮と讀み、殺戮と解く。《上博楚竹書二・容成氏》簡41に「亡宗鹿(戮)族」の語があり、祖宗を消滅させ、家族を殺戮することを指す。
傳世文獻では多く本義に用ゐ、また政權あるいは爵位の比喩に用ゐることがある。『史記・淮陰侯列傳』秦失其鹿、天下共逐之。
裴駰『集解』引張晏以鹿喻帝位也。
按ずるに「逐鹿」とはもと鹿を逐ふことを指し、後に轉じて權力を爭ひ逐ふことをいふ。それで鹿はまた權位の比喩となり、いま「中原に鹿を逐ふ」は群雄が天下を爭奪することの比喩として用ゐられる。
屬性
- 鹿
- U+9E7F
- JIS: 1-28-15
- 常用漢字(平成22年追加)
関聯字
鹿に從ふ字を漢字私註部別一覽・鹿部に蒐める。