廌 - 漢字私註

説文解字

𢊁
解𢊁、獸也。似山牛、一角。古者決訟、令觸不直。象形、从省。凡𢊁之屬皆从𢊁。宅買切。
𢊁部

説文解字注

𢊁
解𢊁獸也。四字一句。佀牛、一角。各本皆作似山牛。今刪正。『玉篇』、『廣韵』及『大平御覽』所引皆無山也。古者決訟、令觸不直者。下者字依『玉篇』補。『神異經』曰、東北荒中有獸。見人鬥則觸不直。聞人論則咋不正。名曰獬豸。『論衡〔是應〕』曰、獬豸者、一角之羊、性識有罪。臯陶治獄、有罪者令羊觸之。按古有此神獸。非必臯陶賴之聽獄也。『廣韵』曰、【字林】、字樣作解𢊁。『廣雅』作𧳊𧳋。陸作獬豸。陸謂陸法言『切韵』也。𢊁與解曡韵。與豸同音通用。𢊁能止不直。故古訓爲解。『左傳・宣十七年』庶有𢊁乎。《杜注》𢊁、解也。『釋文』本作𢊁。《正義》本作豸。陸云、𢊁解之訓見『方言』。孔云、豸、解也。『方言』文。今『方言・卷十二』瘛、解也。瘛必𢊁之誤字。旣誤後乃反以胡計耳。左釋文大書𢊁字。俗改爲鳩。莫能諟正。象形。謂象其頭角也。从豸省。此下當有豸亦聲。宅買切。十六部。凡𢊁之屬皆从𢊁。

康煕字典

部・劃數
广部・十劃

『廣韻』池爾切『集韻』『韻會』丈尒切『正韻』丈几切、𠀤音豸。『廣雅』𢊁、灋也。

又解𢊁、獸名。『前漢・司馬相如傳註』張揖曰、解𢊁、似鹿而一角。人君𠛬罰得中、則生於朝廷。『王充・論衡』解𢊁者、一角羊、性知有罪。臯陶治獄、其罪疑者、令羊觸之。

又『集韻』通作。『異物志』東北荒中有獸、名獬豸。一角、性忠、觸不直者。

又叶直詈切、豸去聲。『司馬相如・上林賦』推蜚廉、弄獬𢊁。格蝦蛤、鋋猛氏。

部・劃數
角部・七劃

『集韻』丈蟹切、豺上聲。與𧣾同。本作。通作。獬豸、獸名。

又『玉篇』丈爾切、馳上聲。亦獸名。

又角不端也。

○按【字彙・豸部】收𧳊字、註同、引【廣雅】獬豸作𧳊𧳋。【類篇・角部】收𧣭字、註同廌。豈有同从角、豸、而左右異書卽分二字者。且【玉篇】、【類篇】豸部俱不收𧳊字、似宜刪𧳊存𧣭爲是。

部・劃數
角部・八劃

『類篇』同。亦作𧣭

部・劃數
豸部・七劃

『正字通』同。見𧳊字註。

廣韻

卷・韻・小韻
上聲
反切
池爾切

解廌。又宅買切。又作𧣭

卷・韻・小韻
上聲
反切
宅買切

解廌。宅買切。三。

別條に揭出。

音訓

⦅一⦆

反切
廣韻・上聲』池爾切
官話
zhì
粤語
zi6
日本語音
チ(漢)

⦅二⦆

反切
廣韻・上聲』宅買切
粤語
zaai6
日本語音
タイ(漢)

解字

白川

象形。神判のときに用ゐる神羊の形。

『説文解字』に解廌獸なり。牛に似て一角。古者いにしへ訟をさだむるとき、不直なる者に觸れしむ。象形。(段注本)とあり、羊神判が行はれた。

『玉篇』にも牛に似て一角とするが、『墨子・明鬼下』に羊神判の詳しい記述がある。

は廌の側身形を寫したもので、解廌はまた解豸ともいふ。

神判に勝利を得た廌の胸には、心字形の文彩を加へた。その字は慶。勝訴を喜ぶ意。

敗れた廌は、その人()と、自己詛盟の器の蓋を取り去つて(𠙴)、これらを合はせて水に投ずる。その字は灋で、のち廌を略して法となる。これを水に流し棄てて、大祓ひをする。のち法官の冠に解廌の象を加へ、解豸冠といつた。

藤堂

象形。鹿の字の一部分を兼ねた形で、鹿と馬の合ひの子のやうな獸の姿を示す。

落合

象形。『説文解字』は神判に用ゐる一角獸とするが、甲骨文は二角の動物の象形であり、また神判に用ゐる記述もない。恐らく山羊のやうな獸の象形であらう。甲骨文では牛や羊などに比べて例數が少ない。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 獸の一種。山羊か。《殷墟花園莊東地甲骨》149甲戌、歲祖甲牢幽廌、祖甲泳子。用。
  2. 祭祀名。廌を祭祀犧牲に用ゐること。《殷墟花園莊東地甲骨》139己卜、叀廌牛妣庚。
  3. 地名またはその長。《殷墟花園莊東地甲骨》467子惟插廌。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、野獸の一種に象る。傳説では是非正誤を辨別することができる神獸で、爭訟で不正直な一方に角で觸れて之を除く。『説文解字』解廌獸也。似山牛、一角。古者決訟、令觸不直。(後略)廌字からまた引いて灋を生ず。灋は古代の法字。

廌の公正な形像(イメージ)は深く大きく影響してゐるといへる。後世には「獬豸冠」といふ言ひ方があり、法を執行する者の冠を指す。また清代の都御史の官服には獬豸が刺繡され、專ら忠奸の辨別を司ることを象徵した。

甲骨文では獸名に用ゐる。《合集》30182……廌……禽(擒)。金文では族氏名に用ゐる。

戰國竹簡では薦の簡略と見るべく、通假して存となし、存在、存留、生存を表す。

屬性

𢊁
U+22281
𧣭
U+278ED
𧣾
U+278FE
𧳋
U+27CCB
U+5ECC
JIS X 0212: 28-49

關聯字

廌に從ふ字を漢字私註部別一覽・廌部に蒐める。